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宴会で何円分飲み食いしたらクビなのか?フグ宴会吊し上げ事件の余波―中国(水彩画)

2013年04月30日

■よくわからない習八項の基準■


江蘇省泰州市濱江工業園区管理委員会の張愛華主任が宴会していたところ市民に吊し上げられ罷免されたという話。これは記事「フグ宴会を開いていた中国官僚を市民1000人が文革風吊し上げ=習近平の反汚職政策(水彩画)」ですでに紹介しています。

20130422_写真_中国_

習近平が推進する節約励行、浪費反対の習八項を破ったと見せしめにされたわけですが、問題はいくら飲み食いしたら浪費なのかという点にあります。この基準をめぐってちょっと困った事態が起きているもよう。


■どの程度飲み食いしたらクビなのか?

同工業園区のある責任者は「どういう基準があるのか我々もよく分かっていない。基準をオーバーしたのか、どれくらいオーバーしたのかは市紀委の調査を待つしかない」と答えています(泰州「主任土下座事件」の真相 21世紀網、2013/4/24)。習八項にはもちろん、省が独自に定めた十項規定も、そんな細かい事は書いてません。「とりあえず見せしめにしとけ」という意図しかないですから基準などないも同然でしょう。

一応どれくらい飲み食いしたかの調査結果が出ております(新華網)。これによると、相手は河北省滄州市から工業地区を視察に来たビジネスマンで、20人で総額5430元(約8万6900円)。1人あたり271元(約4340円)。これが使いすぎなのかどうなのか、調査結果では触れられていません。やはり基準はないのでしょう。高い!と読み手に思わせればそれで良いのだと思います。

いっそのこと接待する側の官僚のレベルで予算を決めてあげれば、万事解決ではないかと思うのですが。


■住民の恨み

さて、見せしめのための仕込みと思われる住民1000人ですが、住民側に濱江工業園区への恨みがある人物が含まれていたとも報じられています。恨みの原因はいつもの如く土地収用。一部住民は立ち退きを迫られていたようですが、その補償金をめぐってもめていた模様。「提示した金額を最終案と勘違いし、扇動したのでは」と指摘するのは立ち退き担当の責任者です。

補償金に対する不満は今に始まった事ではないらしく、該当する住民が何度も話し合いを求めていたものの、「幹部がいません」というお決まり文句で追い返していた模様。


■プロ暴露人と土下座

「職業爆料人」(プロ暴露人)という職業があるそうで。スキャンダルなネタをメディアやネットに暴露するプロ活動家、とでも訳せばいいのでしょうか。

そんなプロ活動家の一人が、賈宏偉さん。張愛華が宴会しているとの情報を入手し現場に急行。すると、ちょうど住民に吊し上げられた張が土下座しているところだったそうで。この一部始終を動画と写真付きでネット掲示板に発表。ちょっともみ消せないレベルの、全国的なニュースとなってしまい、張の罷免につながったとのことです。

ちなみに賈さんの動画によると、張は取り囲んだ住民達に向かって「あなた達は私の父母、私は皆さんの子供だ」「私が間違っていました。何でもしますから離して下さい」と言うや頭をこすりつけ、許しを請うたとのこと。中国人にとって他人に土下座、というか膝を折るというのはかなり根性がいる、無条件降伏くらいの意味を持っていると常々思っていたのですが、張の「何でもしますから」という発言を見ると、最近はそうでもないのでしょうか。

中国語がわかる人は「私が間違っていました。何でもしますから離して下さい」の原語「我今晚错了,请求原谅,做儿子,做孙子都行,请放我走」もぜひご確認ください(南都週刊)。

この後、張は罷免されてしまったのですが、そこにはちょっとしたカラクリが。泰州市もそこまで重く見ていないのか、張は工業園区管理委員会主任という行政職位を解任されたものの、残る3つの共産党内職位はそのまま。ちなみに解任された主任職は副処級、党内職位はすべて正処級(課長級)です。


■胡錦濤問題とからめて考えてみる

グダグダと書き連ねてきましたが、一番気になるポイントは泰州というのは胡錦濤の故郷なんですね。胡錦濤は公式プロフィールでは安徽省出身となっていますが、泰州出身というのは誰でも知っている話。

一説には、江沢民が江蘇省揚州出身なので、江蘇省出身者が続くとまずい(何がまずいのか)と判断したトウ小平によって、「今日からお前は安徽省出身だよ」と安徽人にされたそうですが。

総書記を降りた胡錦濤は昨年暮れに泰州に里帰りをしていたのですが、その際、泰州市は省の十項規定に基き道路封鎖や人払いを実施しませんでした。胡錦濤前総書記自ら、習八項を破っているわけです。もちろんこの際はおとがめなし。それなのに今回は習八項が基準もないのに厳格に(?)適用されることに。

この違いはなにか。たんに下っ端の党員が目立ってしまったため、中央への恭順姿勢を見せるため、とりあえず解任しただけなのでは……。最初はそう考えていたのですが、立ち退き云々の件が出てくると別の解釈も成り立つような気もします。これをどう考えれば良いのか。考えなくても良いのか。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年4月29日付記事を許可を得て転載したものです。


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