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汚職官僚の妻は香港で子どもを産む?!一人っ子政策逃れの裏技に規制案(水彩画)

2013年01月18日

■広東省官僚の香港出産厳禁の意図とは■


■中国人妊婦問題から1年

2011年12月の記事「中国人妊婦が香港の病院を占拠=困った現地政府は温家宝に直訴」で、中国本土の妊婦が旅行客として香港に入り込み出産、子どもに香港籍を与える動きについて取り上げました。

産婦人科病院が中国本土人で埋め尽くされて、香港人が「出産の予約が取れない!」と社会問題になったのですが、それだけではなく中国本土よりも安い品物を買いに来る越境買い物客のせいで香港の粉ミルクが売り切れにとか問題が続発。「中国人は醜いイナゴ」だと排斥を呼びかける運動も広がるなど、香港と中国本土の亀裂に注目が集まっています。

詳しくは文末関連記事を見ていただきたいのですが、今まで扱ってこなかったネタとして香港龍獅旗についてちょっとご紹介。上述したとおり、中国本土人に対する反発、抗議活動が広がっているのですが、そこでたびたび登場しているのが香港龍獅旗。なんと英国植民地期香港の紋章に基づくデザインで、「中国より英国のほうが良かった!」というメッセージがにじみでています。

どこまで香港市民に広がっているのかという点では怪しいのですが、中国共産党にとっては危険すぎるメッセージだけに、昨年7月に就任したばかりの梁振英・香港特区長官がいかがなものかと苦言を呈するなど、ちょっと腫れ物扱いのネタに。今後、露出が増えていくようなことがあれば大変でしょう。

20130118_香港_反中国_旗_1
*英国植民地時代の香港の旗。

20130118_香港_反中国_旗_2
*上記の旗にも使われている香港の紋章。

20130118_香港_反中国_旗_3
*そしてこれが問題の香港龍獅旗。香港の紋章に、漢字で「香港」と書き加え、さらに背景をロイヤルブルーにしただけという手抜きっぷり。


■境外出産は中国共産党党員資格剥奪

さて、上記で説明したような香港での中国本土人の出産制限は、香港人の反発に後押しされていたのですが、このたびちょっと毛色の違う動きがありました。広東省は共産党員、官僚の“海外・境外出産”を規制する方針を発表しました(広東省「党員、国家工作人員の境外出産は『双開』」(中国青年報 2013/1/16))。

”境外”というのは中国独特の言葉で、国内だが大陸の外を意味します。香港、マカオ、台湾を意味するわけです。ちょっと面白いのは、南方週末問題などについて、環球時報やら中国官制メディアは「境外勢力が策動した」と陰謀論を展開するのですが、海外ではなく境外だけに香港も含まれているわけです。環球時報、というか党中央や宣伝部は、肝心な所では香港を信用していない訳ですね。

閑話休題。これまでにも党員や国家工作人員の境外出産は、1998年に省紀律検査委名義で出している規定で規制されているものの、既にザル規定と化しており効力はないも同然だったようです。香港で子供を生めば、子供が香港籍を獲得できるだけではありません。香港では生育計画政策は実施していないため、2人目の子供を香港で生んだとしても、大陸では2人目の存在は無かったことに出来てしまいます。せっかく香港籍を得た子供を、大陸の戸籍に組み込むようなアホなマネをする親はいないでしょう。

しかし今回の規定は今までとはちょっと違う印象も。大陸の戸籍を持つ夫婦が、香港を含む国外で子供を生んだ場合、雙開(党籍剥奪、公務員資格の取り消し)という重い処分。実際、15日には広東省汕尾市政法委書記が、汚職で雙開となっています。わかりやすい例となりましたが、今回の規定の処分がいかに重いかを物語っています。

わざわざこんな規定を出すぐらいですし、同様の例はいくらでもありそう。明報によれば、雲浮市委書記が2008年にアメリカ出張の際に親族訪問の名目で妻子を同行させ、現地で出産したとなっています。もちろんこれ一例だけ、というのはありえないですし、県級市委書記以下の下っ端でも香港行きくらいなら何とかなるでしょう。

ただですね、2人目を身ごもったと聞きつけ妊婦に違反金をたかる末端ならともかく、血眼になって取り締まる必要性があるのか分からないんですよね。習近平体制の汚職官僚取り締まりの一環として、汚職官僚の一人っ子政策逃れ、海外逃亡の第一歩として子どもに中国本土外の戸籍を取得させるという動きを取り締まろうとしているのか。

あるいは別の目的、例えば海外逃亡に絡んでいるのでは、などと想像をたくましくはしてみたのですが、想像力と知識が貧困だったため、ただの邪推で終わっております。ご存知の方はご教示ください。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年1月17日付記事を許可を得て転載したものです。


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