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中国で日本ラノベがアグレッシブに翻訳されている件=『僕の妹は漢字が読める』を例として(阿井)

2013年06月04日

■『僕の妹は漢字が読める』の中国語版■
 


『きらりん!おぱんちゅおそらいろ』も『閃閃亮!小褲褲天藍色』にするとまだ耐えられる。

20130604_写真_中国_ラノベ_1

王府井書店で『僕の妹は漢字が読める』1巻の中国語版「我的妹妹会认汉字」を見つけました。中国語簡体字版のタイトルは『我的妹妹会認漢字』。単純な装幀のせいで家に帰ってネットで確かめるまで海賊版かもという危惧が消えなかった。

紙質もなんだか粗いし、1ページずつめくれないし正規版にしては作りが雑だ。海外小説では翻訳の上手い下手よりも表紙の絵がダサいとかダサくないとか外見が先に評価され、あまりにガッカリな出来だと冗談半分に海賊版が疑われるが、本作もそれにあてはまる。本当にめくりづらいったらありゃしない。

日本でこの小説が出たときはレビューサイトとかで話題になってたし、けっこう気にはなっていて日本に帰った時買っておこうと思ってたんですが結局買えず仕舞い。まさか中国語版を先に読むことになるとは思いませんでした。

ただ原作を読んでいないとはいえ、一応ネットとかで作品の知識だけは仕入れていたから、ひらがなしか読めないキャラと漢字も読めるキャラの書き分けを中国語でどう表すのかとか、作中作があるようだしひらがなの小説をどう翻訳するのかとか、期待が膨らみましたね。

20130604_写真_中国_ラノベ_2

そしたらオール漢字でやんの。

HJ文庫のホームページで立ち読みができたから比較してみたのですが、地の文にあるトウキョウやネリマという地名も、作中に出てくる小説『きらりん!おぱんちゅおそらいろ』も全部漢字になっていました。「原作でひらがなだった箇所をピンイン(中国語の発音のアルファベット表記)で表すのだとしたら骨が折れるぞ、訳者も大変だなぁ」と帰り道に勝手に想像して訳者を労っていた自分がバカみたいです。

ただし、訳者が注釈で『できる限り原作の面白さを保ったまま』と言っているだけあって、前述の『きらりん!おぱんちゅおそらいろ』はネット小説(日本で言うケータイ小説)を更に砕いた表現で書かれ、正体不明の人物による仰々しい独白は古典のような文言調となっている。だけど、漢字が多すぎて読めないとか中国語で書かれても違和感しか浮かばない。まぁ漢字しか使わない国で漢字が読めないことをテーマにした小説を翻訳することがそもそも無理な話だったんです。なんで中国語にしようと思ったんでしょうか。

発行元の吉林出版集団吉林美術出版社からは『僕の妹は漢字が読める』のほか『オレと彼女の絶対領域 』(我与她的绝对领域)と『六畳間の侵略者!? 』(三坪房间的侵略者)のHJ文庫の作品が翻訳出版されている。メジャーなライトノベルの作品が既に湖南美術出版社とかから出ているから、大手出版社がまだ目をつけていない作品を翻訳してレーベルごと抱えようという戦法なんだろうか。

タイトルだけで日本のネットを震撼させた第6回HJ文庫大賞奨励賞『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい 』の中国語版が出る日も近いかもしれない。

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*本記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の2013年6月4日付記事を、許可を得て転載したものです。 


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 コメント一覧 (2)

    • 1. 阿井
    • 2013年06月04日 13:12
    • ちなみに画像のページには小説家オオダイラ・ガイの新作『きらりん!おぱんちゅおそらいろ』と、それを読んで感動する主人公の様子が書かれています。
    • 2. Chinanews
    • 2013年06月11日 15:51
    • >阿井さん
      ご説明ありがとうございます。
      出版社サイトで原著を少し読んでみましたが、頭がくらくらしますね。これをがんばって翻訳した中国人の方の努力に感服です

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