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村上春樹よりもラノベ「SAO」のほうが売れる日本出版界=「なんかおかしくない?」と中国人オタク(百元)

2013年01月06日

■中国オタク「ソードアート・オンラインが村上春樹を超えてしまったらしい……!」■


■日本の売り上げランキングに敏感な中国人オタク

中国オタクには、日本の様々なデータ、統計、ランキングがニュースとして伝えられています。なかでも「売り上げ」については、作品の勢いや人気を客観的に表すものとして重視されているような所が見受けられます。

そんな中国オタクの間で、先日発表されたオリコンの本のランキングにおいて「ソードアート・オンラインの作者の売り上げが、村上春樹を超えた」というのがちょっとしたニュースとして伝わっているようです。

2012年 本ランキング特集(ORICON STYLE)
20120106_写真_中国_オタク_


現地でソースになっているのはこちらの記事のようです。
ラノベ「SAO」がベストセラーに 春樹より売れてる「川原礫」(J-CAST)

「ソードアート・オンライン」(以下、基本的に「SAO」と略)は現在放映中のアニメが中国オタク内でも大人気ですし、ライトノベルの原作もかなり早いペースで現地の中国語版が出版されています。また、それに加えてこのSAOは元々ネットで連載されていたネット小説だというのも広く知られており、ネット小説が盛んな中国ではちょっと特殊な見方をされる作品となっています。

そしてそんなSAOの作者が村上春樹より売れているという情報は中国オタクにとっても驚きだったようです。
今回は中国のソッチ系のサイトで見かけたその辺に関するやり取りを、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


■中国人オタクの驚き

2012年のオリコン売り上げランキングが出たが、年間売り上げでトンデモナイことが起こった。「ソードアート・オンライン」が村上春樹を超えてしまったらしい……!

なんか改めて見るとスゲェことになってるんだな。SAOの上にいるのが東野圭吾だけだと……?

400万部売って、東野圭吾に次ぐ2位、そして3位が村上春樹……これは本当にスゴイ。

おお……ずっとSAOのファンだった自分からすればこれには感動してしまう。まぁ、人気が大爆発したのが今年だし、来年はさすがにこれより落ちるだろうけど、この位置はスバラシイ。

なんでSAOこんなに売れているの?アニメ化の影響?

昨年の売り上げは分からないけど、一応ライトノベル読者内での人気は高かったみたいだよ。「このライトノベルがすごい」でも1位になってたから、それ以前からの人気はあったと思う。ただ、今年の販売量に関してはアニメの効果も確実にあると思う。

なんで、あんな作品が村上春樹より上に行くんだ……こんな現実、悲しすぎる。


アニメは確かに面白いけど、ストーリー自体はそこまでスゴイわけじゃない。原作読んでない自分にはなんで村上春樹より売れるかマジで分からんよ……

SAOがここまで売れるなら、もしウチの国のネット小説のトップレベルが日本市場へ入ったら大勝利できるんじゃないかと考えてしまう。

日本のオタクっていつの間にこんなにレベル下がったの?「.hack」の時とか全く売れなかったのに、SAOがこんなに売れてしまうなんて。ウチの国のネット小説家がもし日本に行ったら大人気で無双確定だ。

私もネット小説でそれなりに読者いるけど、SAO程度がこのレベルで売れるってのはわけがわからない。あの程度でこんなに売れるなんて。自分が日本に生まれなかったのが本当に残念。

SAOが村上春樹超えとか、日本の読者ってマジでレベル低いよな。ウチの国のネット小説を見せてやりたい。てか、SAOがこんだけ売れるのを見ると日本に行って小説書きたくなるわ。

SAOは以前からウチの国のネット小説っぽいとか、アレが売れるならウチの国のネット小説もってけば楽勝という意見が多いけど、ウチの国のネット小説はムダが多いから無理だろ。文字数課金なシステムの弊害がもろに出ている。

SAOとウチの国のネット小説の違いは、余計な部分をそぎ落としているかじゃないかね。ウチの国ではレベルアップして最強になっている描写が長引いてグダグダになるし、最強になったら今度はその状態がずっと続いてグダグダになる。

SAOアンチは「ありがちな妄想小説がなんであそこまで」と軽く見る発言が多いけど、あの作品が書かれたのって2002年だぞ。今のウチの国の小説と比べると新鮮味が無いのは当然。あと現在商業出版で進んでいるアリシゼーション編までいくとまた評価は変わる。あれは普通じゃないね。最初の段階からああいう展開まで行くとは誰にも想像できなかったはず。それと文句言っているヤツは電撃文庫の編集部に投稿すればいい。見込みが有れば拾ってくれると思うよ!

「空の境界」は50万程度だったのに……大衆受けするかそうでないかの差と言うヤツなのか……

最近日本の書店のラノベコーナーを見ていて気付いたんだが、日本ではネット小説を書籍化して販売するのがちょっと流行っている。でも見た限りではSAOのような人気を得ている作品は無いようだし、続刊の刊行ペースもあまり良くないようだ。SAOがここまで人気なのはやはり作品自身が備えている理由があるんだろう。私も作品自体はあまり好きではないけど、「全体的に問題が少ない」「読んでてイヤな気分にならない」「多くの人間が妄想したことのあるネタを高レベルで文字化、動画化した」という点なんかはスゴイとは感じた。

私が驚いたのは日本のライトノベル市場の大きさだね。総合売り上げで村上春樹を超えるような作品が出て来れるというのは、純粋に驚きだ。

オリコンのランキングは教科書関係や政治関係は入れていないランキングか。ウチの国はそれが入るから上位はそれに独占になっちゃうんだよね。あと、BOOK総合で見るとダイエットや料理本が上に来ているのはどこの国も一緒なんだなーと感じる。そしてそれとは別に漫画と文庫でスゴイ売り上げが出ているのはさすが日本だね。それとBOOK総合1位、西尾維新なのか……こっちにも驚いたよ。

村上春樹の作品とSAOは比べるもんじゃないだろ。どっちもスゴイ売り上げってことでいいんじゃないか?

ウチの国ではどっちも日本関係の書籍ってことで村上春樹と日本のラノベの読者層がかぶってるからねぇ。気になってしまうのはしょうがないんじゃないかな。日本だとこういった重複は比較的少ないらしいが。

村上春樹は今年新作出してないし、しょうがないんじゃない?逆にSAOは新作が定期的に出るライトノベルだ。

いや、ソースの記事にもあるが年間で累計300万部を超えているからこれは瞬間的に村上春樹を超えたと言っても問題ないと思う。シリーズと言う点ではある程度差っ引いて考えるべきかもしれないが、村上春樹も過去に出版した本の累計で扱うしね。

おいおいこれ、ソースがかなり情報を曲解しているぞ。文庫のジャンルでの話だし、1巻だけの場合だと1Q84が2~16位に分散しているのに対し、SAOは第1巻が20位で最高ってだけだ。そりゃスゴイことはスゴイけど、SAOは巻数出しているのが多いってだけだし、村上春樹以上ってのは言い過ぎだろ。そもそも累計は作者別だからSAOの他に「アクセル・ワールド」の売り上げも入っている。1巻ごとで考えれば、1Q84の方が明らかに上。

確かにね。でもオリコンチャート見ても文庫の作家別ランキングで2位が川原礫、3位が村上春樹なのは間違いないし驚きだよ。ネット小説出身のライトノベル作家が村上春樹を超えるというのはやはりスゴイニュースに思ってしまう。

えーと……私にとってはSAO以上に気になることがランキングに載っているんだが……村上春樹の1Q84を三上延の作品が上回って1位ってどういうこと!?三上延は私も嫌いじゃないけど、そんなに売れる作家じゃなかったような。

私も三上延の名前がランクインしているのは嬉しいな。「モーフィアスの教室」とか好きだった。でも、なんで急に上がってきたの?SAOみたいに大売れする作品を書くとは思わなかったんだが。

三上延はオリコンランキング1位になっている「ビブリア古書堂」シリーズが大当たりして、一気に人気が出たんだよ。この作品は純粋なラノベレーベルではないしあんまりこっちでは話題にならないが、日本では非常に評価高いし売れているよ。今度ドラマ化もされるらしいし、場合によってはこっちでも人気出るかもね。

こっちにも一応「古書堂事件手帳」ってタイトルで入って来てはいるけど、あんまり話題になってないよね。本屋大賞に入ったとか、そんな周辺の評価だけで。聞いた話では台湾では2巻が来年1月に発売されるんだっけかな?大陸に入るのはもうちょっと遅れそう。

しかし、「ラノベが村上春樹に勝った」というなら、こっちの「ビブリア古書堂」を話題にするべきだったんじゃないかな……なんかランキングを見た限りでは、文庫小説の2012年最大のヒットってこれなんじゃないだろうか?

とまぁ、こんな感じで。


■中国のネット小説によく似たSAOが春樹を超えた!?

「ソードアート・オンライン」のファン以外の人間からすると、村上春樹以上に売れるというのが理解し難いと感じられたりするようです。村上春樹は現在中国で最も有名な日本人作家ですし、中国の若者にとっては「とりあえず押さえておかなければならない」といった扱いになっているような所すら見受けられます。

また「ソードアート・オンライン」が元は日本のネット小説であるということや、ネットゲームが題材の「中国のネット小説でもよくあるものに見える」ということもあってか、「村上春樹より売り上げで上になった」というニュースに関してはイロイロな感情が出て来るようでした。


■電撃文庫は知っていてもメディアワークスは知らない……ラノベ情報の不思議な伝播

それから話は外れますが、上の発言でもちょっと触れられているように、実は「ビブリア古書堂」をはじめとするメディアワークス文庫の作品に関しては、一部のマニアを除くと中国オタク内ではほとんど知られていません。これはラノベ出身の作家の作品に関しても変わりませんね。

中国オタク内では電撃文庫などのラノベレーベルに関しては結構な勢いで情報がやり取りされているのですが、MW文庫に関しては現時点ではあんまりアンテナを延ばす対象になっていない模様で、「ビブリア古書堂」シリーズに関しても、ほとんど話題になっていません。

こういったジャンル的に近いはずの情報の断絶に関しては、ラノベが中国に広まり始めた当初も似たような傾向が見受けられましたが、やはり小説媒体が広まるのはアニメや漫画のようにはいかないというのを感じてしまいますね。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2012年12月12日付記事を、許可を得て転載したものです。

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