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2013年02月23日
■ワシントンポストの煽り記事と中国の反応
記事「米紙の煽り記事でちょっと厄介なことに=安倍首相インタビューと中国の反発」でお伝えした安倍晋三首相インタビュー問題。
21日に米紙ワシントンポストがインタビュー記事を掲載したが、「安倍晋三日本首相、中国の紛争の必要性は“深く根付いたもの”」という煽りタイトルに中国メディアが釣られまくり、大騒ぎになった。
新しい情報もアップデートしてお伝えすると、中国外交部報道官が批判コメント、環球時報が批判記事、中国外交部から日本外務省に照会、人民日報に鐘声(人民日報を代表する国際評論に付けられる仮の著者名。共産党の立場を示すきわめて格の高い記事)名義で批判記事(日本語での紹介記事はこちら)というフルコース。前二者はいつものことながら、照会と鐘声記事はなかなか大変な事態である。
ちなみに日本側は22日の官房長官記者会見でワシントンポストの報道は正確ではないとコメント。外務省も照会にその旨を答えたという。22日付新華網が官房長官記者会見の件を伝えているが、その翌日に鐘声記事が出ている。中国様のお怒りは続行中なのか、せっかく記事を用意したので載せてみたということなのかはちょっとわからない。
ともあれ、首相自ら中国を真っ向批判したことは事実であり、中国の「安倍憎し」の声が高まるのは間違いない。安倍首相も米国での講演で「日中は最も重要な二国間関係の一つ」「日本はドアを開けている」と中国との交渉に意欲を示したが、今回のワシントンポスト記事でハードルが一段上がった感がある。
■ワシントンポスト記事の問題点
さてワシントンポストのインタビューのどこが問題だったのか、昨日の時点よりも詳しく分かったので簡単に触れておきたい。ツイッターでMiyoyonさん、TAIDOTOURU2010さんにご教示いただいた。
ワシントンポストには昨日の本サイト記事でとりあげた「Japan’s Prime Minister Shinzo Abe: Chinese need for conflict is ‘deeply ingrained’」(安倍晋三日本首相、中国の紛争の必要性は“深く根付いたもの”)に加え、「Transcript of interview with Japanese Prime Minister Shinzo Abe」というインタビュー全文の英訳が航海された。後者は正確な翻訳だったが、前者の記事はタイトルがかなり全力で煽った内容となっている。
さらにフェニックステレビの李淼記者が日本首相官邸から入手した日本語の発言をマイクロブログで公開している。
*クリックで拡大。
詳しくは上記画像を見ていただきたいが、
安倍「愛国主義教育によって教育された国民から強い支持につながっているのだろうと思っています。しかしそれが、中国のジレンマでもあり、愛国教育反日教育で作られたものは、日本との友好関係を阻害」
↓
インタビュアー「この問題は非常に根深い問題」
↓
安倍「指導者も、経済人も、問題の根深さを認識することが大切である」
という流れ。この部分を使って「Japan’s Prime Minister Shinzo Abe: Chinese need for conflict is ‘deeply ingrained’」(安倍晋三日本首相、中国の紛争の必要性は“深く根付いたもの”)というタイトルを付けるのは反則に近い煽りではなかろうか。
ちなみにワシントンポストは23日、「Japan says reported remarks on China by Abe were ‘misleading’」(安倍さんの中国関連発言の部分はミスリーディングやって日本に言われたで)という記事を掲載した。その最後の一分が「でも日本政府がサイトにアップしたインタビュー全文は正確だと言ってるやで」でしめられているのがなんとも味わい深い。
さて、本当はフェニックステレビの李淼記者の奮闘ぶりに感動したので、そのことを書きたかったのだが、長い記事になってしまったので稿を改めたい。というわけでここまで。
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インタビューで安倍さんの話を聞いているうちに不快指数が上昇し、煽りというより叩き記事を書いたということのように見受けられる。
安倍という日本の極右政治家は、一国のトップでありながらこんな下品なことを言う奴なんだぞ、みたいな。