■少女が殺された?コルラ市の殺人事件で広がるウイグル人への憎悪―中国■
■暴動?通り魔?コルラ市で殺人事件、4人死亡
事件については7日にはネットで噂が広がり、SNSやネット掲示板で大削除祭りが展開されていたが、8日になって自治区政府が事件を認めた。だが、中国メディアの報道にはいまだに規制がかかっており、一度は公開されたウェブニュースもほとんど削除されている。以下はなぜか残っているニュース。
新疆ウイグル自治区コルラ市で刃物による殺人事件、4人死亡8人負傷
中山網、2013年3月8日
7日午後、新疆ウイグル自治区南疆築コルラ市で刃物による殺人事件が起きた。本誌記者が新疆政府官僚に電話取材したところ、午後2時にコルラ市でウイグル族による、長い匕首を使った殺人事件が起きたことを明かした。4人が死亡、8人が負傷。コルラ・テレビ局はすぐに事件について伝えたという。
コルラ市の消息筋に聞いたところ、事件は午後2時、コルラ市繁華街の金三角商業街のバーから始まった。殴り合いのけんかとなり、数人のウイグル族青年が漢民族の男性1人を刃物で殺害。他に漢民族の女性2人が重傷を負った。現時点で負傷者は病院に送られ、治療を受けている。現時点でウイグル族犯人のうち1人が逮捕されたが、2人が逃走中だ。
コルラ市は新疆ウイグル自治区の石油生産の中心地。ウルムチ市から南に400キロに位置している。漢族、ウイグル族、回族、モンゴル族など23の民族が住んでおり、少数民族は総人口の約3分の1を占めている。
4人死亡と書かれているが、記事には漢民族の男性しか出てこない。
ウイグル在線は7日、現場にいあわせたという情報提供者の発言を掲載している。それによると事件の発端はバーではなくゲームセンターだという。また同サイトには携帯電話で撮影したという写真が3枚アップされているが、死者とおぼしき人が道路の上に横たわっている。ネットの書き込みでは暴動に発展したという話もあり、騒ぎがゲームセンター(かバー)の外に広がった可能性もある。
また他の死者については
制服を着た、まだ小さな子どもが首をかっきられたという話もあり、「ウイグル族許すまじ」などの怒りの書き込みが広がっていた。まあ、今はほとんど削除されているが。
■切糕事件2009年6月の広東省韶関市での工場労働者同士の衝突、7月のウルムチ騒乱をはじめ、いわゆる維漢衝突(ウイグル人と漢民族の衝突)が近年、繰り広げられている。
そうした中でひたひたと広がっているのが、「少数民族は優遇されている」「ウイグル人は守られている」「漢民族は割を食っている」という意識だ。この件について言いたいことは記事「
<ウルムチ騒乱>「卵」と「卵」のいがみ合い=民族差別に出口はあるのか?」にだいたい書いたのだが、本サイトでとりあげていなかった事件として2012年の切糕事件を紹介しておきたい。
2012年12月3日、湖南省岳陽市公安局は、同市の農村部でウイグル人と漢民族の衝突があったことを明らかにした。ウイグル人2人が負傷。ウイグル人は切糕と呼ばれるお菓子をリアカーに載せて売っていた行商人で、ケンカの中で切糕がひっくり返されてしまったということで、計16万元(約240万円)の賠償金を支払ったことが発表された。
これが中国のネットでビッグニュースとなった。正直、上の段落を読んでなにが問題になったのかわかる人は多くはないだろう。問題になったのは「賠償金が多すぎる」であった。中国版ウィキペディア・
百度百科によると、2260キロの切糕の損害が認められたとのことだが、あのリアカーに2トンも積めるのかよというツッコミが入った。
この切糕、中国のあちらこちらでウイグル族の行商人が売っているが、重さがらみのトラブルが多いという。というのも見た目以上にずっしりとしているため、量り売りで買うと予想以上の金額を請求されてしまう。事件後には「宇宙で最も密度が高い物質。ブラックホール、中性子星、そして切糕」などという書き込みあって思わず笑ってしまった。
高いと思っても、すでにカットしてしまった以上、元に戻せないので買ってもらうしかないというのが行商人の言い分。で、ケンカに……というパターンだ。岳陽市の衝突の原因は「言葉が通じなかったため誤解が生じた」というなんともあいまいな理由で説明されているが、値段絡みのトラブルだったのかもしれない。
■「俺たちは割を食っている」この切糕事件の何がショックだったかといって、中国のネットで「ウイグル人ばかり守りやがって」という政府叩きの声一色になったこと。負傷したのはウイグル人であり、村人に袋だたきにされたと思われるウイグル人に対する同情の声はほとんどなかった。
なるほど、確かに少数民族がらみのやっかいな事件にしたくないと思った現地当局が多めに金を与えて新疆に追い返したという構図はあったかもしれないが、それにしてもまずは袋だたきに遭った側をおもんばかってしかるべきではないか。
「俺たちは割を食っている」という意識は確実に広がっているように見える。2009年7月のウルムチ騒乱後、現地の漢民族の若い衆は武装して街を練り歩き、ウイグル人コミュニティと緊張状態が生じたという。緊張状態に置かれた現地の事情は別として、ネットでも支持する声が圧倒的だった。インディアンに包囲された開拓民を守れ、というノリというべきだろうか。
今回の事件は両会開催中ということもあって、きわめて情報がきわめて厳格に制限されている。だがそれゆえに正確な被害状況は報じられず、「首をかっきられた少女」の話が一人歩きする可能性は高い。「あー、また俺たちは割を食ったのだ。」そう思う漢民族は少なくないだろう。
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それも少数民族の中の大民族というか大きな面積の自治州を持っている民族に対して。
中国滞在中はイスラム食堂には随分助けられたし、個人的には応援したい気持ちなんですけどね。