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「最悪」を超えた限界突破の大気汚染は温家宝の贈り物だった―中国

2013年01月13日

中国の大気汚染が“限界突破”している件について


20130113_写真_中国_大気汚染
*半端ない画像の数々はこちらでどうぞ。

■スカウターが壊れるレベル

限界突破!観測不能レベルの大気汚染に=各地で濃霧・大気汚染の報告―中国
レコードチャイナ、2013年1月12日
11日、四川省気象台は大霧オレンジ警報を発令した。一部では視界が200メートル以下になるほどの濃霧となった。この日は河北省、天津市、武漢市などでも濃霧や深刻な大気汚染が観測されている。特に河南省の一部では空気品質指数が最悪となる500を表示。観測限界を超えた汚染となった。


■基準値の10倍って界王拳ですか……■

各地で有害物質含む濃霧=呼吸器疾患急増、交通まひ―中国
時事通信、2013年1月13日

微小粒子状物質「PM2.5」。北京では12日、この物質の観測値が1立方メートル当たり75マイクログラム以下としている基準を市内全域で超え、半数の観測点で基準の10倍近くまで上昇。900マイクログラムを突破したところもあった。

■35μg/m³で危険なんだけど、昨日は852μg/m³やった……

汚染
ブログ・鞦韆院落、2013年1月13日
PM2.5が大気汚染の指標のひとつになっていて、日本の環境基準では「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下」が望ましいとされ、WHOの基準は「年平均値10μg/m³以下」となっています。
WHOによれば、長期間35μg/m³の状況に置かれると心肺疾患と肺がんで死亡するリスクが15%増加するそうです。

12日の夜の時点で北京のAQIは732、PM2.5は852μg/m³だそうです。
もはや有害の範囲を超えています。

■北京市で外出をやめるようにと通達

北京 大気汚染悪化し生活にも影響が
NHK NEWSWEB、2013年1月13日

大気汚染の基準となる指数が12日、6段階のうち最悪を示す状況が続き、北京市は市民に外出を控えるよう呼びかけました。こうした状況は今後、数日間は続くとみられていて、北京市は、一部の地域の学校に体育の授業で屋外での運動をやめるよう通達を出しています

■PM2.5的に去年とはちょっと違う霧

北京や天津では濃霧は日常茶飯事。そんなに珍しい話ではない。が、今回、例年と違うところは超微粒子物質「PM2.5」の観測結果が公表されていることだろう。

従来、中国ではPM10の観測結果しか発表していなかった。しかしより健康と関連性の高いのはPM2.5と言われている。米国大使館、領事館が独自の観測結果をツイッターで流していたが、「災厄レベル」などとキャッチーな言葉で状況を示していたことも中国ネット民の心に火を着け、大気汚染は中国の人々が広く注目するところとなった。

先日の南方週末事件のような「言論の自由」といったテーマでは支持者が限定的になってしまうが、健康というテーマでは関心を持つ人の比率が一気にふくれあがる。かくして燎原の火の如く民草の声は盛り上がり、「民に優しいおじいちゃん」温家宝首相の一声で、PM2.5観測の前倒し実施が決まったのだった。

というわけで、その一声がなければ今回の大気汚染がこれほど注目されることはなかったはず。この騒ぎは温家宝おじいちゃんの贈り物と言えそうだ。


■最悪の大気汚染、その原因は霧でした

で素直に結果を出していたら、壊滅的な汚染の数値が出てきてしまったという。北京や武漢など広い範囲で空気汚染指数(AQI)が最悪値の500を超えているとのこと。河南省のある病院ではここ数日、呼吸器系の患者が3倍に増えたのだとか。

で、、気になるのはなぜこれほど空気汚染の数値が悪化しているのかということ。河南省、湖北省、北京市、山東省など華北地域を中心に広い範囲で汚染が観測されているとのことなので、どっかの工場がちょっと気合い入れて煙を吐いたというレベルでは達成できるはずもない。

これについて央視網は霧こそが大気汚染の数値悪化の原因だと主張している。まず間違えやすい話を押さえておくと、霧と汚染物質はイコールではないということ。汚染物質がなくても霧はでるが、汚染物質もまざると視界を奪う効果を増す、つまり霧と同じような働きをするので、混同しがちなのだ。

で、央視網によると、寒気団が弱まり中東部の気温が上がったことで例年通り霧が出やすい気候になったとのこと。問題は霧が発生すると空気中の汚染物質が拡散しにくいのだとか。そのため都市から出された汚染物質が拡散することなく、最悪の大気汚染指数を更新しているという。

なるほど、と納得してもいいのだが、霧がない普段はこのマーベラスな汚染物質が東へ、東へと流れていっているのか……と考えると憂鬱になってしまったり。また習近平新体制も「民への優しさ」をアピールするべく、工場の操業停止などの一時的な大気汚染対策を導入する可能性が取りざたされている。工場を動かさず、車の走行距離を制限すれば大気汚染が決定的に改善するのは北京五輪でお試し済み。というわけで、工場の規制などで日本企業に影響する可能性もありそうだ。

それにしても昨年、PM2.5問題で中国ネットが炎上したのも広範囲の濃霧が原因だった。中国の冬に濃霧は付き物。これから霧が出るたびに政治不安につながりかねないと思うと、これもまたなかなか大変な話であると思わされるのだった。


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