アダルトビデオに著作権はない=台湾の不思議な司法と日本メーカーの戦い
Guanghua Market / Teosaurio
■台湾司法 VS 日本AVメーカー
ここ数年、台湾VS日本AVメーカーのバトルが続いている。
台湾といえば、日本アダルト・ビデオの一大消費地。しかも台湾を経由して、中国本土や東南アジアに流通しているという。ケーブルテレビのアダルトチャンネルで放映されたり有料視聴サイトもあるなど、たんなる海賊版消費だけではなく、それなりに産業として成り立っているようだが、問題は日本のメーカーにお金が落ちていないこと。
というのも台湾ではアダルト・ビデオは著作物ではない。
21日、日本メーカーが敗訴した裁判があったので、「台湾のAVと著作権問題」について簡単にまとめてみたい。
■日本企業の敗訴
アダルトビデオは著作権の保護を受けず=日本AVメーカーが愛爾達科技など台湾企業を訴えるも不起訴に
ETtoday、2013年3月21日
日本のAVの有料ダウンロードサービスを提供していたとして、愛爾達科技など11社は日本メーカーに著作権違反で訴えられた。出演者や裏方などのスタッフが力を合わせて創作し、監督の意図と出演者のオリジナリティが反映されたAVには著作権があると日本AVメーカーは考えている。しかし21日、台北地方検察署は不起訴処分を決めた。
その日本メーカーの作品には男女が様々な体位で性交、口交し、さらに一部部位のみを拡大し撮影したカットもある。検察はこの種の観客に性欲を引き起こすことを追求した作品はポルノであり、著作権法及び最高法院の判例が定義するところの著作、すなわち「文学、芸術、科学などの創作」には該当しないと判断した。
検察の主張は以下のとおり。著作権法は個人や法人の智慧や著作を保障するだけではなく、公序良俗の制限を受けなければならない。AVは著作権法が定義するところの著作ではなく、また著作権法の保護するものではない。これにより愛爾達科技など11社の罪状は成り立たないと認定する。
また愛爾達科技などのサイトには未成年の閲覧を警告、禁止するメッセージがあることが捜査によって明らかになった。ゆえにわいせつ映像散布罪にもあたらない。また日本メーカーは告訴後に被告(11社)のうち2社への訴えを取り下げている。これを受け、全体の不起訴が決まった。
■台湾著作権法と最高裁判例さて上記記事にあるとおり、最大のポイントは台湾の著作権法だ。
台湾著作権法第3条
本法律で用いる用語は以下のとおり定義する。
1:著作:文学、科学、芸術、あるいはその他学術範囲の創作に属するものを指す
これだけだったら「すべては芸術やで~」と言い張ることも出来そうだが、1999年に「著作権法第3条第1項目の指す著作とは、文学、科学、芸術、あるいはその他学術範囲の創作に属するものを言い、AVはこれに属さない」という最高裁判例が出ているのが大きい。
ちなみに台湾の著作権法はもともと「文字の著作、美術の制作、楽譜台本、録音テープ・写真・映画」とかなり具体的な規定だったが(
著作権法1964年改訂版)、1985年の改訂で上述の文言に改正。より抽象的な表現となって範囲が拡大されたように思えるが、エロには著作権は及ばないという謎の状況になってしまった。
■AVに著作権はないが、AVを売って金を儲けるのはOK民草の生活と道徳にまでかっちり口を出すという点では、現在の中国本土も一緒。ただ建前上はエロ禁止の本土と違い、台湾では有料ダウンロードやアダルトチャンネルなどのエロの産業化が次第に認められつつある。そのため「AVには著作権はないが、AVを売って金を儲けるのはOK」という不思議な状態が生まれてしまった。日本のAVを違法コピーして堂々とビジネスできるというわけだ。
日本メーカーも著作権法と最高裁判例に直接ケンカを売ってもなかなか勝てないと理解して、「わいせつ物頒布」の線でも勝負していたが、「未成年の閲覧を禁止しているからええやんけ」と一蹴されてしまった。しかも公序良俗に反するものには著作権がないんじゃ、という検察の主張をみると、エロ絡みだといくらでも著作権をすりぬけられるのでは、と不安になってしまう。
実は台湾司法 VS 日本AVメーカーのバトルは2010年頃には報道がある。
NNA.ASIAによると台湾・経済部智慧財産局はAVコンテンツにも著作権はあるとの見解を示しているが、「判断するのは司法」とさじを投げているという。
こうなると著作権法を改訂してもらうぐらいしか解決法がないのだろうか。もうこうなったら尖閣をめぐる日台漁業交渉のバーターで、「著作とは文学、科学、芸術、あるいはその他学術範囲の創作、ついでにエロに属するものを指す」と改訂してもらってはどうだろう。
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