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【鳥インフル】ハトの葬式、パフォーマンスで風評被害と闘う=「隠れたウイルス」にどう対処するか―中国

2013年04月16日

■【鳥インフル】ハトの葬式、パフォーマンスで風評被害と闘う=「隠れたウイルス」にどう対処するか―中国■
 


■ハトの葬式

2013年4月14日、 広東省肇慶市で、広東省食肉ハト業界協会によるハトを弔う公祭が開催された。食用ハト12万羽、卵14万個が鳥インフルエンザを受けて“生き埋め”、つまり殺処分された。線香もたかれ、爆竹が打ち鳴らされるなど人間の葬儀の方式に乗っ取って公祭は進行された。15日、中国時報が伝えた。

なぜこのような大々的な葬儀を開催したのか。動物愛護の精神に目覚めたから……ではない。このようなパフォーマンスを展開したのは鳥インフルエンザによる風評被害と闘うためだ。現在、中国では鶏肉価格が暴落中。特に上海市ではハトとウズラからH7N9型鳥インフルエンザ・ウイルスが検出されたため、ハトを警戒する人が少なくないようだ。肇慶市のハト養殖基地は中国全土のハト出荷量の約半数を生産する一大生産拠点。日に65万羽を出荷していたが、広東省では鳥インフルエンザが確認されていないにもかかわらず、現在ではほとんど取引がない状態だという。

広東省食肉ハト業界協会は養殖場での鳥インフルエンザ感染が確認されていないにもかかわらず、被害を養殖業者になすりつけるような現状には不満だとコメントしている。「ハトの葬式」というなにやら珍妙なパフォーマンスは、風評被害の事実と養殖業者への不当な対応を満天下に知らしめるための“武器”と言えよう。


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*写真は14日、肇慶市。広東省食肉ハト業界協会職員による「ハトを食べる活動」。このかぶりつき方は菅直人元厚生相(当時)のカイワレどか食いを思い出させる。


■風評被害を止めよ

このパフォーマンスが功を奏したのか、15日付環球時報には鳥インフルエンザによる風評被害を防ぐべきとの主旨の社説を掲載した。

鳥インフルエンザ流行期間に、個人として鳥肉を食べない、あるいは食べる量を減らすのは正常な反応だ。だが多くの人々が同時にこのようにふるまえば、社会の正常な産業チェーンが破壊される。そうなれば農家や業者に対して不公平な結果をもたらすだろう。平時には生産量を維持するよう奨励されていたのに、鳥インフルエンザが来るや、鳥インフルエンザ予防の大号令の中でほとんど見捨てられてしまっている。

しごくごもっともな話だが、しかし肝心な問題に触れられていない。問題は「ウイルスが隠れている」ことにあるからだ。


■感染した鳥が見つからない

15日現在、人間では60人の感染例が見つかっているが、H7N9型鳥インフルエンザ・ウイルスを保有している鳥がさっぱり見つかっていないのだ。上海市の市場からわずかにハトとウズラが見つかっただけ。感染者の多くが市場関係者や養鶏業者、あるいは殺処分を補助した経験を持つことから、鳥から人間に感染した可能性は高いと思われるが、肝心のウイルスが見つかっていない。

現在、有力視されている説は今回のH7N9型鳥インフルエンザは鳥に対する殺傷力が低く発見が難しいというものだが、それにしてもここまでまったく見つからないというのは不思議。実際には見つかっているが産業への影響を恐れて隠蔽しているのではないかともささやかれているゆえんだ。もっとも個人的にはここまで大きな問題になった以上、隠蔽すればその地方官僚のクビが危ないので、隠蔽工作はないのではないかと予想しているが。


■風評被害対策には方針転換が必要ではないか

一番いいシナリオは養殖場での大量感染を突き止め、殺処分によってそれ以上の感染拡大を防止。安全宣言を出してみなで気持ち良くもりもり鳥肉を食べるということになるだろうが、感染した鳥が見つからない現状では困難だ。

このままでは気温が上がって流行がストップするであろう夏まで、あちらこちらで人間の感染が見つかり、鳥肉の消費が冷え込むという状況が続きそうだ。

20130415_写真_中国_鳥インフルエンザ_ハト_2

逆に広東省茂名市では鳥肉価格が暴落したことをこれ幸いと、一人で10羽20羽と買い込む市民で市場がごった返しているという(羊城晩報)。頼もしいような気もするが、どこにウイルスが潜んでいるかわからない現状で、一般市民が鳥をさばくのはちょっと危険な気もするのだが……。

感染源が見つからない現状で風評被害を止めろといっても限度があるだろう。火を通した鳥肉には危険性がないのだから、むしろ発想を変えてリスクの高い生きた鳥の販売を全中国的に禁止し、一方で「このように調理すれば安全だ」という指針を打ち出すこと、万が一鳥インフルエンザにかかっても無料で治療するといった政策を打ち出すほうがむしろ効果的ではないだろうか。

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