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超能力、霊力、転生、仙人は禁止?!ネット小説出版制限令と「政策の空気」を読む出版社―中国(百元)

2013年03月28日

■中国のラノベ禁止令というのは実質的にネット小説出版制限令のようです■

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Mobile / sk8geek


■ラノベ禁止令?!日本のラノベは直接のターゲットではない


KINBRICKS NOWさんの記事「超能力、霊力、転生、仙人は禁止?!中国政府がラノベ、ファンタジー小説禁止令を発令か」に関して、「ラノベ禁止令って中国オタク的には大丈夫なのか?」という質問を複数いただいておりますので、今回はそれについて大雑把に書いてみようかと思います。

まず、この通知(?)に関してですが、詳しい日本語訳はKINBRICKS NOWさんの記事を参照していただくとして、対象としているのが「青春文学、とりわけ校園文学」とありますから、実質的なターゲットは「中国のネット小説やネット小説系の作品の出版」であり、日本系のラノベ、いわゆる「軽小説」に関しては直接のターゲットではないですね。

日本のラノベに関しては、ハッキリ言ってしまえば中国市場における存在感はまだ非常に小さいですし、今回の件は日本関係の話ではありませんから、少々の影響は出るかもしれませんが、そこまで心配することは無いかと思われます。それと、アニメや漫画はこれとは完全に別系統なので問題になることはないかと。

危険度で考えれば、昨年のこの時、「中国オタク「ウチの国では日本関係の書籍禁止、日本では中国分析の本の出版や売り上げが増加中……これが差というヤツか」」の方がよほど危険かと思われます(当時は現地のラノベ出版へのダメージも実際に出ていたそうです)。

また、これに関しては私の知り合いの中国オタクの面々とも話しましたが、それによればこの話はとりあえず正式な条例ではないようなので、現在の中国のドラマの「怖いし許可出るか分かんないから日中戦争モノしか作れねぇよ!」といったような状況になることは無いだろうという話でした。


■ネット小説規制の流れか

この文書だか通知はどういったルートのものかはハッキリしない所もあるので断定はできないのですが、とりあえず中国のネット小説の出版や、ネット小説系の流れにある作品が拡大しすぎるのに歯止めをかけたいのだろうというのは感じられますね。

内容自体は、これまでに別のメディアやジャンルに出されてきた方針からそこまで大きく変わるわけではないとも感じられますし、結局の所、中国のネット小説系の市場や、ネット小説の存在感が大きくなり、それだけ目をつけられやすくなってきている所があるのかもしれませんね。

日本の感覚で「ネット小説」というとピンと来ない所があるかもしれませんが、中国のネット小説は、海賊版やコピーがあふれる中国の環境に置いて発展、成功した数少ない「中国独自の、中国人向けのコンテンツ」でして、現在の中国のネット関係のコンテンツの中でも非常に人気があり、出版だけでなく映画やドラマ、ゲームの原作としても重宝されています。

現在の中国において若者向けの娯楽読み物においてはネット小説の占める割合は極めて大きなものになっています。「中国の膨大なネットユーザーの暇つぶしとして重要なもの」というだけでも、どれだけ大きなものかは想像できるのではないでしょうか。


■中国独自ジャンル「玄幻」の範囲が広すぎて規制されると大変

そして規制の内容に関してですが、実はこちらは恐らくKINBRICKS NOWさんの予測よりもヤバイものかと思われます。もちろん厳格に適用した場合の話ではありますが……。

この文章においてKINBRICKS NOWさんの訳文で「ファンタジー」とされている部分、原文では「魔幻」や「玄幻」とされているのですが、「玄幻」というのが特に厄介ですね。

中国のネットにおける「玄幻」はかなり大雑把なジャンルでして、現在の中国で広まっているネット小説系ファンタジーのジャンル全体を指すときもあり、その中身には中華系のファンタジーだけでなく、欧米系ファンタジー、SF、武侠、アニメやドラマの二次創作的ファンタジーまで入ってしまうときもあります。

ですから今回指定されている内容に関して厳密に考えていった場合、中国のネット小説の人気ジャンルのほとんどが範囲になってしまいます。武侠系の作品なども現在のネット小説の影響や内容次第ではアウトになりかねません。


■政策の空気を読まないといけない出版社

しかもこの文書は「やり過ぎ防止」「調子に乗るな」 といったいつもの規制のノリというか内容からは大きく変わりませんし、ブレーキの理由や方向性もそれほど目新しいものではありませんから、内容やジャンルうんぬんの話ではなく「……分かってるよな?」といった目をつけられてしまった的な所があるようにも感じられます。

ですから、安易に「内容を変えずにジャンルを変えて出す」というのも出版社にとってはリスクが大きく難しいのではないかと思われます。

中国はメディアに関してはガイドラインというものは存在せず、空気を読まなければいけないのが難しい所でして、日本のお色気アニメのように「じゃあパンツ描かなかったり湯気や光で隠せばガイドライン違反していないよな!」とやるのは無理です。仮にジャンルを変えてやるとしても、ある程度ほとぼりが冷めてからになるのではないでしょうか。


■規制のターゲットは「紙」、ネットはとりあえずセーフ

ただこういった形で悲観的に取れる部分もあったりしますが、ここで指定されているのはネット上のネット小説そのものではなく、ネット小説或いはネット小説の流れにある作品の「出版」の方なので、現在のネットユーザーがすぐに被害を受けるということにはならないかと思われます。もちろん大手出版社や青春文学の出版で活躍している所への影響は出るでしょうが……。

そんな訳で、とりあえず今後の見通し的には不明だったり不安だったりすることはありますが、「ただちに影響はない」的な話なのではないかと思われます。とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年3月15日付記事を、許可を得て転載したものです。

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