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中国夏の風物詩・計画停電が消える?李克強指数と石炭業界の窮地

2013年08月05日

■中国夏の風物詩・計画停電が消える?李克強指数と石炭業界の窮地■

中国エネルギー事情 (岩波新書)

■中国夏の風物詩・計画停電が消える?


猛暑が伝えられる、2013年中国の夏。中国の夏の風物詩といえば計画停電。街の一区画の電力供給をばっさりカットするというやり方で節電に励むわけだが、一般市民にとっても企業にとっても大変な悩みのタネ。だが今年は猛暑にもかかわらず、大半の地域で計画停電なしで乗り切れそうだと、21世紀網の記事「計画停電時代にサヨナラ?地方の電力供給制限プランは経済低迷によって廃止も」が伝えている。

その理由はずばり電力消費量の低迷と発電容量の増加だ。2013年1~6月の全社会電力使用量は前年同期比6.3%増にとどまっている。昨年の5.5%に続き2年連続での低水準。なお2011年は11.7%、2010年は14.56%だった。

2年連続で電力需要の伸びが低迷する一方、発電容量は順調に増加。今年1~6月の発電容量は6.11%増を記録した。年内にも米国を抜き、発電容量世界一になる見通しだ(ロイター中国語版)。地域的な偏差があり、華北や華東の電力需要はまだ厳しいと言うが、全体的にみれば近年にない余裕のある夏といえそうだ。


■李克強指数で見る中国製造業の冷え込み

いい話のようにも思えるが、問題は電力需要の伸びの鈍化は中国経済の低迷を背景としているという点だ。

李克強指数という言葉がある。李克強副首相(当時)が米大使と会食した際にGDPは水増しがあるため、「電力消費、鉄道貨物量および銀行融資」の3つのデータに注目していると発言したことに由来するもので、この3つの数字を中国経済の指標とするもの。

このうち銀行融資は投資の動向に大きく関連する数値だが、電力消費と鉄道貨物量は製造業の動向に強く関連していると考えられる。中国の電力消費の多くは第二次産業で消費されている。また鉄道貨物量(重量ベース)の過半数は火力発電所など使われる石炭の輸送で占められている。

電力消費量の推移については上述したが、鉄道貨物量の動きについても簡単に触れておこう。2011年が前年同期比7.9%増(国家統計局)を記録したが、2012年は0.7%減(国家統計局)、2013年1~6月が2.8%減(国家統計局)と電力以上の落ち込みを見せている。また中国産石炭の集積地である秦皇島の石炭在庫量は630万トンと高水準を記録。石炭価格(4500~5000キロカロリー)はトン当たり425元と前年比130元安にまで落ち込んでいるという。


■製造業は昨年並みか?石炭業界に吹く寒風

中国の足元の景気を量る統計としては貿易統計や製造業購買担当者指数(PMI)などなど複数の統計が取りざたされているわけだが、首相お墨付き積み付き(?)の李克強指数で見る限り、製造業は昨年とほぼ同水準での推移という感じだろうか。

ただし電力消費量の落ち込みが直接的に響く業種では結構大騒ぎとなっている。それは石炭業界だ。石炭生産地として知られる山西省では石炭業界を救うため電力業界に省内で生産された石炭を優先的に使うよう通達したほか、李小鵬省長(李鵬元首相の息子!)が大手電力企業と会談し山西省産の石炭の購入量を増やすよう求めているという(21世紀経済報道)。

さらにもうワンランク面白度の高いニュースもある。山西省呂梁市柳林県は石炭不況に伴い財政収入が急落。企業から税金をゲットするため24時間体制で口座をチェックし、入金がありしだい税金をいただくという荒技までかましてたのだとか(第一財経日報)。

さらにさらにもう1つハイレベルなニュースもある。記事「県トップの昇進を阻止せよ!市民数千人が抗議集会=石炭成金と民間金融が生み出す不思議な事件」で紹介した陝西省楡林市神木県の民間金融騒ぎだ。高利回りを約束して金を集める民間金融業者が大量に出現。その数は最盛期には2000を超えたという。これ幸いと民草は金を預けたわけだが、石炭価格の低迷に伴い債務不履行が続出。県トップの転勤が噂されたため、逆ギレ(?)した一般市民が逃がさないとばかりに庁舎を取り囲むという騒ぎとなった。

石炭成金、民間金融で一般市民も熱狂、そして債務不履行ラッシュという三連コンボは神木県に限らず、ゴーストタウンで有名になった内モンゴル自治区オルドス市など石炭産地ならばあちらこちらで見られる情景のようだ。

関連記事:
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  1. 1. 中国のエネルギー事情 5/6~多様な発電

    • [投資一族のブログ]
    • 2014年10月28日 21:11
    • 09年の石炭生産量は21億2300万トン、中国が群を抜いた第1位の石炭生産国である。石炭生産基地は主に内陸部(山西省、陝西省、内モンゴル自治区西部など)に分布し、その生産量が圧倒的に多い。山西省の08年の生産量は6億5600万トンで、中国の生産量のほぼ24%を担う。内モンゴル

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