■習近平肝いりの「中国夢」を兪正声さんが完全スルー■
■ジョングゥオモン
先日閉幕した全国人代の閉幕式で、習近平が何度も言及したのが中国夢(Zhongguomeng、ジョングゥオモン)でした。
2012年11月15日の党大会直後に行われた、新しい常務委員7人のお披露目会で、「中華民族の復興」に言及していたのですが、それを中国夢という単語に昇華させたのが、11月29日に常務委員揃って参観した「復興の道」展覧会です。参観後の講話で、「党創設100周年までに中華民族の偉大な復興という夢を必ず実現する」としたのが、「中国夢」の始まりであります。
中国夢は、中華民族の偉大な復興の実現であり、中国の特色ある社会主義の道を歩み、愛国主義を核心とする民族精神を発揚させ、各民族が団結する必要があるようです(習近平「第12期全国人代第1回会議における講話」(新華社、2013/3/17))。
■劉雲山、張高麗、張徳江、王岐山は中国夢に言及
ちなみに中国夢の内容に目新しさはありません。いつものお話を習近平なりの言葉で表すと中国夢になるのでしょう。ですが、習近平以外の高官が中国夢について言及しているかどうかチェックすることは重要です。なぜならば中国夢について言及することは習近平に従うことを表明するのと同義だからです。薄熙来事件後、重慶市政府、各部局が胡錦濤の「科学的発展観」を絶賛しまくったことが思い出されます。
さて、両会開催中から鋭く反応していたのが、劉雲山、張高麗の2人で、3月30日現在までに複数回「中国夢」に言及。劉雲山は宣伝部門トップであり中央党校校長という立場ですから、習近平さんとかけ離れた発言などするはずもなく、中央党校や貴州省などあちこちで中国夢を持ち出しております。
17日に常務副総理に就任した張高麗も、24日の中国発展ハイレベルフォーラム開会式、25日の米国のコーエン元国防長官との会談で立て続けに中国夢に言及。全国人代委員長となった張徳江も、25日に「習近平主席が明確に打ち出した、中華民族の偉大な復興である中国夢の実現には、人民のたゆまぬ努力が必要であり」と発言。
両会で一番拍手に身が入っていなかった王岐山ですが、、26日に「必ず『中国夢』を実現する」と控えめながら言及。ただし、劉雲山や張高麗らが中国夢を出す時に使っていた、「習近平主席が提起した中華民族の偉大な復興」という過剰な枕詞はありません。
劉雲山「
『中国夢』実現のカギは党にある」(新華社 2013/3/10)
張高麗「
『中国夢』実現の根本的な動力は改革開放」(新華社 2013/3/10)
「
張徳江、アラブ首長国連邦国民議会議長と会見」(新華社 2013/3/25)
「
王岐山、ドイツ連邦議院連盟党主席と会見」(新華社 2013/3/26)
■李克強、兪正声は言及せずところで団派の李克強は総理就任後恒例となった記者会見から、現時点まで中国夢に言及しておりません。
そして兪正声さんも、です。政協主席となった兪正声さんが、両会後初の視察に訪れたのが貴州省(兪正声「
心と力をあわせて科学発展を推し進め、団結奮闘して後発の追いつき追い越しを速めよ」(新華社 2013/3/29))。
見出しそのままのとおり、胡錦濤の科学的発展について言及したものの、中国夢や習近平への言及はなし。李克強を除く常務委員や、趙楽際(中央組織部長)、秦宜智(中青団中央書記処第一書記)と常務委員以外でも中国夢への言及が続く中、兪正声の習近平と中国夢の完全スルーはかなり目立ちます。
李克強は当然として、兪正声も初手から中国夢を無視。西部に団結を求める党中央が団結していないという、恥ずかしい現状が浮き彫りになってしまいました。
■追記28日。上海外高橋保税区を視察に訪れ、「今年の第一四半期の貨物運搬量はどうか」と型通りの質問を保税区の董事長にした李克強。董事長が夢がどうとか言い出した辺りを訳出してみました。(
李克強、長江デルタを視察(新華社 2013/3/31))
陳戊源「総理、中国には中国の夢があります。我々の港にも港の夢があります」。これに李克強は「好、君の要求に応えねばなるまい」とスカした回答で返し、中国夢の話題はそのままどこへやら。わざとやってるんでしょうね。
これで3月末までの立ち位置が判明しました。
中国夢スルー派:李克強、兪正声
中国夢消極的推進派:王岐山
中国夢連呼派:張徳江、劉雲山、張高麗
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年3月31日付記事を許可を得て転載したものです。