■2分で分かる「中国の貸出金利自由化」、改革の序章かたんなる国際的言い訳か■
it's money, comrade / pnoeric
中国人民銀行 貸出金利の完全自由化発表
NHK NEWSWEB、2013年7月19日
中国人民銀行は、19日夜、銀行が企業に融資する際の金利を、20日から自由化すると発表しました。
これまで、中国人民銀行は、各銀行が、企業に融資する際の金利を低くしすぎて経営を悪化させないよう、基準となる金利を設定し、この金利の70%を下回る金利で貸さないよう規制を設けていました。
中国人民銀行としては、今回の自由化で、銀行からの貸し出しを増やし、銀行を介さずリスクの高いシャドーバンキングの拡大を抑えるねらいがあるとみられます。
影の銀行問題への注目が高まっていたこともあり、日本メディアは今回の貸出金利の完全自由化についてかなり大きく取り上げています。どこのメディアもかなりバランスがとれた報道ですが、上記NHKNEWSWEB、
ロイター日本語版あたりが特にイケているのではないか、と。詳しく知りたい人はそっちを読んでください。
というわけで、本サイト・金鰤は超簡単に要点をまとめる「2分で分かる貸出金利の完全自由化」をテーマにしてみたいと思います。ポイントは3つ、「金利自由化は国際社会への言い訳」「現実的な効果はほとんどないよ」「でも李克強改革に期待しちゃうよね」でございます。
■国際社会への言い訳19日、貸出金利自由化が発表されたこの日、モスクワで主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が行われています。今回のテーマの一つは「中国さん、影の銀行対策をしっかりしてね」。
詳しくは記事「
「影の銀行」「中国経済の危機」とはなにか?」を見ていただきたいのですが、影の銀行がこれだけ膨れあがった背景にあるのは金利が規制されているなどの中国の金融市場のゆがみにあります。貸出金利の完全自由化はそのゆがみを解消する手段の一つであり、G20でいじめられる前に「中国、影の銀行対策にやる気満々です!」とアナウンスする目的であります。
■現実的な効果はないただし現実的な効果はというと疑問符。というのも貸出金利についてはこれまでも規制緩和が進んでおり、上限については2004年に撤廃。下限については基準金利(現在は6%)の0.7倍(4.2%)まで認められています。とはいえお金を借りたい人がごまんといる中国では4.2%の金利で融資されている例はほとんどないので、これ以上下限を引き下げても現実的には効果はないと思われます。いや、地方政府が「金利が自由化されたんやから利子0.00000000001%で貸せや」とかいってジャイアニズム融資を受けるケースとかがでてきたら受けるんですが。
■それでも高まる李克強改革への期待本丸は預金金利。現在の預金金利は基準金利(3%)の1.1倍まで認められていますが、これだと物価上昇率ととんとんぐらいなので、「銀行に金集めても増えないべ。つーか目減りしてね?仕方ねぇ。投資商品でも買って資産増やすか」となり、影の銀行など投資商品にお金が流れるという構図になっています。
ただ本丸に手を付けていないとはいえ、「
完全自由化!!!」というのはステキな響きですし、李克強首相の金融改革がとりあえず現実的な動きを見せたという意味では期待大。この調子で次々と改革が進むんじゃないの、と一部で盛り上がっております。
とりあえず李克強への期待値が高まったことは事実。今後、たんなる国際的言い訳で終わるのか、それとも二の矢三の矢が出てくるのかに注目です。
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今回、コメントさせていただきます。
また見せていただきます。
大関敬助でした。