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2013年06月25日
以前紹介させていただいた上海動物園のゴリラに空知英秋と言う名前がつきそうな件の結果と、ご質問を多数いただいております「進撃の巨人への批判」についてを大雑把にまとめさせていただきます。
■ゴリラの名前投票
さてまず上海動物園のゴリラの件ですが、以前の詳しい流れは記事「上海動物園のゴリラの名前が「空知英秋」になりそうな件への中国オタクの反応とその後の流れ」を参照してください。ゴリラの子どもの名前をマイクロブログで募集したら、マンガ・銀魂の作者である空知英秋先生の名前がトップに。さすがにまずいと思ったのか投票ページが停止された……といういきさつです。
さて結果ですが、ゴリラの名前はやはり「空知英秋」になることはなく結局は「海弟」という名前になったそうです。ちなみにこのゴリラのお兄さんの名前が「海貝」だそうで、無難な落としどころにした模様です。中国語ですがこちらのニュースなどをご参照ください。
このゴリラの名前の募集及び投票活動については、ジャンプの巻末目次の作者コメントに「知らないうちに中国のゴリラになる所だった。みんな名前はマジメにつけよう。」という空知英秋先生の言葉が載ったというのも伝わり、「空知先生に伝わっちゃったぞ!!」とちょっとした盛り上がりになっていましたし、「どうせ遊びのある名前を選べない、怪しい投票にしないといけないならこういうイベントするなよ」といったツッコミの声も上がっていました。
■中国で盛り上がる「進撃の巨人」批判
さて、次に質問をいただいている「進撃の巨人」に対する批判についてですが、中国では最近ちょっと大事というか大火事になりかけているようです。進撃の巨人の「ドット・ピクシス」のモデルが秋山好古だということ、作者が秋山好古に対するリスペクトを公言しているというのが問題になっています。
韓国人「進撃の巨人のピクシス司令は戦犯・秋山好古をモデルにしてる!謝罪しろ!」と作者ブログに凸撃(NAVER まとめ)
これが案の定中国の方にも飛び火しまして、現在炎上している模様です。
進撃の巨人に関しては、4月に中国の動画サイト愛奇芸(iqiyi)で公式配信が開始される際に、独占配信の関係から現地のコメント機能つき動画サイトとそのユーザー層とのゴタゴタがあったり、ちょくちょく軍国主義がどうのこうのという批判やそれに伴った小規模の炎上はあったのですが、これまではものすごい勢いで拡大する人気の中で埋もれていったような所もあり、あまり大事になってはいませんでした。
しかし今回は作品人気が既に非常に加熱している状況であること、中国の感覚では非常に分かり易い批判対象があることなどから、批判とそれに伴う炎上もわりと大きなものになっているようです。
それでこの件、なぜ中国で強い拒否反応が出るという事に関して、ちょっと日本では分かり難い背景がありまして……この問題、言ってしまえば「秋山好古が旅順虐殺事件の関係者だから」というのが中国における拒否反応における大きな理由の一つとなっています。
「坂の上の雲」等のイメージでいると意識され難いかもしれませんが、日清戦争の際の旅順虐殺事件(wikipedia)が中国ではよく知られているので、その事件の関係者というだけで中国では感覚的に受け入れられなくなってしまうような所もあります。
中国における日本軍の残虐行為としては南京大虐殺が有名ですし、日本のニュースにも関係する話題がよく出てくるかと思いますが、中国では日清戦争時の旅順虐殺事件も非常に重大な事件、日本軍の残虐行為の象徴的な事件といった形で扱われています。学校の歴史の授業でもきっちりとやりますし、私が現地校に通っていた当時はこの辺りの授業の時期には例によって日本人だからということでイロイロと面倒な目に遭いました。
そんな訳でこの件に関して中国では歴史問題に及んでしまう所もあるので、収拾に関しては難しい面が多々あります。それに加えて「進撃の巨人」はなまじ大人気になり過ぎたために問題がややこしくなっている感もありますね。今回の「進撃の巨人」の件ほど中国の感覚で「分かり易い」ものではなくとも、中国で展開する上でリスクの高い作品はイロイロとあるのですが、そういった作品で現在の「進撃の巨人」のようなレベルの人気になった作品はありませんし。
それにしても、当ブログの記事で最初の「進撃の巨人」関連の話題がコレというのは何とも言えない気分になってしまいます。「進撃の巨人」はここしばらくの間で一気に大人気になりました。その人気の高まり方は近年に無いレベルで、私もどうやればその人気の過熱っぷりを伝えられるかと悩んでおりました。しかしそんな状況でズルズル来ていたら、こういう事態に……
とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。
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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2013年6月18日付記事を、許可を得て転載したものです。