■中国軍機への「警告射撃を検討」"誤報"/日本政府は報道を否定。右往左往する中国。■
■産経の大誤報:「警告射撃」報道について
安倍首相が米村敏朗内閣危機管理監らに、尖閣周辺での領域警備で対抗措置を強化し、領空侵犯機が無線での警告に従わない場合には曳光弾を使った警告射撃を行うことなどを検討するよう指示した、と産経新聞が1月9日に報道した。
中国メディア各社(特に環球時報)がコレに反応し、中国外交部も同日午後の定例記者会見で警戒を示す発言をしたが、日本の菅義偉内閣官房長官が1月10日午前の記者会見で報道を否定した。
結果、中国メディアの各社や軍事専門家たちが、産経新聞の"誤報"に一斉に釣り上げられた恰好となった。そんな中国の対応が滑稽に感じられたので、それについて少し。
その部分の文字書き起こし。(動画の11分50秒くらいから。)
記者「(略(*明瞭に聞き取れなかった))安部総理が防衛大臣に対して、自衛隊の運用見直し、つまり中国の飛行機が来た際に警告射撃をするようにと、検討されるようだという報道が出ているのですけれども、この事実関係について教えてください。もし、警告射撃をした場合に(明瞭に聞き取れなかった(8秒間))かもしれませんけれども・・・」
菅義偉 内閣官房長官「私は、その問題についてはまったく承知はしておりませんし、私は、日本政府はエスカレートするつもりはまったくない。これは、 日本の固有の領土であることは常に主張しながらですね、冷静に、中国に対応を求めていきたいと思いますし、日本は日本としての主張をきちっと行っていきたい。」
■誤報に釣られた環球時報と中国の軍人さん
環球時報は、産経新聞の報道(1/9 06:55)のすぐ後に、いつものように威勢の良い愛国的記事を書いている。
ところが面白いことに、翌10日の午前3時半、突然に水をさすような表現が出てきた。
日本威胁对中国“警告射击” 或成“开战之举”(环球时报|1/10 03:33)
サーチナがこの内容を紹介している。
記事は、日本の防衛省が情報の存在について回答を拒否し、「日本では『唯一情報を伝えた産経新聞の思い込み』と懐疑的な見方を持つ人がいる」中で、「中国のネット上では多くの人が、日本が過激な行為に出ると信じている」と伝えるとともに、「中国への重大な挑発」「開戦行為」と決め付ける中国の空軍専門家も現れたとした。
日本防卫省9日拒绝向《环球时报》证实此“预案”是否存在,日本也有人怀疑它只是《产经新闻》一厢情愿的设计。但在中国互联网上,不少人相信这种过激举动日本做得出,也有中国空军专家将其定性为对中国的严重挑衅,甚至是“开战之举”。
(日本威胁对中国“警告射击” 或成“开战之举”(环球时报|1/10 03:33))
この10日午前3時半(日本時間:午前4時半)には、当然、日本の内閣官房長官の10日午前の記者会見は始まっていない。中国政府から日本政府に対して、報道の真偽について問い合わせはするだろう。9日午後にでも、日本政府から報道を否定する回答があったのではないだろうか。それで環球時報に対して「あまり燃え上がらせるな」という指示でも出したのかもしれない。
中国の軍事専門家は、それ以上の恥の上塗りは避け、火消しにやっきになっているようだ。
(今回の「警告射撃」"誤報"は、産経新聞の独自取材による"トバシ"記事だから、他の日本メディアは特に論評はしていない。結果的に、官房長官が「報道を否定」した事について、中国メディアは非常に多く報道しているのに対して、日本メディア発の日本語情報が薄いという、変な逆転現象が起こっている。)
その後も、新華社通信が「日本の報道を「あおりたてている」「言いがかりだ」などと非難」するなど、関連記事で腹いせをしているように感じられる。
■中国空軍が釣られた腹いせに?!
今年に入って、南方週末(南方周末)の年頭社説の改ざん事件が起こり、デモが行われるなどかなりエスカレートしていた(
参照)。国内で問題が起きたら、反日ムードを演出して外国の脅威を持ち出すのはいつものやり方なので、余計に飛びついたのではないだろうか。
そして、あっさりと釣り上げられてしまった(笑)。報道を裏からも表からも操作して、世論をコントロールしようとするのは中国共産党のいつもの手だ。だから、他国も同じことを仕組んでいる、と同レベルで考えてしまうのかもしれない。
ところで、中国メディアやBBSの意見の中には、武力衝突を期待するような非常にきな臭いものが多い。検閲で不都合な意見は削除され、五毛党(官製ネット工作者)の操作もあって、中国国民の意識を充分に反映していないのは周知の通り(2ちゃんねるでの書き込みが日本国民の意識というようなもの)。
こういう視点で見ると、10日昼頃〜夕方に、日本の防空識別圏に中国の軍用機を含む十数機が入った一件は、中国空軍による「撃てるものなら撃ってみろ」という武力示威行為というよりも、恥をかかされたから「嫌がらせをしてきた」ように感じられる。
翌11日には中国国防部関係者による、自衛隊機に対して中国軍機2機がスクランブル発進をしたという、発言があった。尖閣諸島というよりも東シナ海ガス田周辺の話で、中国軍の「Y8(运-8)」機(情報収集機、哨戒機)に対して、航空自衛隊の「F15」が接近してきたので、中国空軍の「J10(歼-10)」2機が発進した。