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進行する少子高齢化、限界を迎えた一人っ子政策がそれでも改革できない理由―中国

2013年08月02日

■進行する少子高齢化、限界を迎えた一人っ子政策がそれでも改革できない理由■


■一人っ子政策の限界

中国の計画生育政策、いわゆる一人っ子政策だが、改革の機運が高まっている。というのも1979年の導入から30年あまり、その影響は凄まじく、中国は世界最速ペースの少子高齢化が進行しているからだ。

津上俊哉『中国台頭の終焉』は2010年実施の国勢調査をもとに中国の合計特殊出生率がわずか1.18にまで落ち込んでいることを明らかにした。北京市、上海市ではわずかに0.7強。日本を下回る水準であり、人口ボーナス(労働人口と家計貯蓄の増加)の時代から、真反対の人口オーナスの時代に突入し、日本と同じ責め苦にあうと警鐘を鳴らしている(関連記事:「中国の成長率は5%代に」「リーマンショックが中国を傲慢にした」ブックレビュー「中国台頭の終焉」)。

津上の試算は管見の限り最も悲観的なものだが、中国が人口ボーナスの時代を終えつつあるとの認識は広く共有されたもの。研究者の間では一人っ子政策の転換が必要だとの認識が広がっているが、実際の政策はと言うと、一人っ子政策の改革はいわば「やるやる詐欺」に終わっており、機運が高まりつつも手が付けられないままでいる。


■改革やるやる詐欺

その「やるやる詐欺」に最新事例が加わった。2013年8月2日、新華網は中国人民大学社会・人口学院の翟振武教授のコメントを引用し、「今年の末から来年の初頭にも「単独二胎」(父母の片方が一人っ子ならば、子ども2人までの出産を認可する)が認められる」との観測記事を掲載した。さらに2015年には2人までの出産が完全解禁される可能性もあるという。

実は「単独二胎」は今回、初めて提起された話ではない。2010年1月に国家人口計画生育委員会が発表した「国家人口発展"第12期5カ年計画"思考の道」に単独二胎の試行地域策定が盛り込まれていた。2010年に一度提起され、その後音沙汰がない「やるやる詐欺」に陥っていた一人っ子政策改革が、再び推進されるのではないか。新華網記事はそうした期待を抱かせるものとなった。

ところが同じく2日付の中国広播網記事では「現在、検討中」というそっけない答え。高まった期待は1日も持たずに打ち消されるという事態となった。

中国の少子高齢化傾向はすでに明らかな上に、一人っ子同士の結婚など二人までの出産が許されるケースでも、子どもを産まないケースが増えている。女性の高学歴化、晩婚化の進行、教育費の高騰に伴う出産数の減少などが背景にあると見られ、少なくとも都市部では二人出産を解放しても、大きな問題にはならないとの見方が強い。


■改革ができない理由

ここまでくると、もはや問題は「なぜ一人っ子政策を改革しないのか?改革できないのか?」と考えるべきだろう。1つの見方がいわゆる「抵抗勢力」。計画生育部局は各村々にまで人員を配している巨大権力機構であり、その権力を削るような改革はなかなかできないという代物。中国鉄道部はトップの失脚という大事件を経て解体されたが、同様の政治的大事件がなければ手を付けられないのかもしれない。

それをうかがわせるのがRFI中国語版が紹介している強硬派の主張だ。中国社会科学院マルクス主義研究員の程恩富院長などの一人っ子政策支援派は一人っ子政策の厳格化を唱え、「都市部一人っ子、(両親が一人っ子、農村戸籍や少数民族などの)特殊事例で二人までOK。3人目は全体に許さず。子どもゼロを奨励」と提唱しているという。「子どもゼロを奨励」って……。なも目標は中国13億人人口を漸進的に5億人にまで減少させることだという。

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