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中国アニメ七つの大罪!子どもの事故をきっかけにアニメ・バッシング広がる(百元)

2013年06月22日

■中国で今度は国産アニメが主なターゲットな「アニメ七つの大罪」という批判などが行われている模様■

喜羊羊與灰太郎@五分山寮望亭
喜羊羊與灰太郎@五分山寮望亭 / clinno


■子どもの怪我をきっかけにアニメ・バッシング

ありがたいことに面白いネタを教えていただきましたので、今回はそれに関して書かせていただきます。

中国では国産コンテンツの保護政策を推進しており、現在テレビで流れるアニメは実質的に国産が独占する形となっています。しかし、その中国国産アニメに対して「子供に悪影響がある」という批判が現在巻き起こっているそうです。

その事件の発端となったのは、5月に起こった、「中国の大人気アニメ喜羊羊と灰太狼を真似して、8歳と5歳の男児が同じ村に住む9歳の男児を木に縛りつけて火をつけ、ひどい火傷を負わせた」という事件です。
中国国産アニメ、男児が模倣し友人に大やけど 問題点浮き彫りに(人民網日本語版)

「喜羊羊と灰太狼」は中国国内のアニメコンテンツでは実質的に一人勝ち状態であり、劇場版の興行成績も非常に好調で、中国国産アニメコンテンツの象徴的な存在となっています。中国国産アニメを応援したい人の間では「中国にも日本のアニメに勝てる作品、喜羊羊がある」などという感じでかなり持ち上げられていたりしますね。

そんな中国国産アニメの貴重な大成功例に関して事件が起こってしまったというのはかなり頭の痛い話になっているようですし、ちょっとした混乱や、ここぞとばかりに批判の声が出たりしているそうです。

中国の国産アニメは、中国でも問題無いような「健康的なもの」「毒の無いモノ」「お上の許してくれるもの」だけを作っていたはずなのに、このような問題が起こって批判されるとは、もう一体どうすれば良いのやら……?といった空気も漂っているとかなんとか。


■アニメ七つの大罪

そして先日、中国の国営放送のCCTVでは「動画片之傷」というテーマの番組で、アニメの子供への悪影響についてかなり攻撃的に報道されたという話です。

番組の内容は、発端となったアニメを真似した子供による事件、視聴者やアニメ業界の声、アニメの子供への悪影響、アニメのレーティング導入についてといった内容だったそうなのですが、かなり偏ったというか、アニメ叩き的なものになっていたという話です。

例えばアニメの子供への悪影響に関しては「アニメ七つの大罪」といったタイトルで

暴力を誘導する(喜羊羊と灰太狼)
身体の怪我や損壊を誇張して表現する(トムとジェリー)
「火遊び」の危険の軽視(トムとジェリー)
言葉が文明的ではない(中国国産アニメ「熊出没」)
悪ふざけ(クレヨンしんちゃん)
着飾って成人化する(セーラームーン)
ポルノを暗示(クレヨンしんちゃん)

というのが紹介されたそうです。後ろのカッコ内の作品は、例として流れた作品です。最後の方になると苦しくなってくるというか、「七」に合わせるために頑張ったのかなーというのが見て取れるような……中国語のままですが、その部分の動画はコチラで見れるようです。

20130622_写真_中国_アニメ

しかしこれを見ると、スラップスティック系の作品もほぼ全部ダメになってしまうような気もしますね。それに例として挙げられた作品のうち中国国産アニメは半分以下ですし、日本のアニメはもう中国のテレビで流すのは難しいはずなのですけどね。

また、レーティングに関しても各国のレーティング事情の中で紹介された日本の事情のなかでは映画のレーティングとテレビアニメを混同していたり、「ウルトラマンのような殴り合いシーンのある作品は日本のゴールデンタイムでは放映できない」という、どうしてそうなったのか分からない情報や、「クレヨンしんちゃんは日本では放送に制限のある成年アニメで、子供が見れるアニメではない」「関連マンガも書店では監視の目のある別の場所に置かれている」といった「アクション」で連載されていた原作の初期の情報を混同しての誤解だか何だかがあるような紹介が行われるなど、ツッコミ所の多い内容のようです。ちなみにその部分の動画(中国語)はコチラで見れるようです。

こういったアニメ批判の動きに関しては中国オタクの面々もアレな気分になってしまうようで、中国のソッチ系の掲示版でもイロイロな声が上がっていました。以下に例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


■中国人オタクの嘆き

おいおい。テレビのアナウンサー曰く、ウチの国のアニメは喜羊羊っぽいのが3分の1、残り3分の2の99%は暴力に満ちたアニメって……もう何が何だか。ウチの国のアニメってもう全部お子様向けになっちゃっているというのに。

昔のようにウチの国のテレビでも日本のアニメを流してくれないかと思っていたが、最近のニュースを見ると、そうならない方がまだマシなのかと考えてしまう。下手に流すと批判されまくるのは明らかだ。

正直、俺達の趣味のアニメに関しては現状維持の方が良いよな。ネットでの公式配信も増えて来ているしな……

確かにネタ切れでどつき合いに逃げている所は見て取れるけど、全体的に見てウチの国のアニメってここしばらくの間でどんどんおとなしくなっているんだけどね。

ウチの国はレーティング無し、バッサリと全部「幼児向け」にされちゃっているじゃないか。今更レーティングも何もないだろう。ウチの国のアニメを幼児向けの作品ばかりにしてしまったのに、これ以上どこをどう「健康」に変えるつもりなんだ?

今大人気になっている「進撃の巨人」とかが出たらどうなることやら……!

テレビでは他の国にはみんなレーティングがあるとか言っているが、これも間違った情報だよ。日本の映画のレーティングは確かにあるけど、テレビアニメは別のはずだ。

日本の児ポ法改正をネタにしたりツッコミ入れたりしていたら、こっちはもっとダメな状態になっていた……

今回の発端となった事件、アレもアニメの影響がどうこう言う以前に保護者の問題じゃないの?てか、アニメでは「火で焼く」んじゃなくて「火で煮る」表現だったはずなんだが。

「クレヨンしんちゃん」が日本では子供に見せるための作品ではない、成年向けの作品だとか言われているけどあれはアニメになった時点で子供向けのアレンジになっている作品なんだがな。ただ、劇場版は明らかに子供向けじゃないね。エロだと不健康じゃなく「深い」方での大人向けの作品はあるけどね!

パッと見では正しいことを言っているように思えてしまうのが何ともアレだ。子供への悪影響という理由を掲げると、全部通っちゃいかねないのが今の社会だし。よく考えてみれば、どんなものでも「悪影響」をこじつけできるのが分かるはずだが、そういう意見は届かないんだよね。

レーティングの導入自体は悪いことじゃないだろう。ウチの国ではレーティングが無いからアニメの表現基準を幼児向けに合わせざるを得ない環境になっている。見る人間をある程度制限できれば、深い内容や大人向きの表現だってできるはずだ。

暴力的だ、悪影響だとかいう話の前に、子供や保護者の頭の心配をした方がいいんじゃないの。国外にはレーティングがあるのに、我が国には無い、だからレーティングを導入してどうのこうのってのは単なる幻想だ。

しかしウチの国のアニメもどうすればいいんだろうね。こんなゴタゴタが出るようじゃ、日本のように多様なストーリーやジャンルで盛り上げることは難しいだろう。やるならアメリカのカートゥーンのような流血シーンをカットするなどして「批判されない」「悪影響を指摘されない」ように発展させていくべきか。でもアメリカ式は強力な作品展開やキャラの活用などの面で実現が難しいように思えるしなぁ。

この手の批判に関してはいつも情報が錯綜している。例えば自分の場合、日本の作品やレーティング状況に関してはそれなりに知っているからまだ間違いが分かるが、アメリカ、韓国とまでいくと「外国ではこうやっているのに」という情報の裏を取るのが難しい。そして規制したい人間の都合のいい部分だけが強調される。日本を例にした規制の紹介を見ただけでも、無知か故意かは分からんが情報の歪曲があるし。

そもそも、この事件とレーティングって関係ない話なんじゃないか?「トムとジェリー」とかはアメリカで普通に見られている作品のはずだし、もしアメリカの子供がそれによる悪影響を受けていたら子供は死に絶えていると思われるが、そういう話は聞いたことがない。我が国の保護者の教育に問題があるのでは……?

こういう話が出る度に、影響を受けて作品の内容を見もしないで批判する人が増えないことを祈ってしまう。

「批判するための批判」をする人って、内容とか関係ないからな。批判したいだけだから。

他の国はレーティングがあるからアニメの悪影響が無いわけじゃないんだが……日本のテレビアニメは昼間と深夜枠とかで住み分けされているだけで、レーティングというのは無い。レーティングを導入すれば問題が解決され、アニメが面白くなるわけじゃないよ。

現実社会と教育の悪影響とかはどうなのよ。ウチの国ではテストのためだけの教育になっているから、その失敗なんじゃないか?ゲーム、ドラマ、音楽、そしてアニメ。数年ごとに叩く対象が変わって、次々と潰していく。それにしても、国外の子供はアニメ見て放火殺人とかはやらないようだけど、中国の子供は先天的におつむが弱かったりするのかい?

中国で大人向けのアニメを作るには、レーティングがあれば……と考えてしまう時は確かにある。とは言え、実際にレーティングが導入されたら自分の想像したものとは違うことになっていそうな気もする。ウチの国にも深夜アニメ枠みたいなのができないもんかね。

とまぁ、こんな感じで。


■叩かれ慣れていない中国アニメ

中国オタクの面々もやるせない気分になったりしてしまうのかもしれません。

今回の事件及びその後の批判の流れは、国産アニメの希望の星、海外のアニメのように「不健康」ではなく、そして蔓延した海外アニメを駆逐した存在であるはずの「喜羊羊と灰太狼」で子供に悪影響が……ということもあって、少々難しい話になっているようです。

中国のアニメは政府筋のメンツを立て、波風起こさないように……といった形で作られてきた面もあり、これまで政府や社会、保護者層は意識していても、子供への実際の影響や、「よい子のみんなは真似しちゃだめだよ」といった予防線を張っておくといった気配りもありませんでしたから、今回のような騒動は「ついに起こってしまった事件」というようにも感じられます。

中国の国産アニメはこれまでの発展の経緯から、今回のような作品の影響を理由とした事件への対処、槍玉に上がることへの対応、社会問題になった時の対処法、対応のノウハウが不足していますし、余計に混乱しているようですね。とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年6月3日付記事を、許可を得て転載したものです。

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