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2013年03月13日
iPhone camera / くーさん
■勇ましい人々に水をぶっかけた習近平の右腕
尖閣をめぐる日本と中国の対立。昨夏以来、すでに半年以上も続いているので、もはや慣れてしまった感はあるが、レーダー照射事件などなどときおり噴出する“火種”を含め、緊張が続いている。
フリージャーナリスト・福島香織さんの記事「全人代後が要注意?中国の尖閣上陸」(日経ビジネスオンライン)は習近平政権の海洋戦略をとりあげ、全人代後に中国が尖閣に上陸する可能性があるのではないか、と指摘している。同記事が取り上げているように国家海洋局の強化や国家測量局副局長による「今後適当な時期に釣魚島を測量する」など気になる発言が多い。
さらにいうなれば、羅援退役少将など「勇ましいことを言うのが仕事」の軍事コメンテーターは当然として、地位ある人は基本的に勇ましいことを言うばかり。「戦争怖い、戦争イヤだ」と言ってくれる人はなかなかいない。
と思ったら、習近平の右腕にして、劉少奇の息子、中国人民解放軍の“タカ派”と目されている劉源上将が2月から論考やインタビューで、勇ましい人々に水をぶっかける発言を続けている。思うに、「習近平の右腕」というポジションを持つ劉上将ぐらいのポジションがなければ、水かけ発言はできないのではないか。下手な発言は足をすくわれる弱点ともなりかねないからだ。
その劉上将にしても、「戦争は軍人の本分なんや」「命令されれば戦うし、むしろ戦いたいんや!」と言い訳モードを連ねた上で、「でもね、戦争は残酷やで~」と本題を切り出していることに注目したい。
下記は両会での中国網によるインタビュー。網易に転載され、多くのコメントがついているが、「戦わなければ生き残れない島は取り返せない」「軍人なんだから戦え、この税金ドロボー」などなど、見るのが辛くなるコメントが山盛りついている。
■劉上将インタビュー
中国人民解放軍総後勤部政治委員、劉源上将: 軍隊にとって、軍人ならば戦争のために生まれてきた。軍人に「私たちは戦争しません」と言わせるのはおかしいだろう。だから軍人にはジレンマがある。第一に「俺たちに行かせてくれ。命令さえ有れば必ず戦う。必ずや勝利する方法を見つける。戦いこそが軍隊、軍人の本分なのだ」と軍人は言わねばならない。しかし一方で軍人として私は各方面の人々、とりわけ一般市民にはっきりと言わねばならない。戦争とは何なのか、を。平和な時期が長すぎたため子どもたちは戦争とはなにかを知らない。それはとても残酷なもので、代価も大きい。別の方法で解決できるならば、極端な暴力的手段で解決する必要はない。
中国網:しかし私たちにも守るべき一線があります。
劉源:それはそうだ。どんな国にも守るべき一線がある。思うに、今は(戦争するのに)ふさわしい時期とはかぎらないのではないか。今は双方ともにかっかしていて、強硬さを競い合っている。その大半はメンツの問題だ。(解決は我々より賢明であろう後世の人間の知恵に任せようという)鄧小平同志の言葉に従えば、後世の人間である 私たちには智慧があるはずだ。何が大局なのか。何が中国と日本の一般市民にとって最大の利益なのか、はっきりさせなければならない。我々軍人の職責は国家の最大利益を守ることだ。一般市民の最大利益を守ることだ。人民を平和に過ごさせ、泰平の世を守る。それこそが戦争と軍人の存在する最大の意義だ。
中国網:現在、海洋警察を設立して日本の海上保安庁に対抗させれば、軍隊の緊張は低減するとお考えですか?
劉源:そうだ。
中国網:そうすることで、私たち中国の権利擁護にはどのような問題が生じるでしょう?偶発的な衝突の危険は減るのでしょうか?
劉源:当然、減る。実際、先日のレーダー照射事件はバカバカしい話だ。海上でレーダーを使い、こちらが向こうに照射する、あちらがこちらに照射する、これは当たり前の話だ。これは偶発的衝突とはほど遠い。一部の人間がこの話題を誇張して、緊張を高めているのだ。
先ほども言ったとおり、私は軍人であり、戦争は私の本分だ。しかし私には政府や海外、そして人民に戦争の本質とは何かをはっきりと伝える責任がある。民間や国家の課題、問題を戦争という方法で解決するのはできるだけ避けるべきだと伝えるべきだ。必要ならばもちろん軍人として戦うし、戦いたい。命令を受ければ必ずや勝つ。
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あと元記事でコメント欄が辛辣なのは、基本的に解放軍に対する人民の信用度合いが低い(ろくに訓練しないで遊んでいるか既得権を使って金儲けしているかみたいな)ということもあるかと思います。