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汚職官僚のミラクル逆転劇!150万円しか横領してないから立件見送り、ついでに昇進(水彩画)

2013年06月26日

■ある汚職容疑を受けた県局長■

Birthday Cake
Birthday Cake / Will Clayton


■社会保険基金の私的流用、公費でお誕生日会を開いた疑惑


汚職や失政をやらかした党員をとりあえず解任し、軽めの党内処分をして、ほとぼりが冷めた頃に元の地位に戻すことはよくある話です。それならまだいいのですが、今回の話は狐に包まれたような感じ。

浙江省逮捕の官僚、釈放後さらに昇進(新華輿情 2013/6/21)

2011年12月8日、県涜職侵権局(汚職権利侵害局)に寄せられた一般からの通報を元に、温州市検察院は当時、社会保障局局長だった黄賢蔵を拘束しました。

通報内容は以下の三点です。

1:社会保険基金の利息57万元あまりを私的に流用
2:社会保障局の経費で故郷に村級道路を舗装
3:社会保障局の経費で家族の誕生日会を開く

検察の調査で、誕生会云々はガセと判明。で、金額的にも残る1と2が重要なのですが、結果的にいうと涜職罪の要件を満たさなかったため、立件はされず。司法ではなく党の紀律委員会が対処することになったはずなのですが、処分どころか昇進を果たすという謎展開になっています。


■横領が認定されたのに立件は見送られた?!検察のミラクル判断

なんでこんなことになっているのかよくわからなかったのですが、ポイントは(2)の道路造りが涜職罪の要件を満たさなかったことにあるようです。

涜職罪とは国家機関職員の汚職、権力乱用、不作為などを罰するために作られた法律。今年1月に最高人民法院、最高人民検察院が出した通達で、1人以上の死者を出した場合、社会に悪しき影響を及ぼした場合など適用の条件が示されています。条件の一つに、経済的損失が30万元以上の場合に適用という項目があります。

黄が社会保障局の口座から30万元(約465万円)を引き出したのは事実と認定されたのですが、そのうち10万元は村から社会保障局に認定されています。また10万元は社会保障局の「再雇用専門資金口座」からの支払いだったとのこと。記事に詳しい説明がないのですが、道路造りも再雇用プロジェクトという話でこの10万元は公費乱用にあたらないということでしょう。かくして公費乱用に相当する金額は10万元だけとなり、涜職罪の要件を満たさないので立件見送りとなったという話のようです。

・社会保障局口座 横領額30万元
→10万元は返還 横領額20万元
→10万元は正しい支出  横領額10万元
=涜職罪で立件するような額じゃない!おめでとう、立件見送り

って10万元は拘禁乱用しているうえに、(1)の社会保障基金の利息流用問題の解決も見えないのですが……。というか本命の案件は一般市民の社会保険をぽっけにいれた(1)のはずなんですけどね。一般からの通報に対して検察は回答しなければならないのですが、その中で57万元の流用については一字も触れられていませんでした。


■逆転の黄腎藏、まさかの昇進

2013年3月、県紀律委は黄賢蔵に対して下した処分は、厳重警告でした。党員に対する処分としては、軽いものから「警告」、「厳重警告」、「党内の職務から解任」、「観察」、「除名」となりますので、下から2番目ですね。

黄は14日に行われた県の人民代表大会で交通運輸局に任命されています。確か警告は受けてから6ヶ月、厳重警告は1年以上経たないと抜擢が出来ないはずなのですが、組織部は「これは抜擢ではない」と強調してくるのです。

組織部は「この春の機構改革で、社保局と人事局が合併し、同局長が組織部副部長を兼任する事になり、あまりにデカくなりすぎたので交通局に回した」という説明をしています。組織部の中では格が下がっているから昇進ではないんだと説明が付いているのでしょう。

記事は県のの投資のうち9.55%は交通局関連のもの。交通局は大きな権限を持った部局だが、これでも栄転じゃないのかと批判しています。ホントにどういうことなんでしょう。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年6月23日付記事を許可を得て転載したものです。

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