中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年02月11日
■反日モードでも日本アニメの公式配信は増加中
ありがたいことに「現在の中国の動画サイトにおける日本の公式アニメ配信の状況について」の質問や情報をいただいておりますので、大雑把なものになりますが今回はそれについてやらせていただきます。
昨年の暴動やら何やらのゴタゴタからこっち、中国本土での日本からゲストを招いてのオタク関係のイベントというのは非常に難しい状況が続いていますが、中国のネット動画サイトにおける日本のアニメの公式配信に関しては、むしろ拡大傾向にあるようです。
昨年後半は、中国オタク内でも大人気となった「ソードアート・オンライン」が楽視で公式配信されましたし、他にも「マギ」や「猫物語(黒)」といった大型タイトルの配信も行われています。
中国では日本関係の名前を大っぴらに出すのはまだ難しい空気も残っており、動画サイト側の宣伝やニュースの出し方にはイロイロとクセがありますし、当然ながら勝手にアップされたりなんだりの非正規動画もたくさんあったりします。それに加えて、日本側の版権販売ルートも錯綜しているようなので権利取得の実態に関してはイマイチハッキリしない所もあるのですが、とりあえず今年1月から始まった新作アニメに関しては
愛奇芸(iqiyi)で「閃忍カグラ」「ちはやふる2」「みなみけ ただいま」。捜狐(sohu)で「AMNESIA」。楽視(letv)で「ビビッドレッド・オペレーション」、「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」。またそれ以外にも愛奇芸(iqiyi)で「絶園のテンペスト」捜狐(sohu)で「HUNTER×HUNTER」「FAIRY TAIL」「リトルバスターズ!」楽視(letv)で「マギ」が現在公式配信されている模様です。最新話の配信は日本での放映とほぼ変わらない時間に行われることが多いようです。
ちなみに、以前テレ東から大量の版権を取得した土豆(tudou)は新作アニメの獲得については特に動きはないようです。土豆に関しては優酷(youku)との合併以降テレ東との関係についての話は聞きませんし、その後の進展は無いのかもしれませんね。
この辺の流れに関して、中国のソッチ系のサイトでもイロイロと話題になっていますので、以下に例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。
■中国人オタクの議論
10月アニメで版権獲得した作品の配信が結構出たのは意外だったが、1月アニメはもっと増えたな。なんか予想外の方向に進んでいる気もする。
どの動画サイトもそれなりに考えて版権を取っているようなのが面白いね。金出してとりあえず数揃えましたってのではなく、一応視聴者ウケの良さそうなのを狙っているのが見て取れるし。
捜狐は長編の一般人気の高い作品、楽視は短期的な人気作品、奇芸はなんていうかネットで話題になりやすい作品って所かな。
どのサイトもある程度ウチの国で知られている、話題になっている作品を確保しているのは良いね。「数を報告する」ためだけに、ファンが全く知らない作品を集められても困るしな。
以前の土豆とテレ東の時は数を揃えるためっぽいのも見て取れたよね。あれは確かに量は多かったが、微妙な作品も少なくなかった。
でもここしばらくの版権獲得の盛り上がりは、土豆がテレ東から大量購入した流れから来ているものなんじゃないか?その土豆自身が現在はグダグダになっているのは少々アレな気分になるが。
ファンサブ字幕や弾幕系動画サイトとかどうなんのかね。この流れだとプレッシャーが拡大するように思えるが。
ファンサブ字幕版をダウンロードして見ているヤツは特に影響ないんじゃないの?
ファンサブ字幕付ける字幕組とか、最近は流すだけじゃなく動画サイトを発表の場として使っているような所もあるし、弾幕コメントは動画自体は他のサイトから持ってきてインターフェースかぶせているだけだから、公式配信の影響無しとはいかないのではないだろうか。
こんなの意味あるの?版権取って放映している動画サイトにだって前と変わらず海賊版な動画はあるくせに、どのツラ下げて他のサイトの動画を規制しようとするんだ。そもそも、公式配信の字幕翻訳がファンの心をつかめるわけがない。ファンサブグループのファンの心を分かっている字幕はオフィシャル翻訳にできるはずがないって。
私も公式字幕は見る気がしない。ちゃんと作品やファンのことが分かっている、知識のあるファンサブ字幕とかでないとね。
なんか危機感やら不満を覚えているヤツも結構いるみたいだが、これってむしろ良い流れなんじゃないか?簡単に正規の放映に接することができるようになっているんだぞ。
正規ルートができるってこと自体は歓迎していいんじゃないの。非正規ルートが一気に潰されるってこともないだろうし、正規ルートが使えるなら使うくらいに考えてゆっくり対応していけばいいんじゃないかな。著作権的にまともなものが無かったウチの国のオタクの環境だって昔から考えれば随分と変わってきているわけだし、これも変化の中の一つってくらいに考えておこうぜ。
この手の公式配信の話になるといつも公式字幕はダメだという話になるが、最近は公式配信の字幕もかなりマトモになってるぞ。少なくとも私は見ていて気にならない。私の場合、作品にもよるがファンサブ字幕ってクセが強いし、独自解釈を公式設定だと勘違いして覚えそうで怖い。全てのアニメ作品を公式の関連資料と一緒に把握できるわけじゃないしね。
自分はネタ無しの作品で翻訳のレベルが一定以上ならば、クセのない公式字幕で見たい。ただコメディ系やネタあり作品の場合、ファンサブ字幕の方が盛り上がったりするのは認める。
「ソードアート・オンライン」や「猫物語(黒)」の時の状況を考えれば、もう速さでは完全にファンサブグループは公式配信に敵わないというのはハッキリしたと思う。それにその時の字幕の質も問題無かったし、公式配信の字幕の質に関しては作品をぶち壊すレベルなんてことは無いんじゃないかな。あとはもう好みの差じゃないか。
ファンの熱意が最強だと信じたい感情は理解できるが、公式配信してる側も商売だから、やれる範囲での対応はやってくるだろう。そして、字幕のクオリティ向上に関してはそこまで難しいものではないと思う。寂しい話だが字幕に関しては入手できる資料や動画ファイル、投入できる人員リソースや組織のバックアップなどを考えれば、昔のような字幕組による字幕の圧倒的な優勢ってのはもう消えているんじゃないかな。
「猫物語(黒)」とか、公式の字幕もちゃんとしていたよね。あれってシャフトだから動画ファイルが来るのはギリギリだろうし、台本が事前に来ていてもアフレコの際に変わるはずだから、作業時間にあまり余裕は無かったはず。そういった点から想像すると、現在は公式配信側の字幕作成体制ってのもかなり整っているんじゃないだろうか?
私はこれがそんなに大きな影響のあるものだとは思えないが、めんどくさいのは確かかな。正規版のためにわざわざ特定のサイトいくとかめんどくさいし、一定の期間が経つと版権取ったサイト以外の動画が消されちゃっているケースがあったりするし。一つのサイトで一通り見れるってのが楽でいいんだがな。
でも、一つのサイトでも動画のクオリティや検索のリンク先が安定しなかったりするぜ。著作権的にアレなルートでの見放題って、なんだかんだで手間がかかるし安定しない。ちゃんとした環境で、安定して楽に見れることに関して私は歓迎。
心配なのは、テレビでは相変わらずゴールデンタイムに日本のアニメが放映できないままってことだな。ネットは今の所テレビ程の制限はないが、規制の波がこっちに向かって来たらどうなるやら。
まぁその辺は上の方の縄張り争いもあるからね。話題になり過ぎて社会の注目を集め過ぎたりしなければとりあえずは大丈夫なんじゃないかね。バレて騒ぎになりそうだったらあっさり消える気もするが。
ネットに変わってはいるが、この流れってむかーしむかし、まだテレビで日本のアニメを見れた頃に近付いてきてくれているのかなぁ……
残念ながらウチの国の海賊版と正規版の問題は簡単に解決できるものではない。日本の作品の関係者や権利者、それとウチの国の業界の間で、実行可能で有意義なやり方が見つかることを祈るよ。