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「天地明察」「マルドゥック・スクランブル」の冲方丁に関する中国人オタクの反応(百元)

2013年03月18日

■中国オタク「冲方丁ってどんな作家なの?」■


ありがたいことに「中国オタク的に冲方丁の評価はどんな感じなのでしょうか?」と言う質問をいただいておりますので、今回はそれについてを。

【BD】Mardock Scarmble (マルドゥック・スクランブル 圧縮 北米版) PS3再生、日本語音声OK

ここしばらくの間では「マルドゥック・スクランブル」の劇場版アニメ化などもあり、中国オタクの間でも徐々に冲方丁に関する知識は蓄積されてはいるようです。しかし、まだまだ中国オタクの間でよく知られているといったレベルにはなっていないようですし、「天地明察」についても中国本土の方ではあまり注目されていない模様です。

そんな訳で、今回は中国のネットでかき集めたその辺に関するやり取りを、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


■中国人オタクの雑談

冲方丁ってどんな作家なの?今度の攻殻機動隊の新作の脚本だし、若手作家としても日本では評価がかなり上昇しているらしいんだが、こっちではあんまり話題にならないんで皆の印象とかを聞いてみたいんだが

虚淵玄とかと比べると驚くほど話題になってないのは少々不思議。「蒼穹のファフナー」の終盤ではかなりの大虐殺とかやっているんだが。


ウチの国のオタクの間では「マニアがいそうでいない」作家。

ああ、その言い方よく分かる。直木賞にノミネートされた時とかもっと話題になると思ったのに、俺の周囲もネットでもほとんど話題にならなくって拍子抜けした覚えがある。

日本の小説、ライトノベル関係の話題とかでもなかなか出ないよね。「天地明察」とか普通に面白いのに。

評価以前に知名度が低いんだよなぁ。関係した当たりアニメが無い、ラノベ人気作品の主流とは違う、原著の方も読んだり翻訳したりが難しいって所がマイナスになっているんじゃないかな。

新作の「天地明察」は原著もそこまで難しくないと思うぞ。ただ内容的にラノベで好まれる方向性とは違うからやはり話題にはなり難いよね……映画もあるけど、そっちだとオタク関係とは外れてくるし。

ファフナー関係では大虐殺がよく話題になるし、冲方丁の作品は残酷な描写も多いしキャラもかなり死ぬけど、実際に見た印象では理不尽でもないし、なんていうか爽やか?な感じなんだよね。私がファフナーとシュピーゲルシリーズ読んでの印象はこんな所。「天地明察」の方は私は読んでないので他の人に任せる。

「天地明察」はもう完全にラノベ扱いではないよ。日本の書店では文芸の所に置かれているし、ここしばらくの間冲方丁はラノベ作品を書いていない。だから余計にこっちでは情報が出回らないんじゃないかな。

「天地明察」は歴史小説読者の間では非常に評価が低いらしいぞ。数学や囲碁関係、歴史考証において明らかな間違いが存在する上に、文章の書き方もラノベっぽくて単純な人間にしか受けていないという話だ。

そういった批判は細かい所をつついた時の話であって、普通の読者が読んで気になるような明らかな間違いでもなければ問題にはならないんじゃないかね。メディア展開や書評を見ても評価は高いし、売り上げも高いわけだから、日本では評価が高いと見るべきだろう。そもそも考察だなんだと言い出したら歴史関係の創作というジャンルそのものが怪しくなるぜ。

私の知っているのは「蒼穹のファフナー」、「シュヴァリエ」、「マルドゥック・スクランブル」だけど、この中で他人に自信を持って薦められるのは「マルドゥック・スクランブル」だけで他はちょっと微妙かな。「マルドゥック・スクランブル」はキャラもアクションも、寓話的な意味を含んだストーリーも面白いよ。

冲方丁の作品って読んでいて疲れるんだよね。いや、面白いんだけど!

冲方丁と虚淵玄の違いで思いついたのは、メディアの露出とかの差かな。インタビューとか作品への反応とか。何て言うか、彼がどんな態度で創作したり、作品に向き合っているのかとか、キャラがハッキリしない。それに引き替え虚淵玄は「愛の戦士」とか「Urobutchered」なんて言葉があるわけで。
いや、冲方丁はブログとかで結構色んな発言しているよ。特に大地震以降は積極的に発言している。恐らくウチの国のオタクのアンテナには引っかかっていないだけじゃないかと

「カオスレギオン」のノベライズとか、知ってるヤツいない?あれも冲方丁だぜ。

あのゲームのノベライズとかあったの?しかもそれ冲方丁が書いていたのか……

冲方丁と虚淵玄はキャラを殺しまくることが共通っぽいように言われるが、両者には本質的な違いがあると思う。あくまで私個人の見方だが、冲方丁の方は基本的に熱血的で爽やかなのでネタとしていじり難いんだよね。逆に虚淵は悪意があってネタにし易いと思う。しかしキャラ設定だけ見てみると、冲方丁の方が突き抜けているように思えるのは不思議。

ヘンな言い方だけど、キャラの殺し方は冲方丁の方が自然でストーリー展開上で納得できるものになっていると思う。ただ、死に方を「心に刻む」という点では虚淵玄の歪みを感じさせるスタイルは強烈なものがあるし、視聴者の印象も強くなるのだろうとも思う。

その辺に関しては「Fate/Zero」と「マルドゥック・ヴェロシティ」を比較してみると分かり易いんだが、「マルドゥック・ヴェロシティ」はこっちだとほとんど知られていないんだよな……どっちも言ってしまえば超人達の殺し合いの話なんだが、読んでみると印象はかなり異なる。あとキャラの設定、残虐な描写と展開について実は「マルドゥック・ヴェロシティ」の方がヤバイ。

以前「マルドゥック・スクランブル」は読んだけど中二病過ぎて挫折した。最近の作品、「天地明察」なんかはその頃とは違うものになっているのかな?

「マルドゥックシリーズ」は日本語とカタカナ表記の英語の言葉遊び、独特な文体もあって混乱するよね。カジノのシーンの評価が極めて高いらしいが、そこにたどり着くまでが厳しい。

私は劇場版アニメの方で見ただけなのだけど、確かにカジノのシーンは良かったね。テーブル上のギャンブルというだけなのに、真剣な決闘が表現されていたのには驚いた。

冲方丁は日本で評価の高い作品がこっちのラノベ読者層の好みからは外れるし、日本の小説に手を出しまくるミステリ読みや、村上春樹とかを評価する日本文学好きな文学青年層の評価対象からも外れる。かと言ってSF読みはもっと少ないから、注目を集めにくいんじゃないかな……

とまぁ、こんな感じで。中国オタク層の間で話題になり易い作品のジャンルやメディアの傾向なんかも見えてきて興味深いですね。

蒼穹のファフナー (電撃文庫)

とりあえず、現在の中国オタク的には「蒼穹のファフナー」等のイメージが強いようですが、こちらは最終回の展開のネタ混じりというのも多く、冲方丁という作家が意識されることはあまり無いようです。

また、日本語の原著を読むような層からの反応もイマイチですね。この辺に関しては、守備範囲的にいける(と思われた)私の知り合いの中国オタクの面々からの反応も芳しくないので、無いようなのか文体なのかは分かりませんが、中国オタク的にはあまり読み易いものではなかったりするんでしょうかね。

ちなみに、台湾の方では中国語版の「マルドゥック・スクランブル」の小説が2006年に、その後更にコミックも出版されているようです。そして「シュピーゲルシリーズ」はオイレン、スプライト共に出版されているようです。また「天地明察」も今年の初めに小説の中国語版が出ているようですし、コミックの方は昨年から出ている模様です。
ただ、「ヴェロシティ」の方は中国語版はまだ出ていないようです。やはりカトル・カールなんかが難しいんでしょうかね。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年3月5日付記事を、許可を得て転載したものです。

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