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自然発生的に始まったチベット人の正月祝賀拒否運動と中国政府の暴力的取り締まり(tonbani)

2013年02月22日

■ウーセル・ブログ:ここ数年の「ロサ祝賀拒否」を振り返って■


焼身抗議が続くチベット。中国政府は焼身は海外勢力が扇動していると批判すると同時に、国内のチベット人が幸せに暮らしているよう見せるため、チベット正月を祝うよう強制しているという。祝わなければ処罰するという話まで伝えられている。
(関連記事:「チベット人が新年を祝っているか監視」「軍を派遣」「通信は遮断」無理やり幸福にさせられたチベットのお正月風景

チベット人作家・ウーセル氏は、このロサ祝賀拒否の運動が2009年、チベット騒乱の翌年にチベット本土から自然発生的に始まったものだと指摘し、中国政府に反論している。

20130222_写真_チベット_
画像はロサ祝賀拒否を呼びかけるもの。チベット人作家・ウーセルのコメント:画像はフェイスブックから。今日はロサ。チベット暦2140年、水蛇年の初日だ。アムドの友人によれば、企業・団体や兵営が派手に爆竹を鳴らしただけで、チベット人家庭は少しも爆竹を鳴らさず、ロサを楽しく過ごす雰囲気はない。僧院で仏教行事に参加したり、家庭で静かに集まったりし、身に着けている民族衣装も無地だという……。


ここ数年の「ロサ祝賀拒否」を振り返って

翻訳:@yuntaitaiさん

◆2008年のチベット騒乱と2009年のロサ祝賀拒否

チベット全土に及んだ2008年の抗議はまさに「ネズミ年の雪獅子の咆哮」だった(ネズミ年は農暦のネズミ年のことで、雪獅子はチベットの比喩)。2008年以降、全てに大きな変化が起きた。水面が静かに見えても地下水はわき返っており、民衆から毎回伝わってくる不服従運動は、より熾烈な炎へと徐々に変わってきている。

2009年のロサ(チベット暦新年)を振り返ってみよう。内外のチベット人は祝賀を拒否し、黙祷して過ごした。当時、アムドやカムなどでひそかに広まったビラには次のように書かれていた。

「ラサの3・10事件では、何千もの同胞が逮捕され、迫害を受け、行方不明になった。平穏無事に漫然と生きているチベット人たちよ、もし良心がまだ残っているのなら、もし苦楽を共にするのなら、次の2点をやり遂げてほしい。喜び楽しんで歌を歌わないこと。爆竹や花火を使わないこと。この2点だけだ。亡くなった人たちを思い起こし、生きている者の幸福を祈ろう!」

別のビラには「同じ民族のチベット3大地方(アムド、カム、ウツァン)の兄弟姉妹、僧俗たちよ、私たちは団結し、ともに抵抗しなければならない。故郷を侵略、占領した政権に二度と頭を下げてはならない。3大地方の民衆は苦楽を共にし、射殺された同胞を決して忘れてはならない。彼らは自分の利益のためではなく、民族の自由と正義のために命を犠牲にした。だからチベット人の一人として、ロサを祝うことはできない……」、と。


◆当局の暴力的取り締まりと偽りの喜び

当局の反応はまず暴力だった。彼らはロサを祝わないことを重大な分裂行為とみなした。例えばラサでは、ロサを祝わないよう伝言したり、ネット上で呼びかけたりした「流言飛語の発信者」を逮捕した。カムのゾゴン(チベット自治区左貢県)では1月20日、街頭でスローガンを叫んだペマ・ツェパクが軍警のめった打ちに遭い、死亡した。

二つ目の反応はチベット人へのロサ強要だ。アムドのレゴン(青海省同仁県)では、地元政府が各家庭に文書を出し、チベット人に署名と捺印を求めた。昨年のような抗議を絶対に起こさないこと、党と政府の指導に従うこと、大々的にロサを祝うことを保証する内容だ。アムドのサンチュ(甘粛省夏河県)やンガバ(四川省阿壩県)などでは、地元政府が幹部や職員に爆竹を配り、正月に打ち鳴らすよう求めた。

三つ目の反応は官製メディアに表れた。ロサを祝わないよう本土のチベット人を扇動しているとして、各官製メディアはチベット亡命政府とチベット青年会議を非難した。

ロサ到来に際し、当局は調和と喜びの虚像を全力で作り出した。例えば西蔵電視台では、中央電視台の春節晩会(年越し特番)を真似たチベット暦新年の晩会があり、予算や規模が最も大きく、審査が最も厳しいとされる。この番組がでっち上げていたのは、春節晩会よりも誇張された嘘だった。一方で、例えば四川省のチベット・エリアに増派した軍隊はロサ期間中、武装警察部隊と中国7大軍区の一つ、成都軍区の部隊を除き、カム北部のタウ(四川省道孚県)と南部のリタン(四川省理塘県)、アムドのメワ(四川省紅原県)などで、大規模な軍事演習を実施した。


◆ロサ祝賀拒否は亡命政府が命じたのではない、チベット本土から始まったのだ

実は当時、ロサを祝わないよう最も早く呼びかけたのは本土のチベット人だった。多くの農民、遊牧民、市民、学生や僧侶、極端な例では体制内のチベット人までもが自発的にそうすることを選んだ。これが示しているのは、中国の行政区画で五つの省と自治区に分布するチベット人が苦楽を共にしようという願いだ。当局に迎合せず、当局を持ち上げず、当局に服従しないという姿勢だ。

ロサ初日の2009年2月25日、アムドのマンラ(青海省貴南県)で、ルツァン僧院の100人以上の僧侶が袈裟を頭からかぶってロウソクを持ち、県政府の正門前に座り込んだ。彼らは「分裂主義者と結託した」と非難される危険を冒し、現場の写真をメールで送り、4点の要求などを提出した。「1、中国政府はチベットの僧俗、特に若い世代の望みを理解するべきだ。2、ロサ祝賀拒否という平和的な抗議は昨年の抗議よりも広範囲にわたっている。3、座り込みは内外の全チベット人に向けた新年の贈り物だ。4、『チベット問題』が早く解決されるよう祈願する」。ルツァン僧院ではまもなく13人が逮捕され、4人が懲役2年の判決を受けた。

実際のところ、チベット人は2009年のロサだけでなく、この数年のロサを不服従というやり方で過ごしてきた。2009年以降、内外のチベット人104人が炎に身を包み、中国政府は非人道的なやり方で焼身者の友人や同郷者、僧侶に危害を加え、ひどい場合は並外れたでたらめや穴だらけの非難をでっち上げてきた。2013年のロサ、つまりチベット暦2140年の水蛇年の到来に際し、各地のチベット人はこうした事実に向き合い、依然として祝賀を拒否し、黙祷して過ごすという方法で、命をささげた者への敬意と抑圧者への抗議の意思を示すのだ。

2013年2月10日 (RFA特約評論)

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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2013年2月21日付記事を許可を得て転載したものです。

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