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文化大革命時期の航空管制が大変なことになっていた件=形式主義の極致と命懸けの早口言葉―中国

2013年02月01日

南方週末が文化大革命時期の空軍基地管制室についての記事を掲載しているが、今から見れば笑い話にしかならない、赤い形式主義が生々しく描き出されている。


Liu Shaoqi, Deng Xiaoping and Tao Zhu, get out from the central of party
Liu Shaoqi, Deng Xiaoping and Tao Zhu, get out from the central of party / PeterGuo


【体験記】形式主義の極致
著者:張暁諾
南方週末、2012年10月12日


■文化大革命と航空管制

文化大革命の最中にあたる1968年から1970年にかけて、中国では政治の影響力が高まり、奇怪な形式主義の極致が出現していた。

1970年初頭、私はある空軍基地の管制室に配属された。大量の輸送の離着陸の管制が通常時の主要な仕事だ。管制用語は簡潔、正確、適切なタイミングが重要。しかし当時の極左的思想の影響下では、管制室と航空機の会話に毛沢東語録や政治スローガンを加えなければならなかった。もしやらなければ、少なくとも軍事問題を単純化したと叱責された。深刻な場合、態度問題として追求される可能性もある。

当時は以下のような形式で、航空機と管制室は対話していたのだ。今見るとばからしいが、当時はこれが当たり前だった。長江が管制室、4836が航空機となる。

0042-001M
0042-001M / 刘云天


■実際の航空管制


4836:毛主席万歳!毛主席万歳!長江、長江、こちら4836。

長江:こちら長江、4836に応答する。音声はクリアーだ。我々は五湖四海(全国各地)からやってきた。一つの共通の目標のために。用件を述べよ。

4836:毛主席の本を読み、毛主席の話を聞き、毛主席の指示通りに行動する。4836は検査を終了した。エンジン始動の許可を願う。

長江:林副主席にならい、毛主席の良い戦士とならん。4836、確認した。エンジン始動を許可する。現在、45度(東北)から秒速3~5メートルの風あり。南から北に向かって離陸せよ。

4836:勝ち目のない戦いはしない。備えのない戦いはしない。4836、準備完了。移動許可を願う。

長江:過剰なまでに繊細になるべきだ。おおざっぱではだめだ。たびたびミスをするであろう。4836、確認した。移動を許可する。左に曲がり、2号より滑走路に入れ。

4836:了解。

4836:世界は「認真」(まじめ)すぎることをいやがるならいやがるがいい。それでも共産党は最も「認真」を追求する。長江へ。4836、準備完了。離陸許可を願う。

長江:謙虚さは人を進歩させる。傲慢さは人を退歩させる。4836、確認した。離陸を許可する。高度1200メートルまで上昇せよ。

4836:了解。

4836:長江、こちら4836。高度1200メートルにまで上昇した。高度1800メートルまでの上昇許可を願う。毛主席の指し示す航路に沿って、勝利・前進せよ。以上、(離陸)作業は終了した。通信終了を請う。

長江:対抗機はない。高度1800メートルまでの上昇を許可する。軍隊が前進し、生産(拠点)が進歩し、紀律を強化したならば、革命が勝利しないということがあろうか?4836、(離陸)作業は終了した。短波の連絡は良好。オーバー。

004404_433469925
004404_433469925 / PeterGuo


■呉参謀の早口言葉

こんな管制がいいのかわるいのか。結論は誰もがわかっていたが、しかし誰も反対しなかった。

ある時のことだった。空港の上には低く雲がたちこめ、小雨もふっていた。視界はわずかに1キロだった。管制を担当するのは呉参謀。1960年入隊のベテランだ。

着陸しようと近づいてくる航空機。雲の下に出てきたところを確認すると、高度も高くコースも外れている。ただちに着陸進入を中止する必要があった。呉参謀は口早にこう行った。

「宜将剰勇追窮寇,不可沽名学霸王」(よろしく剰勇をもって窮寇を追うべきだ。覇王に学んで沽名するべからず=戦いの後は残した力を振り絞って敗走する敵を討つべきだ。覇王・項羽が劉邦にしたように、一時の名を得るために敵を逃がしてはならない)。着陸復行(やり直し)!」

これを聞いて航空機はあわてて着陸を中止した。その時飛んでいたのは滑走路に近づいてから着陸までわずか20秒あまりしかかからない機種だった。私は再三迷った揚げ句、ついに呉参謀に話しかけた。

「呉参謀、着陸を管制する場合、毛主席語録をちょっと省略できないでしょうか?」

呉参謀は黙ったまま。手を伸ばして私の肩をぽんぽんと叩いた。その時、私はこのベテラン軍人の善意を知ったのだった。


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