■忘れさられた「ニセ政権」とは=日本の傀儡政権を総ざらい、広中一成『ニセチャイナ』■
私が天津に留学していた時、よく酒につきあってくれた友人、広中一成さん(三重大学非常勤講師)が、中国傀儡政権の概説書というきわめてユニークな本を出版されました。歴史の表舞台から外れた、忘れられかけた世界を掘り起こした労作とのこと。
内容については編集者のハマザキカクさんのサイト「Cool Ja本」でも紹介されていますが、大変楽しみな内容です。また広中さんのTwitter、ブログでも関連情報やこぼれ話がフォローされています。以下、著者の広中さんからメッセージをいただいたので掲載いたします。本屋で見かけたらぜひぜひお手にとってご確認ください。(以上、文責は高口康太)
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忘れさられた「ニセ政権」
広中一成『ニセチャイナ』社会評論社
今から70年あまり前、日本と中国はおよそ8年に及ぶ全面戦争(日中戦争)を繰り広げました。その際、日本軍は広大な占領地を統治する手段のひとつとして、日本に協力的な中国人を使って、いくつもの現地政権を作りました。代表的な政権を挙げると、中国東北部に満洲国(満洲帝国)、内蒙古に蒙古聯合自治政府(蒙疆政権)、華北に冀東防共自治政府(冀東政権)、中華民国臨時政府(華北政務委員会)、華中に中華民国維新政府、中華民国南京国民政府(汪兆銘政権)などです。これら政権は背後で実権を握った日本人の支持のもと運営されていたことから、日本では傀儡政権、または対日協力政権、中国では偽政権と呼ばれました(ニセチャイナというタイトルは「偽政権」をもじって名付けました)。
傀儡政権は戦争を続ける日本軍に物資を供給したり、自前の軍隊で占領地の治安を維持するなどして、戦争継続に協力していました。その一方で、一部傀儡政権は日本側民間人と力を合わせて、戦争終結を目指した和平工作を進めていました。
傀儡政権のうち、満洲国や汪兆銘政権については一般的に知られた存在でしたが、それ以外の政権は戦争から半世紀以上過ぎた今日、人々の歴史から消え去ってしまいました。