中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年06月15日
*愛奇芸のトップページ。
■こっそりと「中国最強動画配信サイト連合」が誕生していた
2013年6月13日、南方週末電子版は、動画配信サイト・愛奇芸とPPSがアカウント統合を完成させたと発表した。買収から約20日間での早業となった。
……という記事を見てびっくりしました。というのも買収の事実そのものを見落としていたため、であります。ちなみに合併の発表は5月7日。愛奇芸の親会社・百度が3億7000万ドルで買収しました。
ざっくりググったかぎりでは日本語のニュースサイトでもまったく報じられていないようです。じゃあどうでもいいニュースなのかというと、そんなことはまったくなく。中国IT調査企業iResearchによると、今年4月時点で愛奇芸・PPS連合の1日あたりアクティブユーザー数は4991万人と、優酷・土豆連合の4959万人を上回っています。月間視聴時間でも愛奇芸・PPS連合は12億5122万時間で、優酷・土豆連合の10億1587万時間を圧倒。
業界1位の優酷と業界2位の土豆が合併したのは2012年3月のこと。強者連合により中国動画配信サイト業界に圧倒的なリーディング企業が誕生したかと思われたのですが、わずか1年あまりでその座を後発の愛奇芸・PPS連合に奪われたことになります。
■誕生から8年間、動画配信業界の泥沼バトルはまだ終わらない
2005年4月、Youtubeの創業から遅れることわずか2カ月にしてYoutubeモデルの優酷が誕生します。以来8年間、次々と大物プレーヤーが誕生し、競い合ってきました。一般ユーザーの動画アップロードが主体となるYoutubeモデルの優酷と土豆、正規版権を取得し高画質動画を供給するHuluモデルの楽視網、愛奇芸。P2P型デスクトップクライアントでの海賊版ストリーミング放送を主体としたPPS、PPtvなどなど。
昨年、1位と2位の大物合併で誕生した優酷・土豆連合が圧倒的な地位を得たと思っていましたが、まさかたった1年でそれを上回る大型連合が誕生するというのは驚きです。戦場もパソコンからスマホ、タブレットへ、そして今、スマートテレビ(とセットトップボックス)へと広がっていく中、今後もますます「儲からないけど投資せざるを得ない」泥沼のバトルが繰り広げられるのではないでしょうか。
日本から版権を取得した正規配信が増えていることに加え、先日はアニメ映画「言の葉の庭」が日本公開と同時に動画配信サイトで有料配信されるという画期的なモデルも登場しています(参照:「日本文化交流」と書いてオタ活動と読む)。日本コンテンツ産業の先行きにも影響する中国動画配信業界に注目です。
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(執筆者:高口康太)
中国の動画サイトはどこも儲かってないので厳しい状況のようですね。今勢いのあるiqiyiにしてもそんなに余裕がある訳ではないようですし。