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2013年07月14日
Tibetan Sichuan Monks / Jan-Christian Teller
中国政府はチベット政策を緩和するどころか、ますます締め付けを厳しくしている。TCHRD(チベット人権民主センター)は7月5日付のリリースで、2012年末に公布された、チベットの宗教教育を制限するための新たな法律について報告している。
その法律(条例)とは「チベット僧院の宗教的教師雇用基準」。2012年11月25日に行われた中国仏教協会第8回理事会第2次常務理事会で承認され、12月3日に発表、施行された。
チベット自治区及びカム地方、アムド地方などチベット人居住区全域の僧院、尼僧院に適用されるもので、僧院教師の登録と当局による審査を義務づけている。TCHRDはチベットの僧院と尼僧院における全ての教師を中国政府が完全にコントロールするための法律で、「精神的指導者の姿をした政治的僧侶を任命するためのもの」と評している。
審査を担当するのは中国仏教協会。1953年に仏教を共産党の指導下に置くために設置された組織で、仏教徒の活動を制限し僧院をコントロールすることを役割としている。許可を受けた教師は5年ごとにこれを更新する必要がある。
具体的な条文を見ていくと、以下のような問題点が浮かび上がる。
第2条:チベットの仏教僧院の教師は全員登録されねばならない
第4条:(罰則を定めたもの)宗教的指導者が雇用規則を破り、その義務を果たさなかった場合には、口頭の訓戒(或は政治教育クラス)を受け、解雇され、宗教的指導者としての全ての権利と特権を剥奪される
第4条の2:「中国共産党の指導を支持し、社会主義システム、愛国主義、規則、国民団結、宗教と社会の安定を支持するという基準を満たさなければならない」
第5条:「(僧院教師)候補者はまず、各僧院の管理委員会により推薦され、その後、郷レベルの中国仏教協会事務所により審査が行われ、次に県レベルの中国仏教協会事務所が審査、試験を行い、これにパスしなければならない」
第11条の4:宗教的指導者の義務は「国家の政策と規則を支えるように信者を導き、注意深く国家統一と民族団結、社会安定を守り、分裂主義に反対せねばならない
第15条:(即時解雇の条件を定めたもの)僧院の管理委員会の命令に背く。海外の組織又は個人のそそのかしに従い行動する。分裂主義的思想を広め、僧侶や尼僧、俗人を違法な行為に導き、民族団結と社会安定を破壊する行為に加わり、祖国中国を分裂させること