■ 「自家製大砲の検証」■
政府が補償金を支払わずに里山に風力発電所を建設しているため、農民が刀と自家製大砲で武装、建設現場を襲撃した事件について記事「農民レッドリボン軍が地方政府に“宣戦布告”、自家製大砲を手に建設現場を襲撃―中国」で紹介しました。
気になる自家製大砲ですが、湖南省南部では「械闘」の際に一般的に使われるものとのこと。犬大将さんが中国の論文を紹介してくれました。(以上、文責は高口康太)
自家製「土炮」、どっかに作りかたなどあるだろうとおもったら、中国の警察さまによる「自家製大砲の検証」という報告がありました(胡同光・刘开足・喻卫东(湖南省郴州市公安局)「自制土炮的检验」『刑事技术』2004年第5期)。
短いしおもしろいので中身をざっと紹介しようかとおもいます。中国語読める人はCNKIとかで探して原文読んでください。
冒頭にはこうあります。
湖南省南部一帯では歴史的原因と自然環境の要因により、村と村、宗族と宗族との間で争いが絶えず、山、土地、水、その他要因をめぐり、大規模な「械闘」が行なわれてきた。その中で自家製大砲は敵の集団や建物を“爆撃”するために使われている。
「械闘」というのは武器をつかった争いのことで、村どうし一族どうしの戦争ですね。それがよくあるというわけですが、自家製大砲も普通につかわれているようです。
構造ですが、口径20mmから75mm、長さ80cmから140cmの間の管の一方を鉄板で溶接してふさぐ、あるいは折り曲げてふさいだ後、尾部の2~4センチのところに小さな点火口を開けたら完成。発射口から火薬を入れ、その後弾を入れたら準備完了で、爆竹の導火線などを使って点火口から火を着けます。報告では「湿気てさえなければすぐ使える」と簡便さを強調しています。
中国では各種祝い事に爆竹は不可欠なものなので火薬は簡単に手に入ります。しかも中国の爆竹は日本のものみたいにみみっちくなくて一個一個がデカい上にいっぱいついており、それを大量にパパンパンパンパンパパパンパン(略)と地響きがするくらい鳴らすのが普通なのでそれをほぐせばだれでも大量な火薬を手にすることができます。
なお大砲の威力は詰めた火薬の量によって決まるのですが、入れすぎると砲身が破裂するので注意が必要。論文では「錆びた土炮に30グラムの火薬を詰めたら破裂した」というエピソードも紹介されています。
弾はどうするかというと、これも二種類あります。一つが「鉄片、ベアリング、釘、石、ガラス」などを入れてぶっぱなすもの。いうならば散弾です。たしかに集団戦では使えそうです。もうひとつが自作の砲弾をつくって飛ばすもの。砲身よりもワンサイズ小さいパイプの尾部を溶接し、火薬を詰めた後雷管を装着。木を削って作った弾頭を付けて完成。ちゃんと着弾後に爆発する砲弾の出来上がりです。
この自家製土炮ですが、大砲というよりも中国の抗日ドラマなんかでよくでてくる擲弾筒に近い感覚なんでしょう。郴州管内では普通は「械闘」につかわれているそうですね。稀にその他の犯罪にも応用されているそうです。
警察さまがなんでこんな報告を書いているかというと、構造が簡単すぎることが問題だからだとか。「中華人民共和国銃砲管理法」でいうところの「銃砲」と認定するために、どういう構造をしているのかを確認し、どういう試験をすればいいのかと警察も悩んでいるようです。
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*本記事はブログ「メモ@inudaisho」の2013年7月15日付記事を許可を得て転載したものです。