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天安門事件当時の北京市長の死とメディア検閲(水彩画)

2013年06月07日

■陳希同の死亡記事■
 


■陳希同の死

2日、陳希同が亡くなりました。天安門事件当時の北京市長です。昨年、香港で出版した回顧録では武力弾圧の決定に自分が関わっていなかったと否定しているようですが、「天安門事件弾圧に関わった関係者の一人」という肩書きは免れられないところでしょう。

香港紙や海外の通信社などが天安門事件の前日ごろに病死したと報じていましたが、6日の新華社の死亡記事と、香港の親中共紙である文匯報が報じたことで、確認が取れました。その新華社の公式死亡記事がちょっと変なのでご紹介します。

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陳希同病死(新華社 2013/6/5)


陳希同はガンのため、2013年6月2日病死した。陳希同、男性、83歳。1998年7月31日、北京市高級人民法院で懲役16年の刑を受けた。2006年5月31日、重病のため保証人を立て一時出所。

たったこれだけ。新華社の死亡記事は記事の体を成していないとしか言いようがありません。死亡記事が出るくらいの人なのに、当人についての説明が一切無いのでどういう人物なのかが全く分かりません。

新浪、網易、騰訊、捜狐などのポータルサイト、地方紙などは、新華社の原稿をそのまま流用していますので、記事は新華社バージョンを使用するよう、独自の報道をしないように通達があったのでしょう。せいぜい判決時の写真が使われているくらいです。

死亡記事に説明がが無いからだけではないのでしょうけど、「(エロ写真流出事件を起こした香港のタレント)陳冠希(エディソン・チャン)かと思った」というネット民もいたとか。


■党籍剥奪されたみなさんの死亡記事

陳の官僚人生において最大のポイントである、1989年の天安門事件当時北京市長を務め、その後政治局入りして書記となりました、という経歴がありません。鄧小平に誇張した報告を上げて軍事介入に走らせる一端を作った1人であります。

1998年に汚職容疑で党籍剥奪、公職追放、懲役16年の刑を喰らっています。ちなみに過去に党籍剥奪を受けた方々の死亡記事を見てみると、文革の主犯とされた四人組の張春橋(記事)と姚文元(記事)はちゃんと「反革命集団」として紹介されており、81年になぜ懲役刑を食らったのか説明されているのに対し、陳希同はその説明もなし。功績も無ければ咎も無し、です。

ついでに言えば、上記の二人と陳には、同志諸君の死亡記事には欠かせない「因病医治無効」(治療の甲斐なく)という、労りの言葉もありません。陳の場合は、すでに火葬されているとのこと。

六四天安門事件に関与した人間なので、一切の経歴に触れてないのかどうかは不明ですが、反革命集団の扱いと同様なので、党籍はく奪された者は全員そういう扱いなんでしょう。陳良宇や薄熙来にも適用されるのだと思います。


■小ネタ:機密を守るために職業は「カメラマン」扱い

NGワード判定機としても名高い新浪微博でも、「陳希同」は新華社の死亡記事が出てすぐにNGワード入り。ただ、6日には普通に検索にかかるようになりましたので、「黄色いアヒル」や「今日」などに比べると優先度は低いようです。
(関連記事:【六四】天安門事件24周年の5月35日、中国のネットはアヒルに席巻されていた……ほか(ujc)

天安門事件記念日があけたらたいしたニュースではないとなったわけですが、とはいえ記念日前にニュースになれば要らぬ注目を集めてしまう……というわけで、陳の死は極秘扱いの処理を受けていたようです。火葬の際には申請書類を提出しなければならないのですが、故人の職業という欄には「カメラマン」と記入されていたのだとか。

「官僚」とか「汚職官僚」とか書くわけにはいかなかったのかもしれませんが、なぜカメラマンなのか。陳が仮出所後いたく撮影にご執心だったとかで、こういう肩書きになったのかもしれません。こういう写真もあるので、昔からの趣味なのでしょうか。
(陳希同の遺体火葬職業欄は「カメラマン」 2013/6/5、香港文匯報)

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年6月7日付記事を許可を得て転載したものです。

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