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中国に外交政策はあるのか?中国をとかく強大に描くチャイナウォッチャーともう一つの視点

2013年03月21日

中国に外交政策はあるのか?
 

China, flag.
China, flag. / Renato Ganoza


■外交イメージ版「隣の芝生は青い」


中国はどのような外交政策を持っているのか?

巨大なテクノクラート機構を擁する中国は、一貫して邪悪な陰謀をめぐらし、中華帝国の再興に向けて、着々と手を打ち続けている……。

とここまで極端ではないにせよ、「中国の方針は一貫しているし、うまいことやっている。それに引き替え我が国は……」というイメージを持っている人は多いのではないだろうか。ちょっと面白いのは中国のメディアを眺めると、「日本は中国包囲網の外交工作を一貫して続けている。それに引き替え我が国は……」的な話が散見されること。隣の芝生は青いというか、敵は大きく見えるというか、よく似た構造が存在しているようだ。

閑話休題。そうした中国外交イメージに異を唱えるコラムがニューヨークタイムズに掲載された。米シートン・ホール大学の汪錚助教授のコラム「中国に外交政策はあるのか?」がそれだ。


■中国に外交政策はあるのか?

チャイナウォッチャーは中国外交政策と野心の洗練を過大に評価する傾向がある。しかし事実に基づいてみれば、中国の外交政策には大きな欠陥がある。中国は現在台頭を続ける大国であり脅威とみられることも多いが、中国の指導者は緊張と不安を感じているのだ。世界の舞台における中国の地位は急速に向上しており、緊張局面の造成は不可避だ。しかしそれにどう対応するか、中国の指導者は確定的な原則を持っていない。新たに“当選”した指導者にとって、まず直面するチャレンジとはどのように外交政策の空白を埋めるか、中国はナショナリズムとグローバリゼーションとをどのように選択するかである。

「居丈高、強硬、傲慢」といった言葉で語られることが多い中国の外交政策。とりわけ中国と日本、東シナ海の島嶼をめぐって長きにわたる舌戦が繰り広げられている中でこう形容されている。

しかし一国の外交政策を判断するには言葉だけではなく、行動もみる必要がある。中国の政策と行動を子細に研究したならば、中国の外交政策は矛盾に満ちたものであり、さらにはきわめて薄弱であることが理解できる。島嶼領有権争いから北朝鮮問題、さらには気候変化まで、中国は多くの問題において明確で成熟した政策を持っていない。強硬な発言は薄弱な政策、あるいは矛盾した政策を隠すためのことが多い。

(…)こうした外交政策の空白の背後には中国が直面している二つのアイデンティティ・クライシスが存在する。第一に中国政府は他国から期待されているように、国際政治において重大な役割を演じる準備ができていない。胡錦濤は中国が本当の意味で国際体制の一員になった後で生まれた初の国家主席だった。世界的な大国という新たな地位になれるため、ここ数十年で経験した経済、社会、文化の巨大な変化になれるため、中国はまだ時間を必要としている。

第二に中国の政治エリートは国内政治と外交政策の間の重大な衝突に直面している。指導者たちは戦略的な視点から思考することもあれば、ナショナリズムの爆発を許すことで政権の正当性を高め内部の団結を高める国内需要に従うこともある。また無鉄砲で好戦的な愛国主義は、中国の外交政策がプロフェッショナルとして振る舞い、協力の精神を示すことをますます困難にしている。


■味噌を付けた中国外交

もうちょっと具体例をあげてくれよとも思わないではないが、よくわかる問題的提起ではある。

もちろん反対する意見も少なくないだろう。将来的な資源不足を見越してのアフリカ投資やロシアとの長期エネルギー資源契約、シーレーン確保に向けた軍事力の強化などなど一貫した政策を持っているではないか、と。

だがその一方で尖閣、南シナ海、あるいは北朝鮮といった対応で、味噌を付けていることも事実。自らのメンツを守るためのその場限りの対応は、中国の国益を損なっている部分は大きい。先日、スウェーデンとのストックホルム国際平和研究所が発表した2008年から2012年の通常兵器取引に関する報告書によると、東南アジアの輸入量はそれまでの5年と比べ169%と大きく伸びている(毎日JP)。中国が繰り返し宣伝してきた「平和的台頭」の文言は空虚なものとなってしまった。


■官僚主義は辛いよ

上記コラムは「さっさと大国のポジションになれて、ナショナリズムにひきられずに、中国の国益にもかなうグローバリゼーションの道を歩め」という結論。最近は環球時報でも「世論にひきずられるな」「ポピュリズムに迎合するな」が頻出用語でもあり、時宜にあった論でもある。自分自身も中国政府の民草への配慮について何度も書いてきているだけによく分かる話ではあるのだが、ただそれだけなのか、は疑問ではある。

もう一つ重要な要因として、巨大な官僚機構と化した中国共産党政権はなかなか方針を変えられないということは抑えておくべきだろう。国内的に見れば、その好例はいわゆる一人っ子政策だろう。「もう不必要だし、撤廃しても弊害はない」という大合唱が起こっているなかでも、巨大な利権機構と化した部門を廃止できないというジレンマに悩まされている。

外交的にも「この“中国のメンツを潰すボタン”を押されたら暴発しなければならぬ」「しなければ弱腰ダメ野郎として自分のミスになってしまう」的な不文律が多すぎるという、慣性と惰性で動いている点は見過ごせない。

そう考えると、同じ官僚国家同士、日本と中国は似たもの同士の部分も大きそうだ。というわけで、安倍晋三首相と習近平主席はぜひ飲み会でも開いて、「官僚主義は辛いよ」と愚痴を言い合っていただきたい。

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 コメント一覧 (4)

    • 1. 茄子炒飯
    • 2013年03月21日 23:56
    • 私も同じような見解ですね。

      サラリーマン時代に中国人と机を並べて仕事をし、中国留学時代に現地の大学教員や学生と接するなどしてナマ中国人の単純で粗雑な思考や中国の脆弱な知識インフラを目にしてきた者としては、日本のマスコミが煽る表層的な中国脅威論には首をかしげるしかありません。

      中国は日本よりも遥かに混沌とした社会であり、国家運営に伴う政治的コストは日本よりもずっと高くつく社会であることを念頭に置かないと中国指導部の思考や意思決定は理解できないと思います、というか日本のマスコミ側は理解するつもりなどなく煽り記事を書いて売れればいいんでしょうけども。
    • 2. Chinanews
    • 2013年03月22日 01:19
    • >茄子炒飯さん
      コメントありがとうございます。

      「急速な台頭に中国自身が対応できていない」という話もありますが、日本メディアもやはり対応できていないなぁと感じます。つまり中国記事のニーズは爆発的に高まっているのに、中国のことをよく知っている人がメディアには不足しているのではないか、と。まあ読者・視聴者の側も中国リテラシーがそんなに高まっているわけではないので、深い記事が求められていないのかもしれませんが、これだけ中国情報が氾濫しているのだから、もう少しどうにか、などと思う次第です。
    • 3. 2323
    • 2013年03月22日 07:48
    • 無知と故意で煽り捲るのは有りだと思う。
      それに政治家が釣られなければですが。
      ただ煽りLvは中国と比べるとへったくそなのが玉に傷。
    • 4. Chinanews
    • 2013年03月26日 16:32
    • >2823さん
      中国は釣り針大きいネタがんがん出してきますからね……

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