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2013年04月12日
フィナンシャルタイムズ中国語版は2013年4月3日、「体制内80後からの1通の手紙」という記事を掲載した。言ってしまえば30歳手前の疲れた地方官僚が「人が羨む“官”の身分を手に入れたが、楽しいこと何もない」という愚痴なのだが、じんわりと面白い。
■体制内80後からの1通の手紙
まもなく30歳を迎える私は田舎の省の、県庁所在地の普通の家庭で生まれた。浪人してまで北京大学を目指したが失敗。代わりに地元の省で一番いい大学に入った。 専門は器用貧乏の経済学だ。在学中にはそれなりに影響力のあるサークルを設立。またクラスの学生幹部となり、推薦で大学院生となった。また自分のウェブサイトを立ち上げ、だいたい年に10万元(約150万円)以上の収入を得ている。
卒業時はちょうど世界金融危機にだった。雇用機会が減ったため、P&G、ユニリーバ、KPMG、中国農業銀行本部などの企業の最終面接までは残ったものの、結局、理想の企業への就職はならなかった。最終的に深圳市の国有銀行に就職が決まった。
当時、公務員試験ブームが到来していて、同級生はみな試験を受けていたこともあって、私も冗談半分で受けてみた。受けたのは故郷の省で一番、“実権”がある部局だ。ところが思ってもみないことに同年の公務員試験面接で最高点を獲得。「国進民退」(国有企業の拡大と民間企業の衰退)という大背景もあり、また「その部局は一番いい省直轄部局だ」と進められたこともあり、故郷に残ることになった。
私は部局の一番中心で仕事をしているし、上からも下からもそれなりに認められている。北京のある大学の経済学専攻に合格した博士の女性という、周囲や親戚からうらやまれる彼女も見つけた。ただそれでも不幸だという感覚がいつもつきまとっていた。
経済的にいうと、私の月給は現地不動産価格の0.2平米相当。いわゆる(わいろなど)仕事外の収入 はゼロに等しい。福利厚生の住宅分配も私のところにまでは回ってこない。一方、仕事は毎日残業。すでに腰や頸椎を痛め、軽い脂肪肝になってしまった。自分の時間もないからサイトの運営、手入れも出来ず、こちらの収入も大きく減った。
そして立場について。突然、大家族の中で唯一の“官”になったものだから、各種の見たこともないような親戚が押し寄せてお願い事をしてくる。毎日忙しすぎて彼女との結婚もダメになった。仕事における立場と生活における立場とでなんだか引き裂かれたような感覚を感じていた。
もっと深刻だったのは内心の衝突だ。毎日残業するのだが、だいたい同じことの繰り返し。まったく楽しくない。将来の昇進を考えたとしてもそうだ。見るに上司の生活はとても大変で、家族と一緒の時間もない。収入も少ない。なのにリスクばっかりは大きい。心にもないことを口にしなければならないし、関係ないイベントにも出席しなければならない。仕事の成果は自分のがんばりでどうにか出来るものでもないし、定年すれば心理的な落差にがっくりくる。こうしたものはすべて私が望むものではない。
誰もが体制内に入りたいと望むこの時代、だが私はこの体制から逃れたいと思っている……。
■「あこがれの職業」の愚痴
省で最も実権のある部門でばりばり働いていて、先輩にも顔が利くならば、それなりにおいしい話があるはずなのだが、不器用なのか、それとも「こんなの稼いだうちに入らない」のか。サイトで10万元副収入があるとかさらりと言ってしまうぐらいだと後者かも知れない。
それはともかくとしても、毎日同じ仕事でつまらない、指導者になってもおべっか使ったりでつまらない云々はなんとなく納得してしまう話。わいろうけとりまくって、愛人でも作らないとやっていけない……ということかもしれない。
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あと,「際との運営」->「サイトの運営」ですね。