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「大紅龍の時代は終焉」マヤ歴的世界の終わりと黄巾の乱的「邪教」の叛乱―中国

2012年12月10日

■マヤ歴的世界の終わりとイースタン・ライトニング■


2012年12月21日はマヤ歴的世界の終わり。映画「2012」がヒットしたのは2009年のこと。以来3年間、中国で盛り上がり続けている終末論もついにクライマックスを迎えている。

記事「世界の終わりまであと3週間=マヤの予言で盛り上がる中国ネット民」では、ネット大喜利「マヤ文体」を紹介したが、他にもちょろちょろ話題になっているネタがある。


■世界の終わりは会社が休みになります

四川省のIT企業、12月20・21日は「人類滅亡の日」で休暇―中国

「休暇通知」を投稿したのは同社の社長。記者の取材に対し、「この2日間は出勤しても仕事に集中できない従業員が多いことが予想されるため、このような決定をした」と説明。また、「従業員にはこれを機会に、両親に会いに行くなど、『人類最後の日』を大切に使ってほしい」と語った。

休暇通知の内容は以下の通り。

2012年12月21日は特別な意味を持つため、当社は慎重に検討した結果、以下の決定を下した。2012年12月20日(木)と12月21日(金)の2日間を「人類滅亡の日休暇」とする。休暇中、社員の皆様には以下の点に注意してもらいたい。1)防火、防犯などの安全対策をきっちりする。2)他の人に邪魔されないように、携帯電話の電源を切っても良い。3)普段は仕事が忙しいので、この「最後」の時間を利用して、大切な人と過ごす。「人類滅亡の日」を有意義にお過ごし下さい。

「携帯電話の電源を切ってもいい」というのがなかなかすばらしい内容。携帯電話があるかぎり、仕事はざんざか降ってくるというのは日本も中国も変わらない。


■ろうそく買い占め事件

「冬至から3日間は太陽出ず」うわさでろうそくバカ売れ=中国四川省
新華社日本語版、2012年12月9日

中国四川省双流県の住民の間で、「冬至の12月21日から3日間は太陽が出ない」とのうわさが流れ、ろうそくやマッチを買いだめする人が急増した。

2011年は福島原発事故直後に塩の買い占め騒ぎが起きたが、今度は一部地域でろうそくの買い占めが起きたとのお話。「去年買った塩、まだ使い終わってないだろ」という秀逸なツッコミを見かけたことをご報告しておく。


■イースタン・ライトニング

で、やっと本題っぽい話。

新疆ウイグル自治区昌吉回族自治州奇台県の警察が「邪教がマヤ歴的世界の終わりについてデマを流している」とマイクロブログで警告している。その「邪教」の名は「全能神教」。「東方閃電」とも呼ばれている。

この宗教は1993年に河南省で誕生したもの。キリストが女性に生まれ変わったという鄧閃電が中国に降臨。まもなく世界の終わり=時代の大転換期が訪れて、大紅龍(=サタン)の支配の時代が終焉。災厄を乗り越えた人々は新時代に生きることになる……的な教義らしい。創始者は大祭司である趙維山。2001年に米国に政治亡命している。
(中国語ウィキペディア「東方閃電」、英語ウィキペディア「Eastern Lightning」、全能神教ウェブサイト

20121210_写真_中国_カルト_

こちらは青海省のバス停に書かれていたというイタズラ書き。表に「2012年世界の終わり」、ウラに「全能神はすでに到来した、全能神はすでに出現した」と書かれている(テンセント・ウェイボーの投稿)。

もっとショッキングなのは河南省商丘市虞城県での出来事。8日午前、1000人近い全能神教の信者が集会を開き、派出所を包囲したという。6日にも陝西渭南市富平県庄里鎮で300人近い信者が集まった。いずれも警察により解散させられたという。この話を報じているのがブログ「中国ジャスミン革命」だけなので要注意ではあるが、面白すぎるネタである。

20121210_写真_中国_カルト_2
*こちらは西安市の街中にかけられていたという全能神の横断幕。

20121210_写真_中国_カルト_3
*全能神教のチラシ。
「神様が人間界にやってきた。どの家に災難があるかをご観察。
善人ならば救い出す。悪人ならば放っておく。
神様の名前は全能神。全能神が人を救いにやってくる。
全能神はホンモノの神。信じようが信じまいが存在する。
地震、交通事故、疫病。すべての災難がやってくる。
真神を信じなければ避けられない。急いで全能神を信じよう。」
という内容。戯れ歌になっているので、節をつけて読むと楽しい。


■大紅龍と蒼天すでに死す

中国共産党に「邪教」認定を受けた宗教はごまんとあるが、そのすべてが一般民衆から財産を巻き上げ、親と子の情を破壊する残虐非道の悪魔の宗教……ということはもちろんない。知り合いが熱心に「邪教」を信仰しているが、とりたてて面倒なこともないようだ。

ただ全能神教(東方閃電)の場合、「大紅龍の時代は終わった、新時代がやってくる」という教義が大変にデンジャラス。

法輪功のように反共産党色を打ち出してはいないようだが、共産党の色であるところの赤、レッドドラゴンの時代が終わるなどと言われると、「蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし」と頭の中は黄巾の乱モードになってしまうわけで、共産党がとりしまらないはずがない。

もし全能神教がマヤ歴の世界の終わりに関連して行動を活発化させているのだとしたら、世界が終わらなかった後に大変厳しい弾圧が待ち受けているのではないか、と心配になってしまうのであった。

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