■盛り上がってきた習近平の博士論文疑惑■
記事の要点
・習近平、李克強体制は中国史上初の超高学歴2トップ。
・肩書きは立派ながらも習近平の学歴はいわくつき。
・ついに博士論文の剽窃が発覚か
■習近平・李克強は中国初の博士2トップあまり報じられていない話なのですが、習近平・李克強は中国初の博士号を取得した国家主席・首相コンビです。
建国当初は「斧を手に革命に参加しました」みたいな水滸伝の登場人物クラスがごろごろしていました。彼らは学歴も中卒程度でしたし、知識分子は文革期に「臭老九」と罵倒されているような時代でした。高学歴の方が珍しかった時代です。
ところが、80年代になって建国初期に大学を卒業した世代が閣僚から政治局委員クラスに入るようになると、高学歴重視が目立つようになります。現在、省や直轄市の政府指導部入れ替えが着々と進んでいますが、新任幹部は若さと共に学歴、特に博士号の割合が強調されるようになっています。なお専攻もかつては理系中心だったのに対し、新世代は経済学・法学といった社会科学が目立つ傾向にあります。
その意味で博士号を持つ習近平の国家主席就任は象徴的なのですが、しかしこの学位は自力で取得したなのか、という点に疑問符がついています。
■習近平の学歴問題習近平が本当にまともな論文を書いて、博士号を取得したのかという疑問は以前からありました。習が博士号を取得したのは2002年。当時は福建省長という身分で、清華大学のある北京から1000キロ離れた福建省で、お仕事をしながら寝る間も惜しまずに論文を書いていたというのが公式設定です。
習近平の学歴問題については、産経記者の矢板明夫氏著『
習近平―共産中国最弱の帝王』が詳しくまとめています。手元にない方は豪快なネタバレでおなじみ矢吹先生の長編書評でも概要をご確認いただけます。(
書評 矢板明夫著『習近平―共産中国最弱の帝王』(文藝春秋社))
さて、超人的な努力という公式設定を認めるとしても、学部時代に化学を専攻していた習近平が、どうして「農村市場化研究」という博士論文を書いて法学博士となれたのかは疑問です。
そもそも博士号取得の謎の前に、学士号についてもいわくつきであります。というのも習の清華大学入学は1976年。文化大革命終了の年です。1966年から1976年までの11年間、中国では全国大学統一入試は実施されていません。なので、父親である元首相・習仲勲のコネで押し込みやすい時期だったとも言えるでしょう。
1977年から大学入試が再開されるのですが、大学受験が停止されていた12年間分の学生が一斉に入試を受けるという超難関となります。合格したのは相当優秀な連中ばかりです。李克強は1977年、薄煕来は1978年に北京大学に入学しているので、実力での大学入学組に引け目を持っていたのかもしれません。
■博士論文の代筆疑惑さて、そんないわずもがなの習近平まじめに勉強したのか疑惑がいまさら取り上げられています(
英国メディアが習近平博士論文は価値なしと報道(RFI 2013/8/12))。
12日付英紙サンデータイムスは「習近平の博士論文は他人の手を借りて執筆されたものと噂されてきたが、論文の分析の結果、この噂は確かに説得力を持つものと言える」という評価。
台湾・中央通訊社は「学術的な角度からみると、161ページもの大作である習近平の博士論文は穴だらけの上にオリジナルな研究成果に乏しい。おそらくは中国共産党の公式調査報告と海外の研究成果を混ぜたあげくに、数人がかりでマルクス・レーニン主義の言葉で飾って完成したもの」という匿名研究者のコメントを報じています。
なお習近平の博士論文ですが、「
中国农村市场化研究」でググると大量にヒットしますが、それが本物かどうかは確証がとれていないとRFIは注記しています。
■同級生のロケット出世余談ですが、上記RFI記事は習の
学部時代のが博士号を取得した清華大学人文社会学院マルクス主義理論・思想政治教育専攻在職大学院生クラスで、同級生だった陳希についても触れられています。
習近平が博士号を取得した2002年時点では清華大の党委書記だった陳希ですが、習が総書記後継者として確定した2008年に教育部副部長に就任。出世街道を驀進し、今年、中央組織部常務副部長となりました。組織部は党員の人事を取り仕切る部局で、宣伝部に次ぐ重要部門です。
歴代トップの書記はいずれも政治局委員が務めており(現在は趙楽際)、実務的には常務副部長がトップという位置づけになります。先々代の常務副部長、趙洪祝は昨年、中央書記処書記という要職に就任。先代の沈躍躍は全国人民代表大会副委員長となりました。
陳希も今後、さらなる出生が予想されます。昨年11月の党大会ではめでたく中央委員に当選しており、わずか10年で正局級から副国級へと猛スピードでの出世。次期政治局委員の候補としても有望です。これも同級生のよしみというやつでしょうか。
■パクリ論文が発覚?RFIは19日にも習近平博士論文疑惑について続報を掲載。ノルウェー在住の作家・鐘祖康氏主催のニュースサイト・主場ニュースの報道を伝えています(
習近平博士論文に福建省の学者劉慧宇の代筆疑惑(RFI 2013/8/19))。
現在、
福建江夏学院経済学院の副院長を務める劉慧宇の博士論文『経済全球化与中国農村発展』(経済のグローバル化と中国の農村発展)に、習近平論文ときわめて類似した記述が少なくとも3カ所存在すると指摘しています。
記事にはその3カ所が引用されているのですが、なるほど、ほとんど一緒ですね。
習の博士論文提出は2001年9月、劉の文章が掲載されたのは2002年であり、時系列だけ見れば劉が習の論文を剽窃したように見えます。しかし実際は逆ではないか。習論文こそが劉論文を剽窃したものではないか、というのが主場ニュースの見立て。まあ、何より一介の研究者が習近平の論文をパクる勇気はないと思いますが。
習が1988年から寧徳市の書記を務めていましたが、当時、劉は同市の市政教委員、人民代表でした。習の知己を得た劉が代筆を務めた、その後自分の博士論文を書いたがうっかり習近平の論文を手伝った時の文章をそのまま使ってしまったという分析です。
こうした博士論文疑惑を眺めていると、習近平擁立運動は従来考えられていたよりもずっと早い段階、十五大(1997年)あたりから始まっており、博士号取得もその一環だったのではないか……などと妄想してしまうのですが、どうでしょうか。あながち的外れな妄想でもないのかもしれません。
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2013年8月21日付記事を許可を得て転載したものです。
だって、「マルクス主義理論・思想政治教育」だぜ。
俺も勉強したことがあるんだぜ。
1979年、当時高校生だった。
Q:なぜ社会主義は資本主義より優れているのか?
A:社会主義が先進的だからだ。
理由になってないのでは?
これはどう言うロジックだ?
当時の俺はどうしても理解できなかったので、政治の成績が一番悪かった。