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チベットの隅々まで監視する駐村工作組=駐屯1年で家が買える……膨大な治安コスト(tonbani)

2013年04月17日

■ウーセル・ブログ:膨大で高コストの治安維持部隊■


チベットはアムド地方、カム地方、ウツァン地方の3つに別れる。「なぜ焼身抗議はアムドやカムばかりでチベット自治区(ウツァン)で少ないのか?」と質問されることが多い。一般的回答は「チベット自治区では当局による監視が非常に厳しいからだ」となろう。

チベット人作家ウーセルはブログで「駐村工作隊」について取り上げ、チベット自治区の小さな村落に至るまで、膨大な資金が注ぎ込まれた監視体制が構築されていることを解き明かしている。


■膨大で高コストの治安維持部隊
ブログ・看不見的西蔵、2013年4月6日
訳:雲南太郎
小見出し:Chinanews

20130417_写真_チベット_1
*多却村で活動するロカ地区商務局の駐村工作隊。

20130417_写真_チベット_2
*ニンティ地区の江色寺に駐在する人民警察。

20130417_写真_チベット_3
*民情檔案(民間状況公文書)。チベット自治区の駐村工作隊と駐寺工作組は世帯ごと、個々人、あるいは僧院ごとの「民情檔案」を作成して末端までの状況を把握。厳しい警戒網を張り巡らせている。


◆村々を巡視する駐村工作組

2012年3月に北京で開催された両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)で、南方週末はチベット自治区の人民代表大会常務委員会主任チャンパ・プンツォと主席ペマ・ティンレー(肩書きはともに当時)を取材した。

村レベルの工作組と治安維持の関係を問われた時、チャンパ・プンツォは「2012年に自治区全体の5000以上の行政村に駐村工作組を派遣した。(中略)駐村幹部は毎年交代し、3年以内に2万以上の幹部が村に駐在するようになる」と答えた。彼は「これは治安維持のためというわけではない。大事なのはやはり経済発展の手助けだ」と補足した。

「治安維持のためというわけではない」。この言葉はうそだ。昨年10月の最終報告書は「チベット自治区の各レベルの駐村工作隊は終始、駐村工作の重要な内容として、社会の安定を守る職務に力を入れていた」と書いている。そのために、「県、郷、村、組、戸の5段階の治安維持情報交換システムや安全防備システム、トラブル調停システム」を整え、「全ての村が砦になり、誰もが哨兵になるという郷村防犯システムを構築した」という。

具体的に言えば、チベット自治区は2011年10月以来、各機関や団体で人を集め、駐村工作隊5453班を組織し、自治区全体の全ての行政村をカバーした。同時に、1700以上の僧院(寺)にも駐寺工作組を派遣した。3万人に満たない牧畜エリアのナクチュ地区ニェンロン県だけでも、駐村工作隊86班と駐寺工作組6班、駐郷工作組10班が派遣された。昨年12月にはポタラ宮広場で、漢族とチベット人の共産官僚たちは、赤い旗を高く掲げ、太鼓を打ち鳴らす第2次駐村工作隊に向け、漢人とチベット人の党員たちが治安維持活動を続けるよう指示した。


◆ 末端にまで入り込む工作組

駐村工作隊のここ1年の治安維持状況がおおよそ理解できるので、当局の最終報告書を抜粋しよう。例えば、自治区ロカ地区に駐在する各級の駐村工作隊は、「ダライ集団の批判大会を3866回、重要人物(元受刑者またはお年寄りなど)の支援、更生保護活動を1856回、僧院に浸透して僧尼と本音で語り合う活動1886回、それぞれ展開した」。しかも、「1080班の『護村隊』を組織し、健全な治安維持対策を3346項目実施し、すき間のない治安維持防犯ネットワークを組織した」という。

また、例えばチャムド地区にいる各級の駐村工作隊は、「ダライ批判大会を7107回、(中略)重要人物の支援、更生保護活動を8369回実施し、宗教施設に3234回浸透し、僧尼と5608回話し合った。延べ1万971人分の重点分野、人員管理業務について、村の居民委員会を助け、群衆の陳情1279件と集団抗議事件1321件を適切に解決した」。これらの何千という数字には本当に驚かされる。

チベット自治区の各機関、団体が「6地区1市」(ロカ地区、シガツェ地区、ニンティ地区、チャムド地区、ナクチュ地区、ンガリ地区とラサ市)に駐村工作隊と駐寺工作隊を派遣するほか、公安部の公安辺防総隊と武装警察チベット総隊、チベット公安消防総隊などの軍警組織も駐村工作隊や駐寺工作組を派遣し、団結して治安を維持する。

批判大会開催や僧侶との対話のほか、実はより重要なのがいわゆる「民間事情檔案」を作成することだ。世帯ごとに一人ひとり、僧院ごとに一人ひとり、全ての者がファイルに記録される。確かに、当局の言う「三無」、つまり「盲点がなく、すき間がなく、手付かずの部分がない」という状態が実現する。つまり、完全に国家機関によって、チベット人を村ごとに、僧院ごとに監視するのだ。


◆膨大な治安維持コスト 

治安維持はこれほど浸透し、長く続いており、コストの高さは計り知れない。金銭面だけを見ても、駐村工作隊や駐寺工作組のメンバーは給料や福利、財政的な補助のほか、ボーナスや各機関からの補助も受け取る。彼らを辺鄙な片田舎にとどまらせるため、すさまじくカネを支給するだけでなく、将来の出世まで約束する。

そのため、「1年間の駐村で家か車を買える」「駐村には理由がある。治安維持はただのスローガンで、金を稼ぐことが目的だ」とチベット人にからかわれている。村に駐在するメンバーにすれば、「上に政策あれば下に対策あり」だ。「民間事情檔案」を作成してしまえば、後は新聞や書類を読むのが通常業務になる。残りの時間は退屈で、こまごましたニュースがあるだけだ。しかし、各地の村民や僧尼たちにすれば、彼らの存在こそが大きな暗い影になる。

チベット自治区でこの治安維持モデルをつくったのは、2011年に区党委書記に就任した前河北省省長の陳全国だ。彼は河北省で、1万5000人の「幹部下郷運動」を実施したことがある。同じように治安維持が主な目的だった。メディア人の北風は以前、ツイッターでこう論評した。「河北省が幹部を村に派遣して駐在させる。これは治安維持政治の顕在化だ。統治と社会変化が最終決戦の段階に入ったことを物語っている。治安維持政治がこれ以上極端な方向に向かったら、残るのは軍事管制への道だけだろう……」
2013年3月12日 (特約RFAチベット語)


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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2013年4月16日付記事を許可を得て転載したものです。

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