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ロボが好きな日本人オタク、人間が好きな中国人オタク=中国でマクロスほどガンダムが流行らない理由(百元)

2013年04月03日

■中国でガンダムはなぜマクロスに勝てないのか オタ中国人の憂鬱アップデート■


■中国の人気は「マクロス>ガンダム」、その理由を考えてみる

オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力

2年ほど前にこのブログのまとめ本「オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力 オタ中国人の憂鬱」を出させていただきましたが、この2年で中国オタク事情も大きく変わり、書籍の内容も一昔前の話になってしまっています。

また、いつもの中国オタクの反応という形では紹介するのが難しい話というのもたまってきていますので、「オタ中国人の憂鬱」のアップデートになるような話を書いていこうかと思います。

さて、そんな訳で今回は「中国でガンダムはなぜマクロスに勝てないのか」「中国本土でガンダムが日本のような人気にならない理由」といったことについてを。

このブログでも何度か書きましたが、中国本土におけるロボットモノの作品の人気に関してはガンダムよりもマクロスの方が優勢です。 

中華圏でも、台湾や香港では日本と同じくガンダム優勢のようですが、こと中国本土に関してはガンダムはかなり苦戦しています。最近は中国本土でもガンプラの流通も増え、先日はガンダムAGEの公式配信なども行われましたし、中国オタク内でのガンダム人気もそれなりに盛り上がってはいるのですが、ライトな層まで含めて考えた場合、日本のような人気の出方にはなっていません。

Robotech: Prelude to The Shadow Chronicles

これに関しては、中国にはマクロスとサザンクロスとモスピーダを編集合体させちゃったアメリカアニメ「robotech」がテレビアニメで90年代に入っていたのに対し、中国本土でガンダムファンが増えるきっかけとなったのは「ガンダムSEED」の海賊版という、スタート地点の差というのも影響しているかと思われますが、それ以上に大きいのは「ロボットアニメに関する感性」の影響ではないかと思います。


■ロボが好きな日本人オタク、ロボに乗る人が好きな中国人オタク

中国で日本のアニメを見るような層がロボットモノの作品に求めるもの、日本のファンとの違いについては「カッコいいロボットが見たいのではなく、ロボットでカッコよく活躍するのが見たい」と言うこともできますね。

日本のアニメ視聴者のように、ロボットアニメにおいてロボットの部分に注目、或いはロボットの活躍を抽出して評価できる人はそれほど多くありません。この辺りに関してややこしいのは、中国オタクの間にも「カッコいいガンダム」というのはそれなりに伝わるし、キレイな画でバリバリ動く方が喜ばれるのも間違いないということです。

しかし、彼らの評価基準としては、「MSの活躍」、「ストーリー」、「深い内容」といったガンダムアニメの面白いとされる要素において、「MSの活躍」の順番はかなり後ろの方になります。ライトな層ではこの傾向がさらに顕著になりますね。

もちろん中国で日本のアニメを見ている人達は、ロボット系の作品というカテゴリは知識として理解していますし、面白い作品ならば楽しむことができますが、「楽しめる要素」「評価の基準」という点に関しては、日本のアニメファンとは微妙に異なります。

正直な所、この多くのファンが自然と「ガンダムをMS中心に楽しむことができる」「ロボットアニメをロボの活躍に注目して楽しむことができる」というのは、日本独自のものなのではないかとも思えいます。

日本では子供の頃からロボット関係の番組や玩具に触れながら育ちますし、現在ではガンダムにハマった世代が大人になってきたことから、社会にガンダムをはじめとするロボが溢れていますから、「ロボットのカッコよさを理解する感覚」は自然と(?)養われていきます。

しかし、中国本土にはそういった環境がありませんから、ガンダムのカッコよさを理解するための「訓練」「学習」といったものが必要になります。(ちなみに、ガンダム環境に関して台湾や香港は日本にかなり近い所があります)

中国オタクの中にも日本のガンダムファンと近い感覚でガンダムや、ロボットアニメを楽しんでいる人はそれなりにいますが、彼らの多くはロボットアニメのファンとして自らを鍛えた、ガンダムを見るための目を養った存在で、大多数のライトな一般層とは違います。


■ロボット主役のガンダム、人間主役のマクロス

そして、ロボットアニメに関する嗜好の違いが存在することから、「ロボットが主役」なガンダムはマクロスに比べて中国でファンを獲得するのが難しくなっています。もちろんガンダムにもMSを操縦する主人公パイロットがいますが、やはり作品の主役に見えるのは「ガンダムというMS」ですし、活躍描写のメインとなるのもガンダム等のMSです。

それに対してマクロスの方は、バルキリー等のロボの活躍もありますが、どちらかと言えばそれに乗っている主人公パイロット達のストーリーの方がメインになっています。マクロスは「ロボット以外のストーリー要素が前に出てきている」「作中における歌の扱いや三角関係なラブストーリーなど、視聴者のとっかかりも多い」といったことにより、中国の視聴者からすると、MSが主役のガンダムよりも非常に入り込み易い作品となっているのですね。

そして、こういったロボットモノに関する感性の微妙な違いもあってか、中国オタク内では日本のアニメのロボット系の作品の人気はなかなか高くなりません。また時折人気になる作品に関しても、ロボットの部分以外、主にストーリー面が評価されて人気になる傾向があります。

例えば、「グレンラガン」は熱血系王道作品として評価されていますし、「フルメタル・パニック」は実は軍人である主人公が日常の学園生活では軍事ネタなボケを繰り返し、しかし戦いではプロの兵士として一騎当千の活躍をするといった要素が中国オタクの妄想ポイントを効果的に刺激しています。また「コードギアス」は主人公ルルーシュのピカレスクロマンというかビックリドッキリストーリーな所が中国オタクを引き付ける理由になっています。

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もちろん中国オタクの面々もファンになったからにはロボット描写にも燃えたりしますし、ロボットがカッコヨク活躍するに越したことはないのですが、多くの人にとってそれは評価基準的には後ろの方になってしまう模様です。


■事例紹介:ガンダムUC episode4

こういった感覚の違いについて、個人的に印象深かったのは「ガンダムUC」のepisode 4への反応ですね。

MG 1/100 RGM-96X ジェスタ (機動戦士ガンダムUC)

ガンダムUCのepisode 4は、トリントン基地に攻め入り暴れまわるジオン残党による大量の昔のMS、連邦側がボコボコにされる中で奮戦するバイアラン・カスタム、MAシャンブロに乗るNTの少女ロニとバナージの交流などの見せ場があるかと思いますが、中国オタクの反応を見てみると、日本とは違う傾向が見て取れました。

日本のファンの間では、ストーリー展開はさておき、古今東西のMSが現在の画のレベルでたくさん出てきて戦闘を繰り広げたということで、とりあえず「なんか良いモノ見た」的な所があったのではないかと思いますが、中国オタクの反応を見ていくと、そういったMS描写に関してよりも、ストーリー展開、特にバナージが迷ってうだうだする展開への不満が多く見て取れました。

確かにepisode 4はバナージとユニコーンガンダムの活躍という面から見ると、NT能力のせめぎ合いくらいで、あまり派手な活躍はありませんし、バナージ自身もイロイロと迷ったり、シャンブロを「撃てません」とかやったりしています。そういった展開が中国オタクのファンからすると、見たかったものとは少々異なる、ストレスのたまる話に思えたりしたようです。


■ロボはわからなくても戦車はわかる

それと、ガンダムと直接の関係は無いのですが、最近中国オタク内でも大人気となっている「ガールズ&パンツァー」
に関しては、戦車の強弱関係なく、運用方法からやられ方まで楽しむなど、日本のガンダムファン、ロボットファンがロボット関係の描写を楽しむようなノリで作中の戦車の描写を楽しんでいるのも興味深いですね。

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中国では軍事関係の情報が溢れていますし、男の子はだいたい一度は戦車にハマると言われているくらいですから「戦車のカッコよさを理解する感覚」は十分に養われているかと思います。「ガールズ&パンツァー」に関しても、作中の戦車の部分だけを抽出してその描写を楽しむことができるのではないでしょうか。


■もったいなかったガンダムSEED

中国本土のファンに関しては、こういった日本のロボットアニメのファンの感覚とは微妙に異なる、「ロボの活躍」ではなく「ロボでの活躍」を強く求める所がありますから、ガンダムはロボの活躍がメイン過ぎてなかなか日本のようにはいかないようです。

実はこの辺りに関しては、「ガンダムSEED」が非常に良いバランスとなっていたようです。

機動戦士ガンダム SEED HDリマスター Blu-ray BOX [MOBILE SUIT GUNDAM SEED HD REMASTER BOX] 4 (初回限定版)(最終巻)

SEEDは「主人公キラ・ヤマトの成長と活躍」という視点から楽しめるので、中国オタク的にもかなり入り込み易かったのだとか。しかしSEEDは続編のDESTINYでずっこけてしまいその後の展開も残念なことに…….

現在の中国では、ガンダムファンのレベルも上がり中国語になったガンダムの情報、特に設定に関する情報がかなり蓄積されていますし、ガンプラの流通も増え、ファンの懐具合も向上するなど良いニュースは少なくありません。

しかし、同人イベントやアニソンイベントなどでもガンダム系は後退気味のようですし、作品の敷居の高さや今回書いたような好みの微妙な食い違いからファンの広がり、作品の評価的に厳しい部分も見えます。

これまで培ってきた「下地」が存在する日本と違って、中国本土では「ガンダムが主人公」である限り、大多数の視聴者にとっては理解するための「訓練」が必要となりますから、残念ながら単に日本で人気になっている作品を提供する、玩具やガンプラを流通させるだけで、ガンダムファンが日本のように増えることは無いと思われます。

こういった状況なので、中国のガンダム展開に関しては、「ガンダムSEED」の流れが途絶えてしまっているのは本当にもったいないと感じてしまいますね。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。ペースに関しては何とも言えませんが、今後もこういった形で現在の中国オタク事情に関してイイカゲンにまとめていこうかと考えております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年3月27日付記事を、許可を得て転載したものです。

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