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2013年01月27日
■虎もハエもまとめて打つ、習近平の汚職撲滅キャンペーンの獲物とは?!
2013年1月22日、中央紀律検査委員会で習近平は「党を統治することから初め、処罰の手は決して緩める事は無い。虎もハエもまとめて打つ」と、汚職撲滅に対して決意を表明しました。同じような発言は何度も聞いた気がします。というのも習近平就任以来、発言や方針についてキャンペーンがセットで展開されているからです。
といっても今までお縄にかかったのはハエばかり。虎というからには、エロ写真を撮られた地方の官僚程度ではないはずです。さてどんな「虎」がでてくるかと期待していたところ、明報が「習近平発言以降、中紀委が「虎」を打ったという情報が北京を独り歩きしていた」と報じています(「全人代副委員長李建国が取調べ中か」RFI中文、2013/1/26)
その虎とは、十八大で政治局委員に昇格したばかりの李建国。李建国については山東省委書記時代に、甥を一気に二段階昇格させており、これが紀律違反ではないかと市民から中紀委に通報があったことを以前にお伝えしています。(過去記事:2012年12月17日李建国さんが身内ヒイキをチクられる)
報道ではあまり触れられていませんが、現在雲南省宣伝部副部長を務めている李茜は李建国の姪であり、他にも李建国が陝西から山東に移動になる際に10数人を引き上げて、後任の趙楽際が北京に報告を行って揉めたという話もあります
ただ、中紀委の調査対象となった理由が、身内のヒイキでは虎にはなり得ません。実は裏に隠れてとんでもない紀律違反を犯しているのか。
李建国は昨年11月末に北朝鮮訪問が予定されていたものの、予告無しに劉奇葆(中央宣伝部長)に交替しており、ヒイキの件で調査中だったと伝えられていました。
12月19日に香港の人民代表選挙会議に出席し、1月14日に香港トップの梁振英と会見しているものの、それ以外の動向は伝えられていません。全てが噂の域から出てこないお話ですが、プレッシャーに押しつぶされて北京にある解放軍三〇一医院に入院中との情報もあります。
■習近平の元老封じ
さて、もし李建国が「虎」だったとして、それを狩ることにはどのような狙いがあるのでしょうか?その背景として、習近平による元老封じという構図が考えられます。
李建国は李瑞環の秘書を務め、李瑞環が最後にねじ込んで政治局委員に昇格させたといわれる人間です。第18回党大会(十八大)において、古参同志が力を振るったのはこれだけではありません。人事に対する介入がひどく目立った党大会だったのです。李源潮、汪洋ら常務委員入り有力候補が結局、政治局委員止まりだったのも江沢民や李鵬の横槍とされています。
思えば十八大前には江沢民がオペラを見に行ったというニュースをはじめ、古参同志の健在アピールが相次ぎました。結局、十八大の主席台は、1/3が古参同志に占められることになりました。
あるいはこの絵柄に習近平は中央顧問委員会の悪夢を思い出したのかもしれません。中央顧問委員会は1982年から10年間存在した、養老院というにはあまりにも強大な機関。党歴40年以上という参加条件からも分かるように、建国に携わった有象無象のじじい共の集まりであります。
鄧小平は政治局の若返りを進めるために顧問委員会を受け皿として設立したのですが、顧問委員会は結局中央委員会と同等以上の権力を持つ事になってしまい、胡耀邦の失脚をはじめとして十三大(1987年)の人事に強力に介入をしてきたことでも知られています。
余談ですが、顧問委員会解散の際に暗躍していたのが薄熙来の父で、現役時代人事部門にいた薄一波だったりします。顧問委員会副主任務めていた薄一波は、1992年の解散の際に反対派の声を静めるために「鄧小平が決めた」と殿下の宝刀を抜くしかありませんでした。
中央顧問委員会を廃止して20年が経過したものの、古参同志の介入はなお続いているわ、十八大の人事を実質的に決めたとされる北戴河会議も一時は廃止されたと言われながらも堂々の復活。これでは中央顧問委員会が存在していた頃と変わりません。
鄧小平というストッパーがおらず、本来なら取りまとめるべき江沢民が率先して介入してくるので20年前より状況は厳しいといえます。もちろん、長老達を現役時と変わらずに遇している党中央にも問題はあるのですが。
作風改善の8項目以降も派手に活動していた江沢民が、一転して「序列は他の古参同志と同じに扱うよう」求めたり、江沢民の決起集会と化していた三高楽団をあっという間に解散させたり、習近平はここ最近古参同志に対する締め付けを強化しています。
これが習近平と古参同志との闘いの序章なのか。まずは李建国の扱いについて、大陸メディアを注視しなければなりません。
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年1月27日付記事を許可を得て転載したものです。