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中国の官僚を震え上がらせる「双規」とはなにか?ある官僚の死(水彩画)

2013年06月28日

■ハエは紀律委に殴り殺される運命か■


20130628_写真_中国_

■中国の官僚を震え上がらせる「双規」

「双規」とは:
関係する人間(容疑者)が規定の時間、規定の場所で、関連する問題について説明をすること。
紀律検査機関案件検査工作条例に第28条第3項より。

こう説明されてもさっぱりわからないのですが、簡単に言えば、「双規」とは汚職の嫌疑をかけられた哀れな党員が中国共産党紀律部局による取調べを受けることを指します。薄熙来や劉志軍などの大物から、名を知られていない小物の官僚まで、党員である限りはこの双規を受けて容疑が固まってから、司法機関に身柄を委ねられます。

双規を受けた党員が後に無罪放免になるケースは基本的にありませんので、容疑をガッチガチに固めてから双規に踏み切るのでしょう。もっとも中国の官僚は叩けばほこりしか出ない連中、矛先が向いた時点で終了というのもあります。誰を双規するか、その辺のさじ加減は中央紀律委員会が握っています。薄熙来などの大物になると、政治局、常務委員会の管轄となるでしょうが。


■ある官僚の死

さて双規された、哀れな汚職官僚の皆さんはどのような取り調べを受けているのでしょうか?今までその内実が伝わってきたことはないので、実際の取調べは数日で終わって、後はのんきな牢屋暮らしなんじゃないかと考えていたのですが、そうでもないようなのです。

2013年6月20日、南方都市報は記事「湖北省黄梅県地震局長、双規中に死亡=遺族は自白強要疑う」との記事を掲載しました(すでにウェブ版は削除済み)。

銭国良は黄梅県の地震局局長。4月8日、朝食を食べた銭は妻の王七珍に「今日は郷で会議がある」と言い残して出勤するも、帰宅せず。翌日、ある人から「銭は調査に連れて行かれた。携帯電話も電源が入っていない」と連絡がありました。

温州市の党員が双規中に死亡した事件を聞いていた王は、県紀律委員会の責任者に、「夫を頼みます。食事も水も与えてください」と頼み込んだところ「安心しなさい。問題が起きれば、責任があるのはお偉いさんだ」との回答だったとか。13日午後、王さんは地震局に呼びつけられ、夫の双規通知書にサインするよう求められます。

ここからが長かった。王さんが再び夫の姿を見たのは1カ月半が過ぎた5月28日のこと。「経済問題」で双規を受けていたはずの夫ですが、暴行を受けていたようで、顔は形が変わるほど腫れ上がり、体の一部が腐れ落ち、あちこちにチューブをつながれた無残な姿となってベットに横たわっていました。

結局、16日間の入院の末、銭さんはお亡くなりに。


■汚職官僚3人の摘発がノルマとの噂

家族がなぜこんなになるまで治療しなかったのかと抗議するも紀律部局職員は素知らぬ顔。

銭さんは今年の正月、「(汚職取り締まりが厳しいが)手を出さなくてよかった。でなかったら年を越せなかったわい」と安堵していたとのことで、家族は汚職をしていたはずはないと考えています。それもそのはず黄梅県地震局は2011年にできたばかりの部局で、正職員も4人程度しかいない小さな部局。汚職するほど権力がないのだとか。銭さん自身も「次のツイていない奴が誰かは知らないが、自分は貧乏な部署だから関係ない」とのたまっていたのだとか。

そんな貧乏部局でも、いやあるいは権力がない部局だからこそ、いけにえにされたのではないかと家族は考えているそうです。銭の妹、鳳仙さんによると、黄梅県では昨年から汚職取り締まりが強化されており、官僚や建設業者が捕まっていたのだとか。「年に3人の正科級官僚を摘発する必要がある」とも噂されており、その貧乏くじが誰にあたるかびくびくしていたのだとか。ちなみに銭さんで摘発された正科級官僚は2人目となります。

双規は中国共産党紀律部局が党員相手に実施する取調べですが、人身の自由を制限する法的根拠はなく、ある意味で超法規的制度となっています。もちろん暴行、拷問を許す法的根拠もありません。

「ハエもトラも一網打尽」と汚職官僚退治に意気込みを見せる習近平ですが、ハエである下っ端官僚は大変な扱いを受けていることが明るみに出る事件となりました。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年6月21日付記事を許可を得て転載したものです。

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