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2012年12月08日
新老口号 / No Dust
■習近平のプチ改革
ふるまいよしこ氏のコラム「習近平の新時代へ」(ニューズウィーク日本版ウェブサイト、2012年11月20日)は、習近平の総書記就任演説が平易な言葉遣いで率直に話す語り口だったことを取り上げ、新鮮だったと評している。
その姿勢がさらに明確にされたのが12月4日の中央政治局会議に提出された「活動方法を改良し、群衆と密接に結びつくための8項目の規定」だ。ブログ「佐々木智弘の「中国新政治を読む」2」が訳出している。
「車を少なくしお供の者を簡素化し、同行者を減らし、接待を簡素化する」「会議活動を簡素化し、会議のやり方を改善する」などなど、やたらと細かい話が目につく。その精神は「空談誤国,実幹興邦」(空談は国を誤らせる、実際の行動で国を興隆させよ)という内容である。
そして7日、習近平は広東省深圳市を訪問したのだが、まさに「8項目の規定」が反映された内容になっていたのだという。「現場には歓迎の横断幕も出迎えの行列もなかった」と報じられている(長江日報)。なお深圳市では鄧小平像に献花し、「改革開放こそ共産党の堅持しなければならない方針である」と誓ったとのこと。なおこの時も赤絨毯がひかれなかったと大々的に報じられている(温州網)。
■習近平を評価してみる
上述のブログで佐々木氏は「あきれて物も言えない」「胡錦濤が発足した直後も似たような作風改善指示が出たような気がする」と手厳しく批判している。
実際、「横断幕も用意されませんでした!」とか大々的に報道していたり、中国各地で「空談誤国,実幹興邦の精神を学べ」という学習キャンペーンが展開されていたりというすごい状況。高級シャンパンを片手に「今後はぜいたくはやめるザマス」とか言っている感じだろうか?「形式主義はやめよう!」という呼びかけを、形式主義そのもので対応しているというもはや笑うしかない状況ではある。
ただ注意しておくべきは、形式主義というのはなんの意味もない上着ではなく、外皮でありながらも政治の中身そのものを規定しているという点だ。「毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表、科学的発展観……」という呪文を唱えればそれでOKというわけではなく、そうした形式に合致していない振る舞いはマイナスとなり、またとがめられる理由となる。
説明し出すと長くなるのでここではざっくりとした説明で終えるが、むしろこうした形式主義こそ中国共産党の硬直化した病理に深くかかわっているのではないか、そこに手を付けようという試みならば、ちょっとワクワクするではないか、というのが私の妄想である。
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