村政府選挙を求めて政府と対立、「第二の烏坎村」と呼ばれる上浦村について中国当局が自爆している件について。
■メンツのために武装警官を突入させたら裏目ったでござる
記事「武装警官1000人超が村に侵攻、農民数千人と衝突=上浦村は第二の烏坎となるのか?」でお伝えしたが、広東省掲陽市掲西県の上浦村の農民と当局の対立が注目を集めている。
現状を簡単に説明すると、
1月、村政府の李宝玉主任が懇意のビジネスマンと村の土地500ムー(約33ヘクタール)を激安で貸し出す契約を交わす。お値段は1ムー辺り5000元(約7万5000円)程度で契約期間は50年。実際にはさらに多くの土地を貸しだしていたとの話も。キックバック間違いなし。あまりに条件が悪すぎると村民が反対運動。
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2月22日、李主任が打手(金で雇われて暴力を振るう人)を雇う。60人余りが車に乗り込み村に突撃をかけるも、村民3000人は一致団結して返り討ちに。打手が乗った車をひっくり返し、燃やす。
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事件後、県政府がやばいと気づき、契約を撤回させる。李主任を拘束。
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問題の契約は撤回されたが、それだけでは村民は満足せず、村民の選挙によって新たな村政府を作りたいと要求。またひっくり返した車もそのままに村の入り口にテント、バリケードを張り、立てこもり状態に。
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両会開催中にこんなことやらせているのは見栄えが悪すぎると思ったのか、3月10日未明に武装警官隊が村に突入。バリケードの排除をはかる。武装警官隊は照明弾、催涙弾、電磁警棒で攻撃。村民たちは棍棒、鍬、投石で抵抗する展開に。3時間にわたる戦いの末、武装警官隊は撤退したが、どっちが勝利したのかは不明。複数の村人が負傷したほか、数人が逮捕されたもよう。
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10日、当局は李主任を拘束したことを公表。「悪い勢力と手を結んで、土地使用権貸しだしに関する利益をむさぼろうとした」とその罪を認めたが、それだけに逆になぜ武装警官隊を突入させたのかは謎の状態に。
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武装警官VS農民の戦いキタコレ、と各国のメディアが上浦村の事件を報道。メンツのために武装警官隊を突入させたはずなのに完全に裏目に。
■「鎮圧なう」SNS書き込みの警官が炎上上浦村の情報などは中国のSNS・微博などでリアルタイムに発信され情報が拡散していったが、ちょっと想定外の書き込みが話題となった。
掲西県大暴乱の支援に行ってきます~
*勝利の帰還。いやー、まさにファッキン・エキサイティングですた。投石の中、閃光弾に暴徒鎮圧用ゴム弾、催涙弾を発射。エキサイティング。でも疲れたよ。損害なしに帰って来られたのはよかったね。
というわけで、警官の微博ユーザーが鎮圧について書き込みをしていたことが発覚。たちまちネットの話題になった。しかも以前の書き込みで「今日はギャンブルで7000元(約10万5000円)負けた」「カジノを開いたらテラ銭の3割は警察のもんやで」などなどステキな書き込みをしていたことも発覚。
ネット民は速攻で人肉捜索(ネット民の協力で個人情報を特定すること)を実施。この書き込み主が掲陽市仙橋派出所の警官ではないかと指摘している。書き込み主は微博のユーザー名を変更し、関連の書き込みを削除したが、すでに大量のスクリーンショットが保存されており、逃げ切るのは難しそうだ。
武装警官が村に進攻しただけで大ニュース。現地政府としては「そんな大騒ぎはなかったでござる」と言い張りたいところだが、参加した警官が無邪気に“エキサイティング”な状況を伝えてしまうという、大裏目事件となった。
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この上浦村の事件はすでに世界的な注目を集めているだけに、現地政府も力で押しつぶすというわけにはいかないだろう。きわめて厄介な一件になったと言えそうだ。あるいは烏坎村に続いて、要求を受け入れて村民の選挙を認めるという展開も十分に考えられる。
また「鎮圧なう」を無邪気にもやらかした、ギャンブル大好き警官の存在もまた、忘れられることはないだろう。
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