中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年05月02日
中国は観光地の宝庫。世界遺産に選ばれているのに寂れた観光地もごろごろしているほどだし、心の底から感動する大自然の絶景が見られる観光地も掃いて捨てるほどある。というわけで旅行好きにはたまらない国だと思うのだが、あまり医療施設の整っていないド田舎の観光地で大怪我を負うと大変なことになってしまう。その好例を2013年5月2日付武漢晩報が伝えている。
■転倒して粉砕骨折
湖北省武漢市に住む陳さん。メーデーの休暇に家族とともに神農架ツアーに参加した。神農架林区は豊かな森林で有名な自然観光区。中国を代表するUMA、野人の生息地でもある。
ところが陳さん、30日の夜11時頃、トイレにいったところでこけてしまった。ド田舎のトイレというで明かりもなく、床もぬれてすべりやすかったのだとか。近隣の診療所で診察を受けたところ、くるぶしの粉砕骨折と診断された。
■診療所の救急車
陳さんは糖尿病の持病があり、骨折後には血圧が急上昇。心臓機能にも影響が見られた。しかし診療所では手術できないということで自宅のある武漢市まで急ぎ変えられなければならないという結論に。というわけで武漢市まで救急車で送ってくれとお願いしたのだが、ここからが長かった。
神農架林区側が手配した救急車で送るという話になったのが問題は輸送費。旅行ツアー側は1キロあたり2.5元(約40円)、計3000元(約4万8000円あまり)という金額を提示したのだが、救急車がいざ出発するという時になって診療所側は「やっぱり5000元(約8万円)でよろしく」と吹っかけてきた。
こりゃたまらんと旅行者たちは警察に通報。警官の仲介により診療所側は無料で陳さんを送ることになった。
■2台目の救急車
ようやく話がまとまって出発したのが5月1日午前1時。だが出発していくらも立たないうちに救急車は停車。運転手は「ブレーキに問題があるのでこれ以上は進めない。診療所に連絡して別の救急車をよこしてもらうことになった」と説明した。
しばらくすると確かに救急車がやってきた。陳さんと家族はその救急車に乗り込んで再び移動を開始したのだが、しばらくしてとんでもないことが発覚した。実はこの救急車、近隣のある病院に所属している(中国の救急車は救急センター所属のものと病院所属のものがある。他にも野良の闇救急車も結構存在する)。武漢市まで送り届けるなんていう話は聞いておらず、たんに患者を拾いに来てくれと頼まれたので出動したのだとか。
dsc_0025.jpg / egorgrebnev
*「120」と書かれているのは救急センター所属の救急車。
「よっしゃ、わしが代わりに武漢まで送ってやる!」などという都合のいい話があるわけもなく、陳さんたちはその救急車が所属する病院に送られることに。
■バスでの帰郷
困った陳さん一行は再び神農架林区に連絡。午前4時頃、関係者が陳さんのいる病院に到着。再び警官も呼び出され、その仲介の下、関係者は武漢市まで送り届けると約束した。その後、手配されてきた軽ワゴンに乗って今度こそ武漢市へと移動することに……とならないのが残念なところ。
そのワンボックスカーはなんと長距離バスターミナルまで連れて行ってくれただけで後は自力で帰れという切ないお達しだったという。もうあきらめたのか、陳さん一行はバスで武漢市に向かうことに。午前9時、バスが出発したが、高血圧のため陳さんはほとんど昏睡状態だったという。午後3時、陳さん一行は宜昌市に到着。バスを乗り換えて武漢市に向かった。午後8時、陳さんは武漢市の病院に入院したという。
粉砕骨折したのが30日午後11時、武漢市の病院にたどりついたのが翌5月1日午後8時。約21時間の旅となった。
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