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「書類袋を布から紙製に変えました」習近平初の大政治キャンペーンの成果がしょぼすぎる件(水彩画)

2013年01月07日

■工作作風改善とは一体何だったのか■

習近平―共産中国最弱の帝王

■工作作風改善とは

2012年11月15日に中国共産党総書記に就任した習近平。その最初の政治的キャンペーンとなったのが工作作風改善(活動方式改善)キャンペーンです。12月4日、中国共産党中央政治局会議で、習近平がぶちあげた「工作作風と群衆と密接な連携の改善に関する8項目」がキャンペーンの起点となりました。

その8項目をおさらいしておきましょう。

1:調査研究を改善し、基層に深く入って真実の情況を理解し、経験を総括し、問題を研究し、困難を解決し、工作を指導し、群衆に学び、実践に学び、群衆と多く座談し、幹部と心を傾けて話し、討論を重ね、典型をより多く解剖し、困難と矛盾が集中した場合には群衆の意見が多い場所へ行き、決して素通りしてはならない。
形式主義をしてはならない:車を少なくし、随行員を減らし、接待を簡素化し、スローガンを掲げない、群衆の送迎を手配しない、草花を据えない、宴会を設けない。

2:会議活動を簡素化し、やり方を改善する:中央の名義で開催される各種全国規模の会議と、重大な活動については厳格にコントロールし、部署工作を頻繁に行わない。
中央が未許可のテープカット、定礎式、祝賀会、記念式典、表彰、博覧会、検討会及び各種フォーラムに出席しない。
会議の実効性を高めるため、会議を短くし、講話を短くし、空論・常套句を止める。

3:文件(書類)や報告を簡素化し、やり方を改める。実質的な内容が無く送っても送らなくてもいい文件、報告は一律送らない。

4:外遊活動を規格化する。外交工作の大局から合理的に外遊活動を手配し、随行員の出国を厳格にコントロールし、交通手段を厳格に規定し、中国資本の機構。華僑、華人、留学生代表などを空港に出迎えさせない。

5:警備工作を改善し、群衆との連携に有利な原則を堅持する。交通管制を減らし、一般的な状況下では道路を封鎖せず、閉鎖させない。

6:新聞報道を改善する。中央政治局同士が出席する会議と活動は工作の必要、ニュースの価値、社会効果に応じて報道するか決定し、報道の数量、文字数、時間を更に圧縮する。

7:文章・原稿の発表を厳格にし、中央が統一したもの以外は、個人の著作出版、講話単行本を公開で出版してはならない。祝い状、祝電、題辞、題辞を出してはならない。

8:勤勉節約を励行し、住宅、車輌配備などの関連工作、生活面での待遇規定を厳格に執行しなければならない。

長いですが、まとめると「華美な慣行はやめよ。無駄な形式主義はやめろ。節約しろ云々」というお小言と言えるでしょうか。


■庶民受けを狙う習近平

ちなみにこうしたお小言はこれが最初ではありません。胡錦濤時代にも「事実だけを話す」「中身の無い話は止める」など作風改善は提起されていました。むしろ何度出しても徹底できていないことが丸分かりというべきでしょうか。「地方政府がホワイトハウスを彷彿とさせる豪華な庁舎を建設するとはなんとムダ遣いな!けしからん」的な報道が何度も行われていますが、アレと同じです。

習近平はこれまで秘密にされていた常務委員の人となりを紹介させ、特に自らの延安時代を紹介させることで「私はあなたと同じ人間ですよ」アピールを展開していますが、この8項目も庶民受けを狙ったものです。

ちなみにこの中央政治局会議で打ち出されたこの政治キャンペーンは、さまざまな組織が持ち帰り独自の取り組みを発表しています。例えば李克強や王岐山もそれぞれが担当する会議で、作風改善をアピールしています。

余談ですが、解放軍は「決して私利を図らず、絶対に特権を行使してはならない」とさらに一歩踏み込んだ表現となっています。解放軍の腐敗は一般の党員より深刻なのかもしれません。


■習近平のがんばり

さて、この8項目を発表して、「群衆が密接に連携してくれる」のか、つまり民草が習近平を慕ってくれるのかというと、そりゃちょっと無理じゃないか、と。もちろん作風改善が実行されればありがたい話ではありますが、今までも解決できなかった無理筋の課題ですし、なにより工作作風改善8項目の文章自体が「儀礼的で中身のないお話」というとんでもない矛盾があります。

とはいえ、習近平も少しがんばりました。政治局会議直後の広東省訪問では、「会議の簡素化、大名行列視察をやめる、大げさな警備はやめる」を実行したとマイクロブログ経由でアピール。「ネット民に称賛されました」と妙な盛り上げ方をしていました。まあ、これも仕込みだったと判明していますが。マイクロブログだけではなく、訪問終了直後には「総書記の視察にもかかわらず、道路は封鎖されず歓迎の横断幕すらなかった」とマスコミが報道しています。

ただ問題はいつまでこれが続くかでしょう。現時点で、習近平の外出はこの広東省訪問と、中南海から目と鼻の先にある国家博物館での展示会、年末の河北省の農村視察だけ。2013年3月の両会は「地味にやります宣言」が出ていますので、両会後くらいからどうなるかが正念場になりそうです。

とりあえず前年に比べて花壇の花の量をどれだけ減らしました、とかそういう報道が出てくるのは目に見えてます。実は「2割削減予定!」とかぶち上げている、取らぬ狸的宣言をしている地方もあります。やってから言え。


■工作作風改善の結果発表!

さて政治局会議から1ヶ月後の1月4日、この間の成果が発表されています(中共中央政治局、工作作風改善の「8項目規定」発表1ヶ月の総括(新華社 2013/1/4))。

中央指導者の視察は車両を減らし、随行員を減らし、スローガンを掲げず、山を封鎖せず、道路を封鎖しない。

視察、会議のみならず、ニュース報道の文字数、時間を大きく圧縮し、メディアは微博などの方法で中央指導者の視察を「生中継」する。

中央経済工作会議の会期を縮め、生花をなくし、ブリーフィングを短縮し、これまで使用していた布製またはプラスチックの書類袋を紙製に代え、袋の中に入っているものは1本のペンと1冊のノートとなった。

中央農村工作会議場には植物を一切をおかず、工作人員を減らし、会議用の車両をこれまでの15台から10台に減らした。

厳格に勤めて倹約し、中央指導者は視察中「一号楼」や「プレジデントルーム」には泊まらず、飲食も関連規定を厳格に守る。

どうでもいいというか、嘘くさい成果がどっさり。書類袋が布製から紙製になったとか、ペンは1本までとかのみみっちさがすごいというか、簡略化しましたという成果をごてごてと常套句で飾った記事の矛盾っぷりがすごいというか。そうかそうか。じゃあ新聞聯播は5分くらいに短縮して、人民日報も2ページ構成にしてみろよと。出来ねえだろばーか、と言うのも空しい。

今までと同じスローガンだけの作風改善になることは間違いないでしょう。この記事自身が「毛沢東から鄧小平、江沢民から胡錦濤。党の代々の指導部は、以前から作風建設を重要な位置に置き、繰り返し強調している」と、何度チャレンジしてもダメだったと吐露している点が笑えます。


■いけにえになった人々

さて政治キャンペーンをやる以上、いい話だけで終わるわけにはいきません。いけにえは必要です。

無錫市の鴻山街道幹部80名がアモイで38万元公費使う(人民日報 2013/1/5)

見出しにある街道というのは、中国の末端の行政機関です。で、この末端の行政機関の幹部83人がアモイに3泊4日の視察へ。鴻山街道は国家級の休閑旅遊度假區(リゾート地域)にする計画があり、そのための視察という建て前だそうですが……。

ホテルは四星級、移動にはハイヤー、会議もホテルで開催という大名旅行。費用はお一人様3万元(約39万円)となっています。「午後1時過ぎくらいにやっと食事が出た日もあって、ホント大変だった」とは視察に付き添った旅行社のボスの余計な一言。遊びメインの視察旅行だったことをうかがわせる觱事でしょう。

この件は人民網にタレコミがあって明るみとなったのですが、人民日報の取材に対して周栄・党工委書記は、「この手の旅行会議は無錫のほかの地域でもやってるよ。珍しくも無い事なのに、何マジになってんの?」とこれまた余計な一言を行っています。

どこまで問題にされるのかは見守るしかないのですが、いけにえとして処分される可能性もありそうです。


■自由すぎるぞ江沢民

もっとも工作作風改善8項目の規定違反となりますと、我らが江沢民があっさり破っております(関連記事)。規定では勝手に揮毫したり、題字を送ってはいけないことになっていますが、完全無視状態です。米華字ニュースサイト・多維網などは「習近平のメンツ丸つぶれ」などと報じていました。

「江沢民は何をやってもスルー、下っ端は派手に取り締まる」という状況ともなれば、中身のない見せかけのキャンペーンに過ぎないとしか言えません。ただ派手好き江沢民を牽制するための工作作風改善なのではとちょっと期待したりもするのです。まあ老人力MAXの江沢民には通用しなさそうですが。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年1月6日付記事を許可を得て転載したものです。

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