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爆走する節約王・習近平、ネットの鉄板ネタ「貧乏県のホワイトハウス」に対策示す―中国

2013年07月26日

■爆走する節約王・習近平、ネットの鉄板ネタ「貧乏県のホワイトハウス」に対策示す■


■経済改革を担う李克強、節約王の道を歩み続ける習近平

李克強首相が中国の未来を決する重要な経済改革、金融改革に取り組んでいるさなか、ボクらの習近平書記は反汚職・反浪費・良き共産党路線への回帰という“どうでもいいこと”に邁進している。

イヴァン・ウィルのブログ」は

習近平総書記が保守的なスローガンを掲げたり、倹約令(行政支出の5%削減や党や地方政府の建物の今後5年間の新築禁止指示など)を出したりしているのは、李克強総理に強力に改革を進めさせる一方で、保守派(利権を追い求める権益集団ではなく、理想的な社会主義路線を求める清純な「左派」とそれを支持する社会の下層にいる多くの人民)を政権側に引きつけておこう、という習近平-李克強コンビの作戦なのかもしれません。

と、納得のご指摘。ただ習近平と李克強がお互いの職責を犯さずにことを進めているというのは歓迎すべき事態なのかもしれないが、自分が李克強だったら「遊んでんじゃねーよ!」と切れてしまうだろう……。

習近平の推進する節約キャンペーンでは「野菜の切れ端は漬け物に、冷や飯はチャーハンにせよ!」と軍が通達を出したり、あるいは中央経済工作会議で使われていた書類袋がプラスチック製から紙製に変わったりと、良識ある人が「子供だましにもほどがある」と激怒する楽しい話が満載だが、中国の街で話を聞くと「結構いいよね」と高評価している人も少なくない。

というのもチャーハンはともかくとして、「偉い官僚様がおいでになるので交通封鎖で道路が大渋滞。それを習近平が禁止した」「官僚の汚職ひどすぎるけど習さんになってからぼこぼこ失脚しとりますな」といった具合に、井戸端会議やネットでの政府ディスに対応した対策もちりばめられているため。ネット世論の政府ディスを強く意識していることを感じさせる。

今回のネタである「党機関は今後5年間、ゴージャス・ビルの建設を中止せよ」との指示もその一つだ。


■政府ディスの鉄板ネタ「貧困県のホワイトハウス」に取り組む習近平

「貧困県のホワイトハウス」は中国ネットニュースの鉄板ネタ。貧しい地方自治体が分不相応なゴージャス庁舎を建てました、というお話だ。

20130726_写真_中国_ホワイトハウス_
*安徽省阜陽市潁泉区の政府庁舎。建設を主導した張治安・元区委書記は収賄及び内部告発者への報復の容疑で、執行猶予付き死刑判決を受けた(新華網)。

「貧困県のホワイトハウス」ネタはごまんとあるのだが、かなりの確率でヒットする大ネタ。飲みの席で盛り上がる時事ネタとなる。そうした場では、私も「日本は清廉潔白の国ですから。例えばわが故郷、鳥取市ではダイエーが撤退した建物が市庁舎なんす」と地元ネタを披露し、一緒に盛り上がっている。

さてこの大ネタに目を付けたのはさすがというべきか、7月23日に中国共産党中央弁公庁、国務院弁公庁は合同で「党政府機関の高級建築の新築停止と執務室の清算に関する通知」を発表した。

もっともコアな内容は今後5年間、地方の共産党及び政府は楼堂館所(ゴージャスな建設物)を建設することは許可しないという内容になる。ネット民がこれまで腐敗の対象として叩きまくっていた「貧乏県のホワイトハウス」をダイレクトに取り締まろうというわけだ。


■官僚国家・中国の細かすぎる規定

ただし建設が禁止されるのはあくまで楼堂館所。一般的な庁舎の新築は特に禁止されていない。だったら5年という期限を区切る必要もないように思えるのだが。5年が過ぎたらゴージャス庁舎を建て放題ということだろうか。「学校、**センター名目で建物を作って庁舎に転用することは許さん」「都市再開発名目でゴージャス庁舎を作ることは許さん」「寄付されてもダメ」「企業が一般オフィス用に作ったゴージャス庁舎を借りるのもダメ」とか細かく規定されているわりには根本的なところが抜けている。

さらにいうと、ゴージャス庁舎と一般的な庁舎の区分なんて決まりがあるのかいな?という疑問も浮かんでくる。だがこの点ではさすがに世界最古の官僚国家・中国。ちゃんと一般的な庁舎の基準というのが決められているのだ。それが「党機関・行政機関の庁舎建設基準」(1999年)だ。

第一条;党・行政機関の庁舎建設においては、艱苦奮斗、勤倹建国、節約実施、奢侈浪費の制止の方針を貫き、庁舎の建設内容と建設規模を合理的に確定し、管理と監督を強化するべく、本建設基準を制定する

という暑苦しい項目から始まる通達なのだが、職員一人当たりの建設面積は16~18平米(市庁舎級)とか、偉い人の部屋の面積は「閣僚級は54平米」から始まり「処級以下は6平米」といった細かい区切り方まで決められている。偉い人のお部屋が6平米(2メートル×3メートル)などということは見たことがないので、もう全中国で違反が発生している状況である。

細かすぎる規定はこれだけではない。内装費は建物の建設費の25%までという基準もある。加えてどんな内装をしていいのかの基準もあったりする。

20130726_写真_中国_ホワイトハウス_2

こちらはその細則を記した附表一。各施設に許容される内装レベルを定めたものである。

一番下の「卫生间」とはトイレのことなのだが、やたらと紙幅をとっているところが面白い。トイレの床、内壁、天井とそれぞれ別項目が立てられているのが謎である。さらに設備についても一級(中央機関、省・自治区・直轄市)から三級まで別立てで記載されているのがすごい。

一級に許されている設備は「大便器、小便器、洗面台、鏡、洗い場」。ひょっとして三級になると洗面台がなくて手が洗えなくなるのでは……とドキッとしたが、書いてある内容は一緒だった。別立てにする必要は一切ないがこけおどし的にがんばって表が作られている。誰も守りはしない、というか私以外は誰も熟読しないであろう表をしこしこ作っている中国の下っ端官僚の皆さんに一度インタビューしてみたいなと思っているのだが、まだ実現していない。

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