中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
今回解放された右:僧ロプサン・ンゴドゥップ、左:僧スパ。
■2008年蜂起(チベット騒乱)
2008年3月10日、ラサ近郊にあるデブン僧院の僧侶数百人が中国政府のチベット圧政に抗議するため、ラサに向かい平和行進を始めたが、軍と警察にに阻止された。同日、ラサのツクラカン前では14人のセラ僧院僧侶がチベット国旗を掲げ、チベット独立を要求するデモを行った。全員が逮捕され、懲役2~10年の刑を受けた。
この二つのデモがきっかけとなり、ラサでは14日、市民数千人が参加する大規模な全面蜂起が起きた。当局は武力鎮圧に乗りだし、数百人が死亡した。その後、チベット各地の民衆が呼応して立ち上がり、カム地方とアムド地方を中心に150カ所でデモが発生。多くのチベット人が殺され、数千人が逮捕された。これがいわゆる2008年蜂起である。
■解放された僧侶2人
6日付Tibet Timesによると、ツクラカン前のデモに参加し、5年の刑期を受け、ラサ・チュシュル刑務所に収監されていた僧侶2人が今年3月10日に解放されたという。
解放されたのはカム地方カンゼ州セルシュル県ウォンポ僧院僧侶にして、当時セラ僧院で学んでいた僧ロプサン・ンゴドゥップ。ミンゲ僧院僧侶でセラ僧院で学んでいた僧スパである。僧ロプサン・ンゴドゥップは解放され故郷に辿り着いたが、非常に衰弱していた。ただちに青海省西寧の病院に運ばれ、今も入院中だという。また、僧スパは精神に異常をきたしているという。拘束時や刑務所内での拷問の結果と思われる。
左の写真は3月10日に逮捕されたセラ僧院僧侶14人の顔写真である。この内僧ロトゥは10年の刑を受け同じくチュシュル刑務所に収監されていることは確認されているが、その他僧侶の刑期は2年から10年と言われているだけで個別には確認されていない。その他、同じチュシュル刑務所には3月蜂起の時逮捕され10年の刑を受けた僧ソナム・ダクパと俗人ダシャルがいるという。
■デモを目撃した少女の証言
この絵は2008年3月10日、ラサ・ツクラカンで、セラ僧侶たちのデモを目撃し、一緒にシュプレヒコールをあげたという当時16歳の少女ガワンが描いたものである。彼女はその後、すぐにインドに亡命した。私が彼女に会い、話を聴いたときに描いてもらった絵である。みんな笑顔なのが泣ける。
以下は彼女の話だ。
ガワンは故郷から三月初めに送りだされ、ラサのラモチェにいる伯父さんのところに身を寄せながら、インド行きを待っていた。3月10日、彼女は丁度その日、現像した写真を受け取るためにパルコルに行った。ガワンの話について詳しくは以下の記事「3/10のデモに参加し逃げ来った子供たち」「2008年3月10日、ラサでデモを先導したセラ僧院僧侶のその後」を参照のこと。
写真を受けとった後パルコルを廻っていたら、あたりの人々が騒ぎはじめた、「セラの僧侶二人が<チベット独立>を叫んで、捕まった!殺されるぞ!」と誰かが叫んでた。みんながその僧侶が連れて行かれたという派出所に向かった。みんなが<チベットに独立を!><ダライラマ法王に長寿を!>と叫び始めた。どんどんチベット人が集まってきた。ものすごい人がいて、みんなが<チベット独立!(プーランツェン)>と叫んでた。
しばらくすると、30~40台の軍隊のトラックがジョカンの前に現れて、大勢の軍隊がデモ隊に迫ってきた。小競り合いはあったが、蹴散らされ、徐々にチベット人は減り始めた。顔が血だらけになった女の人を見た。かなりの人たちが軍隊に殴られていた。
自分たちも2時ぐらいにはラモチェの家に帰った。でもその時にもまだ半分ぐらいのチベット人はそこで叫んでた。
その日も次の日も伯父さんから外に出ないようにと言われたので外のことは全く知らない。
12日の朝、国境行きのトラックに乗った。途中夜に山の中を何時間か歩かされた。検問を抜けるためだと言われた。14日、夜国境の手前で下ろされ、山を歩き、川にかけられたロープを伝ってネパール側に渡った。カトマンドゥの一時収容所に着いた時には安心し嬉しかった。