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日本では基準値超えの大気汚染が中国では「良」に=中国版大気汚染指数の秘密(犬大将)

2013年02月06日

■中国のAQI(大気汚染指数)について■


最近は中国から飛んでくるPM2.5(微小粒子状物質)なるものが話題。その目安として大気汚染指数(AQI)なるものが使われている。実はこのAQI、各国統一の指標ではない。アメリカ環境保護庁(EPA)の決めたものが有名だ。アメリカには大気浄化法なるものがあるのだが、何マイクログラムとか言われてもピンとこないということで、大気汚染指数(AQI)で汚染の度合いを示すことになったのだ。90年代末のことである。

似たようなものは他の国でも導入されているが、各国マチマチで、統一させるつもりもないようだ(「Air quality index - Wikipedia」)。日本なんかは指数とかではなく、注意報という形を表現している。ちなみにAQIはAPI(Air Pollution Index)ともいう。数が大きいほど汚ないことを示すのだからその方がふさわしいのかもしれない。

中国も最近経済成長いちじるしく、ついに先進国っぽく大気汚染指数を導入することになったのだが、わざわざアメリカをマネている。名前もAQI(環境空気質量指数)で米国と同じだ。

20130206_写真_中国_1

この算出方法だが、話題のPM2.5の濃度だけを測っているのではない。PM10や二酸化硫黄、二酸化窒素、オゾン、一酸化炭素など複数の物質の濃度を測定し、その最悪値が採用される。

測定する物質ごとに危険度が違うため、濃度に対応する指数も異なっているが、それだけではない。濃度と指数値は正比例の関係ではないのだ。例えばアメリカのAQIのPM2.5指標を見ると、AQI100の濃度は35.4μg/m3だが、AQI200時点では150.4μg/m3。指数は倍だが、濃度的には4倍になっている。

ここからがおもしろいところだが、やはりというかあたりまえというか、中国とアメリカでその基準が違うところもある。気体についてアメリカはppm(濃度)、中国はμg/m3(重量)で基準を決めており、いちいち計算するのが面倒なので比較しないが、微粒子は重量ではかるしかないのでアメリカもμg/m3である。実はPM10(黄砂程度)については中国はアメリカそのままだったりするが、話題のPM2.5についてはおもしろいので比較する。

20130206_写真_中国_2

空気中のPM2.5が35μg/m3だとした場合、中国だとAQIは50で「Good」。ところが米国だと100で「Moderate」と判定される。高濃度の場合は両国の基準はほぼ合致するが、低レベルでは中国の基準がずっと緩い。要するに危険ゾーンが少なくなるように基準値を変えているわけだ。中国人は微粒子に強いということかもしれないが……。

他にも 北京のアメリカ大使館と北京気象当局の観測地点で条件がなんか違うとか言う話もあるようだが、とりあえずここまでは調べたということで!あと福岡市がビビってPM2.5の独自基準を制定するというニュースが報じられた(読売)。1月に52.6μg/m3が観測されたということ(ただしAQIでは24時間平均の濃度が採用され、一瞬だけ測定された値とは基準が異なる)。日本の基準値35μg/m3を超えているが、中国基準だと「良」になるということも言い添えておこう。

参考資料:
http://www.epa.gov/airnow/aqi_tech_assistance.pdf
http://www.epa.gov/air/particlepollution/2012/decfsstandards.pdf
http://kjs.mep.gov.cn/hjbhbz/bzwb/dqhjbh/jcgfffbz/201203/W020120410332725219541.pdf

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*本記事はブログ「メモ@inudaisho」の2012年10月8日付記事を許可を得て転載したものです。


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