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2013年04月26日
■福建省、安徽省、浙江省、河北省……4省を股にかけた一大ニセ紙ナプキン製造チェーンを摘発
2013年4月23日、南方都市報はニセ紙ナプキン製造メーカーが摘発されたと報じた。
ニセモノ大国・中国だけに紙ナプキンのニセモノぐらい珍しくもないように思うかもしれないが、これがなかなかまれに見る大規模な事件だった。吸収体は福建省泉州市、紙ナプキンの本体は安徽省滁州市、包装は浙江省金華市で作られ、河北省保定市で最終的に製品を作っていたという。なんと4省をまたにかけての大規模なニセモノ製造チェーンだ。
製造されていたのはP&Gのウィスパー、ユニチャームのソフィなど人気の海外ブランドの製品ばかり。被害総額は1億5000万元(約24億円)に達するという。ニセモノ製品の存在が明らかになったP&Gは遺憾の意を表明。今後、自身のブランドを守るために力を入れるとコメントした。
また南方都市報の取材に応え、大手ネットショッピングモール・タオバオの直売店で買うのが安心とコメントしている。今回摘発されたニセ紙ナプキンは田舎の都市を中心に出荷されていたとのことだが、確実に安心を得るためには直営店以外にはないということだろうか。
■300億個の市場に1600億個の生産能力
南方都市報の記事はニセ紙ナプキンが出回る背景についても解説しているが、これがすこぶる面白い。
中国には2000社以上もの生理用品製造メーカーが存在しているが、トップ20ブランドの市場占有率は個数ベースで86%、金額ベースで90%に達している。つまり残る10%の市場をめぐってその他の2000社が争うという、生き馬の目をダース単位で引き抜きまくる、仁義なき戦いが展開されている。
さらに中国で生理用品を使う女性は約4億人。消費量は最大でも年300億個弱とみられているが、生産能力はなんと年1600億個に達しているという。大手メーカー以外の生産ラインはほとんど動いていない計算となる。ヒマすぎて、人気商品のニセモノでも作るしかないわ、という心境になるのも納得だ。
■生産能力過剰という中国の病
生産能力過剰といえば、中国のさまざまな産業分野に共通する病。鉄鋼、エアコン、洗濯機、テレビ、太陽電池……枚挙に暇がない。
で、この手の生産能力過剰はチキンレースが大好きな社長さんが「我が社が勝つので全力で設備拡張やで!」と判断ミスした結果ではない。産業が欲しい地方政府が主導して企業を誘致したり、あるいは設備拡張すれば補助金出すよと誘導してみたりと、政治がからんでの惨状である。
紙ナプキンにも同様の構造があったとは聞いたことがなかったのだが、中国人の消費力が向上するにつれ、間違いなく伸びる分野として、各地方で紙ナプキン生産能力大躍進運動が繰り広げられていたのかもしれない。
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