■雨が降らない!と農民が暴動、「雨乞い」は古来より官僚のお仕事です―中国■
記事の要点
・雨が降らないと暴動起きる
・伝統中国の時代から雨乞いは官僚のお仕事です
・詰め寄る農民に人工降雨の説明をする官僚
■雨乞いは官僚のお仕事です「地方官が雨を降らしてくれないので暴動してみた」という中国史好きにはちょっとたまらないニュースがあった。
中国東部で大干ばつ、人工降雨の実施求め暴動も
読売オンライン、2013年8月18日
人工降雨の実施を求める住民が暴動を起こすなどの事態も起きており、地方当局は対策に躍起となっている。強烈な日差しが照りつける浙江省杭州市中国浙江省など東部一帯で、記録的な猛暑と少雨による干ばつが深刻化している。
(…)各地で人工降雨ロケットが打ち上げられ、江西省では100発以上を数えた。安徽省宣城市の荊州郷では10日、地元当局がロケットを打たないことに怒った村人約100人が役場庁舎に殺到し、公用車をひっくり返した。
なぜこのニュースが中国史好きにはたまらないかというと、伝統中国においては「雨を降らしたりやませたりすることは地方官の大事なお仕事だったから」、だ。官僚は科挙によって選抜されるわけだが、科挙とは何も四書五経をどれだけ暗記したかを量る試験ではない。その人物の徳ゲージがどれだけ高いかを量るための試験である。というわけで卓越した徳を持つ地方官僚は儀式を通じて天界と交信し雨を降らしたりやませたりするのも大事なお仕事であった。
天界との交信が降雨ロケットという科学技術に変わったとはいえ、地方官僚のお仕事に雨乞いが含まれるというのは今も昔も変わらないのではないか……とほっくりくる。

*19世紀末に上海で創刊された絵入り新聞『点石斎画報』をネタに当時の中国を描く名著
世紀末中国のかわら版―絵入新聞『点石斎画報』の世界
。地方官の雨乞いの説明も同書に含まれていたような気がしているが、今、手元にないので確認できず。すいません。
■公式発表とネットの噂宣城市は13日、この暴動に関する公式発表を出しているが、それによると事件の経緯はちょっと異なる(
人民網)。
宣城市績警県は7月以来、日照りが続き降雨量はわずかに26.2ミリ。前年の10%ちょいしかなかったという。連日の猛暑は「百年未遇」(百年間なかったもの)で、クルミの産地である荊州郷などの被害が深刻だった。
10日夜7時、20人あまりの農民が郷政府にやってきて雨の少ない理由などについて問い詰めたが、郷政府幹部が人工降雨の条件などについて説明。一度は理解して帰ってくれたという。
ところが折り悪くその日、変電所で故障が発生。荊州郷全域が停電となった。農民100人弱が郷政府に集まったところに、「ごく少数の無業の輩」が政府はわざと停電させたとのデマを流し、公用車がひっくり返されるなどの混乱を招いた。ただし公務員が殴られることはなかった。
11日、12日には荊州郷などに雨が降り、干ばつはやや緩和され、群衆の感情も平穏になった。
一方でネット情報まとめサイト・
中国ジャスミン革命(リンク先に暴動写真多数)によると、現地政府の日照り対策はやる気がなく、桶で水を運ぶといったパフォーマンスしかやっていない、干ばつ対策物資もどこかに消えてしまったという横領疑惑が重なったため。多くの公務員が殴られ、庁舎の扉や窓が壊されたという。
官製発表とネットの噂の間のどこかに事実があるのだろうが、官製報道を読むと、詰め寄る農民に人工降雨ロケットの説明を一生懸命している官僚さんの姿が浮かんできて、これまた大変そうなのだった。
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