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振興計画指定の産業分野、一部でなおも生産能力過剰
財新網、2013年5月22日
◆新興産業もすでに生産能力過剰に
今年に入ってから政府高官及び国務院の文書で、生産能力過剰が指摘された分野には鋼鉄、セメント、電解アルミ、平板ガラス、船舶があげられる。また石油化学、鉄合金、コークス、自動車、銅精錬、紡績、風力発電設備、多結晶シリコンなど多くの分野にもこの問題はかかわっている。
名前をあげられた分野のうち、鋼鉄、電解アルミ、船舶は2009年初頭の「10大産業振興計画」 にも含まれていたもの。同計画は総量のコントロール、遅れた設備の淘汰、合併再編、技術改造、イノベーションを通じて、産業構造をアップグレードする狙いだった。現時点でこの目標はまだ完全には達成されていない。
4年以上が過ぎたが、鋼鉄、電解アルミ、セメントなど伝統的製造業関連の生産能力過剰は解消されていない。そればかりか、風力発電設備、多結晶シリコンなど新興産業も短期間に投資、拡張を進めて生産能力過剰にオチっている。
◆深刻な中国の生産能力過剰
今年の両会で、国家発展改革委員会の張平 主任(当時)は次のように発言している。現在、中国の鋼鉄、セメント、電解アルミ、平板ガラス、コークスなどの分野では、生産能力の活用率は70~75%にとどまっている。風力発電設備では70%以下。太陽電池では60%を割り込んでいる。国際的な判断基準だと通常80~85%が正常な競争状態であり、上述の産業分野に生産能力過剰の問題があるという。
中国政府の規制も各業界の生産能力拡張というトレンドを止められないようだ。今年2月、中国審計署審計化学研究所が発表したショートレポートは、鋼鉄業界を例として生産能力過剰の6つの要因をあげている。その一つが「政策計画や市場予測が市場の実際の動きとずれている」、だ。
国家情報センター経済予測部の祝宝良主任は先日、財新記者の取材で次のように指摘している。鋼鉄、自動車、化学工業、有償金属などの分野では、一部メーカーは地方国有企業であり、地方政府の重要な財源になっている。両者の重複が生産能力過剰を加速させている、と。
◆李克強首相、張高麗副首相の指示
5月13日、李克強首相は国務院機構機能転換動員テレビ会議において、「行政認可事務の大幅な削減と政府の機能転換、生産能力過剰とむやみな拡張の抑止、これは現在の絶対的任務である。党中央、国務院の統一的指示に従って任務を全うせよ」と地方官僚に指令した。
また、マーケットの力を信じ、政府が機能を転換して権力を手放し、企業の生産経営活動に対する政府の直接的関与を減らすことで、マーケットの分割と独占を打破し、産業構造転換の制約となっている体制的障害を消し去らねばならないとも李首相は述べている。
また李首相は農業、サービス業の解放にも触れている。サービス業の大きな発展がなければ産業構造転換の実現は難しく、消費の牽引もないと考えている。
5月、張高麗副首相は内モンゴル自治区を訪問したが、この際にも生産能力過剰を解決し、産業構造転換の加速と経済成長の活力を高めることと訓示している。鋼鉄、セメント、電解アルミ、平板ガラス、船舶などの生産能力過剰が深刻な分野については、新規設備の建設認可を禁止し、違法に進められている建設中のプロジェクトを取り締まること。規則違反があれば違反したものが責を追うことを大原則として、状況に応じて適切に対応せよと命じた。
◆生産能力過剰を解決する方法とは?
長年続いている問題をいかに解決するべきか。中央経済工作会議の考えは「4つの手法」だ。(1)国内需要の拡大に努めて製品を消化する、(2)輸出を拡大し海外で消化する、(3)再編合併を推進する、(4)環境保護、安全、エネルギー消費のハードルをあげて遅れた企業、設備を淘汰する、というもの。
しかし、これらの問題がえんえんと解決されない原因は、つまるところ地方政府による経済活動への干渉が多すぎるという点にある。問題解決の推進者はやはり地方の主管部局である。上述の中国審計署審計化学研究所レポートは、経済大勢改革を推進し、地方政府のマーケットに対する不当な干渉を規制するよう提言。次のように指摘している。
「産業参入のハードルを高めること、市場競争の規範化、地方保護主義が作り上げた産業チェーンの細分化。政府はこれに力を注ぐべきだ。また遅れた企業、設備の淘汰の実施状況を地方政府や国有企業の業績として採用するべきだろう。その他の点においては、(政府の干渉ではなく)マーケットにより多くの力を発揮させるべきだ」。
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