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選挙だけでは民主主義は育たない、「烏坎村の苦境」を評す―中国(1)

2013年05月21日

■選挙だけでは民主主義は育たない、「烏坎村の苦境」を評す―中国(1)■
 

投票箱!!1位を飾るのは一体どこなのか!!?
投票箱!!1位を飾るのは一体どこなのか!!? / ict.wa4


■農村がこんなんなってるのは、農民がこんなんだからなんやで


「中国民主化の重要な一里塚」と中国内外から讃えられた烏坎事件。その評価に対し、「現場を知らない学者さんたちはアホばっかり!」とツッコミを入れたコラムが発表された。それが「「烏坎村の苦境」は誰に平手打ちを喰らわせたのか?」。

そのポイントは3点。第一に「騙されたと言っている農民たちだがもともとは納得していたはずなのに今になって無理難題を通そうと騒いでいるだけ」。第二に「農村はずっと選挙やっているけど民主主義は根付かない。選挙だけじゃ民主主義は育たない」、そして第三に「農村がこんなんなってるのは、農民がこんなんだからなんやで」、だ。


■烏坎事件とその後の展開

烏坎事件を覚えているだろうか?

烏坎村事件の経緯コトバンク

昨年9月と11月、40年近く居座った共産党村支部書記による専横や腐敗に怒った住民が、村を管轄する陸豊市政府に抗議のデモを実施。逃げ出した村幹部に代わり住民は自主選挙で自治組織を作ったが、同12月にリーダーの1人が市当局に連行されて死亡。村民は村の入り口を封鎖して市当局と約10日間にらみ合った末、広東省政府に村支部幹部選挙のやり直しや腐敗の調査などを約束させた。
( 2012-01-17 朝日新聞 朝刊 1外報 )

村幹部が共有地を勝手に売り払い、その代金を横領していたとして農民が激怒。村幹部を追放し、押し寄せた軍、武装警察が十重二十重と囲む中、籠城を続けた。その一部始終がネットや潜入した記者により発信され、劇場型事件として世界に注目されることとなった。最終的に広東省政府が村民たちによる選挙、汚職調査を約束することで収束した。

村役人を追い出し、村民たちが自分たちの手で選挙を勝ち取った……このニュースは中国の知識人、民主化シンパの人々、さらには中国社会に注目する人々にも象徴的な事件として受け止められ、「中国民主化の一里塚」的な評価も少なくない。

ところが選挙が終わってから1年が過ぎた今年2月、抗議運動の指導者の一人であり、選挙で村民委員会主任に当選した林祖鑾氏が「運動したことを後悔している」と発言し注目を集めた。

村民たちのもともとの要求は不当に安く売られた共有地を取り戻すことであり、選挙はそのための手段でしかない。上述のNHKの番組にしても選挙ばかりに焦点が合わせられ、実際の土地回収問題にはほとんど触れられていなかった。まあ中国のド田舎の土地が誰に売られようと、あまり世界の皆様の注目を集める話ではないので仕方がないが。

1年が過ぎた今年2月の時点で回収できた土地は3分の1程度。この事態に村民たちは不満を抱き、運動の指導者であった林氏を脅かすといった事態も起きていた。さらに4月には再び村の道路を封鎖し、再び騒ぎを起こすことによって解決を図ろうという動きも報じられた。


■強制土地収用がなければ新中国はなかった

さて、この烏坎村の迷走を受けて書かれたコラムが「「烏坎村の苦境」は誰に平手打ちを喰らわせたのか?」。「偉い学者さんたちがあんなに褒めたたえていた烏坎事件ですが、なんだか元の木阿弥になったみたいですねぇ」と嫌み120%の内容となっている。

筆者は李昌金氏。三農(農業、農村、農民)問題の専門家で、江西省撫州市宜黄県の政治協商会議文史委員会主任、同県政治協商会議委員という肩書きを持っている。高名な学者でもなく、また華々しい役職を持っているわけでもない李昌金氏だが、2010年に中国ネット界、言論界を騒がす1本のコラムを書いている。

2010年9月、宜黄県で強制土地収用に抗議した住民3人が焼身自殺を試み、うち1人が死亡する事件が起きた。人を自殺にまで追い込む、当局の暴力的な土地収用に世論は批判一色。県トップのクビが飛ぶ騒ぎへと発展している。

ここで登場したのが李昌金氏のコラム「江西省宜黄県強制土地収用焼身事件を掘り下げる」だった。宜黄県は土地収用の補償を十分に引き上げていたが、それでもごくごく一部の住民とのあつれきは防げるものではない。強制土地収用が自殺する騒ぎにまでつながったのは当局が事態を見誤っていたものではあるとはいえ、都市化と経済成長のために土地収用は必要不可欠。土地収用を進めればごく一部に強制土地収容が起きるのは必然だと説いた。

李氏が「宜黄県官僚」という肩書きでこのコラムをメディアに寄稿したこと、さらには「強制土地収用がなければ新中国はなかった」という煽り120%のタイトルでポータルサイトが転載したことにより、「ほれ見たことか、官僚の本音のいかに冷血なることか」と大変なバッシングにさらされることになった。


以下、「選挙だけでは民主主義は育たない、「烏坎村の苦境」を評す―中国(2)」に続く。

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