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チベット人亡命者が激減した理由、亡命社会と故郷の分断狙う中国政府(tonbani)

2013年07月15日

■亡命者激減 ダラムサラ難民一時収容所は空っぽ■


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*ダラムサラの難民一時収容所。

2008年以降、ネパールを経由してインドに亡命するチベット人の数が、極端に減少している。今年に入ってさらに拍車がかかり、これまでに35人しかダラムサラの難民一時収容所に辿り着いていない。主な原因は中国の厳しい監視と思われる。亡命したくても亡命できない状況が続いているのだ。このままだと、亡命社会の構造変化、縮小化は避けられない。


■難民一時収容所館長の説明

ダラムサラベースのチベット語メディアTibet Timesが、13日、難民一時収容所を取材した記事を発表した。これの記事を元に最近のチベット人亡命の実体を報告する。

ダラムサラ難民一時収容所(ネレンカン)の館長ガワン・ノルブによれば、2008年にアメリカ政府の援助で建てられたダラムサラのネレンカンは女性200人、男性300人、合わせて500人を一時的に収用できる規模。しかし2008年からの5年間の亡命者数は計3200人にとどまる。

「2008年以前には毎年3500人前後のチベット人が亡命していました。この5年間の合計でさえ、以前の1年間の亡命者数に満たないという状態です。最近亡命する人のほとんどは僧侶。ソガスクール(成人学校)やスジャスクール(13歳以上の新規亡命児童が行く学校)へ行く者もいますが、12歳以下の子供は非常に少なくなっている」という。以前は小学校入学を目的とした5~7歳の子供が中心であった。

現在の状況を尋ねると、「もう1ヶ月以上この収容所は空っぽの状態が続いています。特に今年に入って亡命者の数は減り、現在までに35人しか亡命していません。ネパールのネレンカンには現在、8人を収容しています」との回答。

現在の職員数を尋ねると、「ダラムサラ、カトマンドゥ、デリーのネレンカンを合わせ45人の職員がいます。今年に入り亡命者がほとんどいなくなっていますが、亡命政府の方からここを閉鎖しようという話はありません。議会で、亡命者が減っているから職員を減らすべきだとの話もあったと聞くが、正式な決定は今のところ何もない」とのこと。

もしも亡命者がまったく来なくなったらネレンカンは閉鎖されると思うかとの質問には、「亡命政府が完全閉鎖という決定を下すことはあり得ないでしょう。少しでも亡命者がいる限り閉鎖はできないと思います。デリーのネレンカンを閉鎖しようという話はありますが、ネパールのネレンカンは国連の管理下にあるので運営し続けるべきです」と館長は答える。

亡命者が減っている主な原因は何かとの質問には「中国政府がチベット内での弾圧を強めているので、亡命できないのです。また、以前のように何日も歩いて高い峠を越える人はいなくなりました。ダム(ネパールへ抜ける道路上の国境の街)を経由する場合でも、以前は少しの金を払えば通過できたが、今は大金を払っても通過できないからですだ」との答えだった。

支援金に影響はあるかとの質問に「現在、支援金のほとんどはアメリカ政府から出ている。でも、これは亡命者の数に応じた援助だ。この先亡命者が減れば、援助も減るであろう」と館長ガワン・ノルブは答えた。


■中国政府の“分断政策”

館長は指摘してないが、2008年以降亡命者が減った原因の元を辿れば、中国政府の政策変更に行き当たる。

中国政府は2008年3月のチベット全域における蜂起を契機に、チベット内地のチベット人とインドのチベット人を厳しく隔離する政策を取り始めた。ダライ・ラマ法王のいるインドを遠く感じさせ、代わりに北京を近くと感じさせるため。また亡命者を減らす事により亡命社会を弱体化させるためである。

そのため国境警備が大幅に強化された。ネパール政府にも金を与え、ネパール側の警備も強化させている。さらに亡命者をネパールまで連れていくガイドを大量に逮捕。ガイド料は跳ね上がり、今では1人何万元も払わないといけないという。

今年に入り、チベット東部のカム地方やアムド地方(青海省や四川省など)在住のチベット人がラサ入りすることが厳しく規制された。国境を越える前にネパールとの国境があるチベット自治区にも入ることが許されず、これまで亡命者の中心であったカムとアムドの人が来られなくなったも要因となっている。

そのため、インドの亡命社会ではTCV等の学校に新しく入る子供が激減。南インドの僧院に入る僧侶も激減している。このままだと、これらの教育施設が縮小されるのは目に見えている。また、現在インドにいるチベット難民の多くが欧米を中心とした外国に移民している状況、中国政府が帰国を斡旋している状況とあわせ、インドやネパールの亡命社会が急速に縮小することは確かであろう。中国政府の狙い通りに事が進んでいると言えるのではないか。

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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2013年7月14日付記事を許可を得て転載したものです。


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