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「カドミウム米?ただちに影響はない」官僚の暴言が炎上=官僚専用の安全安心食品「特供」―中国(水彩画)

2013年07月18日

■特供生活は止められない■


■特供とカドミウム米

特別提供品、略して「特供」とは政府や国家機関のご用達を意味します。日本の皇室ご用達同様、普通に宣伝文句にも使われていたりもするのですが、そうした表向きの特供とは一味違う、隠された特供も存在します。それが秘密農場。食品問題が取りざたされる中国においても、偉い人は安全安心無農薬の食品を食べられるという次第です。

2011年の記事「中国で一番安全でおいしい野菜!極秘の共産党幹部専用農場は実在した―中国コラム」「<続報>【中国食品】政府高官専用の「安全農園」があった=潜入取材でスクープ―中国」で詳しく紹介しました。

あれから2年、中国の食品問題は今なお問題山積です。今年話題となったのがカドミウム米問題。福島香織さんの記事「痛々しいカドミウム汚染現場で途方に暮れる」がよくまとまっています。

問題発覚後、広東省ではサンプル検査を続けるなど対策をとっていますが、6月中旬には東莞市の工場に売却された米からも基準を超えたカドミウムが検出される事件がありました。湖南省の土壌がそんなすぐに改善されるわけもなく、広東省が水際で防ごうにも防ぎきれないのでしょう。

そんな中、当事者であるはずの広東省が火に油を注ぐ発言をかましています。広東省で重金属汚染がひどい都市の1つである韶関市の陳少夢・農業局副局長が、「私が見るところ1,2年食べても問題はない」と発言し、炎上中。(中国広播網)。いわゆる「ただちに影響はない」というやつですね。

広東省選出の全国人民代表である賀優琳は、「ただちに死者がでれば大事件だが、即効性のない殺人は軽視すれる。政績(政治家としての成績)のために人民の命や財産の安全を顧みないやり口が深刻な汚染を生み出すのだ。かならずや徹底的に対策しなければならない」と激怒。


■官僚ご用達、安全安心の食品を作る特供食品生産基地

ここで話が戻るのですが、中国の官僚がこういう舐めた態度が取れるのは、特供食品の提供を受けているからではないでしょうか。タイムリーなことに中国新聞週刊が、特供食品を生産する基地についての記事を書いていましたので、紹介しておきます。
(参考:「特別供給食品「基地」をメディアが暴露 野菜、肉全て機関食堂へ」中国新聞週刊、2013/7/10)

20130718_写真_中国_食品_
*厳重に守られている「基地」

以前の記事で紹介した北京海関蔬菜基地は北京海関(税関)に食品を提供していました。この記事で紹介されている天津二商集団は天津市政府専用の基地。どこの政府機関も同様の基地を持っているはずです。汪洋は広東省トップ時代に「広東省の官僚は特供食品を食べた事が無い」と言い切っていましたが、広東省にも同じような国営企業があるはずです。

天津二商集団はその名前から国営丸出しですが、公式サイトに「天津市の安心食品の生産基地」と臆面もなく書いてありますね。

もう一カ所、記事で紹介されているのは中央機関に食品を供給する北京二商集団。前身は建国直前に作られた北平市貿易公司です。何度か改称された後、1955年に第二商業局という市の一部門として誕生。一商集団のサイトによると、当時食料を統括していたのは三商だったようで、組織編成で二商が担当するようになったのでしょうか。

北京二商集団は「民生の品質向上」を企業使命としているものの、庶民に手が届きそうな商品は生産していません。せいぜい贈答用のお酒とかでしょうか。


■下っ端官僚も享受している安全安心食品

その北京二商集団の公式サイトには、北京市トップの郭金竜(政治局委員)が今年3月に視察した記事が掲載されています。中国の国会、「両会」を前に人民代表(議員)に提供される食品の安全検査のために視察したという次第です。写真を見る限り、工場内にではなく本社のサンプルを見ているだけにしか思えませんが、郭金竜の眼差しは真剣です。
(「郭金竜、王安順、全国「両会」食品供給工作確認でグループを訪問」北京二商集団、2013/3/8)

20130718_写真_中国_食品_2
*手前で真剣に聞いているフリをしている郭金竜、指さししているのは二商集団(グループ)トップの孫傑。

今年の両会は習近平のシブチン方針で高めの食材はないと強調されていたものの、それでも2300万元(約3億4500万円)相当の食材が供給されています。代表の数を約3000人としても、北京二商集団から提供されている食材だけで1人10万円超となる計算です。滞在期間2週間と考えると、安い金額ではないような。

特供食品は当初、「副総理以上と一部古参同志の食の安全と健康」のために始まったとのことですが、いつのまにやら下っ端にもあてがわれるようになっています。なぜこうなったのかについては上述中国新聞網記事にも説明はありません。さすがにそこまで突っ込んでは書けないのでしょう。記者もお世話になっているかもしれませんからね。

ただコスト度外視で安全安心の生産をしているため、特供食品の価格は通常の3倍から5倍程度になるという事実をこっそりと教えてくれています。習近平が進める反汚職・反浪費キャンペーン、習八項の精神に明らかに反していますが、官僚達がこの利権を手放すとは思えません。批判が大きくなれば適当な理由をこしらえて押し切るのでしょう。

毎日、安全安心の特供食品を食べているとすれば、中国の官僚の皆さんが食品安全や環境保護に力が入らないのも無理はないところ。自分たちには関係ない問題なのですから。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年7月16日付記事を許可を得て転載したものです。


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