■異例続きの薄熙来裁判が面白すぎる件について=海外メディアにひどい仕打ち、予想外の罪状否認■
■「やるやる詐欺」の薄熙来裁判がついにスタート
2013年8月22日、23日と山東省の済南中級人民法院で、失脚した薄熙来・元重慶市委書記の公判が行われている。
2012年3月15日の重慶市委書記解任から約1年半。「そろそろ薄熙来裁判が始まります」というニュースが何度も流れては消え、ドコモからiPhoneが出るのが先か薄熙来の裁判が先かと言われるほどの「やるやる詐欺」状態だっただけに、もうどうでもいいという気分もあったのだが、蓋を開けてみれば爆発的に面白い展開となっている。
■簡潔なまとめが不可能な薄熙来問題
さて本サイト・金鰤では薄熙来に関するニュースをえんえん流し続けてきたが、恥ずかしながら総括的まとめはやっていない。いや、本サイトだけではなくて、薄熙来失脚の流れをわかりやすくまとめた文章はそうないはずだ。というのも、薄熙来の処分をめぐって中国共産党内部でももめる中、リーク情報がごまんと垂れ流され、もう整理するのが面倒くさすぎる上に、リーク情報同士が矛盾しまくってもうわけわからん状況になっているからだ。
今回の裁判を期に「薄熙来失脚とその意味のまとめ」にもう一度チャレンジしたいと思っているが、あまり期待せずに待っていて欲しい。とりあえず今のところは薄熙来について
・大連市委書記、商務部部長、重慶市委書記を務めた有力政治家。
・パパは元副首相にして八大元老の一人、薄一波。薄一族はたんなる二世政治家の枠を超えた、中華人民共和国の貴族的存在。
・重慶市では「打黒唱紅」(マフィア・汚職官僚撲滅、革命歌推奨政治キャンペーン)を展開し、一躍左派のヒーローに。
・低所得者向け住宅の提供などで一般人の人気も高かった。
・2012年2月、腹心の部下である王立軍副市長がアメリカ領事館に逃げ込む事件が起きる。
・2012年3月、両会開催中に重慶市委書記を解かれ失脚。
・2012年4月、妻の谷開来が英国人ビジネスマンのニール・ヘイウッドを毒殺した事実が報じられる。
・2012年9月、中国共産党による処分が決定、司法手続きへ
ぐらいを抑えていただければ、と。
■裁判が面白すぎる件についてさて前置きはこの辺にしておいて、そろそろ本題である「薄熙来裁判が面白すぎる件について」。
1:起訴事実が結構どうでもいい起訴状で追求されている罪状は4点。収賄が2件で計2168万元(約3億5800万円)。横領が500万元(約8250万円)。そして妻・谷開来(中国メディアは薄熙来の妻という身分を強調するべく、薄谷開来と夫の名字を頭につけて報じている)の毒殺事件と王立軍にからむ職権乱用だ。この罪状まとめについては朝日新聞デジタルの記事「
薄元書記、習政権に敵意 公判スタート 「陰謀だ」一転否認・金銭授受も全否定」が秀逸なのでオススメ。
先日、執行猶予2年付き死刑判決を受けた劉志軍元鉄道省の収賄額が6460万元(約10億7000万円)だったので、ダブルスコアで敗北している。正直、薄熙来クラスの官僚にとってこの金額など汚職のうちに入らないのではないか。
最後の職権乱用が興味深いところだが、この点についてはまだ審理で扱われていないようだ。ただ事件のもみ消しだったり、王立軍の解任を「休暇式治療」というオモシロ言い訳でごまかそうとしたぐらいの話で済ませると報じられている。
ちなみに昨年9月の中国共産党中央紀律検査委員会の処分では、「多数の女性と不適切な関係にあったり、その関係を保持していた」という項目があったのだが、こちらは裁判の対象にはならなかったもよう。「性のワイロ」的な、刑事罰の対象になりそうなリーク情報もあったのだが……。
全般的にみて、罪状はだいぶおまけしてもらった印象だ。
2:メディアの扱いがひどい裁判について当局はプレスセンターを用意したとのこと。海外メディアがこぞって済南市に駆けつけたわけだが、そのプレスセンターとやらは会議室にテレビを一台おいて、マイクロブログの中継をえんえん写しているだけのものだったらしい。
*
香港紙・文匯報の微博より。
22日、公判中にも日本メディアは関連記事を配信していたが、「マイクロブログによると……」といった書き方で不思議だったのだが、えんえん微博の画面を見せられていたのならば仕方がないところ。自宅にいても同内容の書き込みを見られるだけにひどい話である。この仕打ちについて、記者さんはぜひこぼれ話を書いて欲しい。
3:予想外の罪状否認。薄熙来は取り調べでの自白強要、誘導を主張今回の裁判はしゃんしゃんで終了するとみられていた。一部では21日に実質的な審理を実施しており、22日の裁判はショーに過ぎないとまで報じられていたが、驚くべきことに薄熙来は収賄容疑について罪状を否認。自白についても中国共産党紀律部局の取り調べで強要、誘導されたものだと主張している。
また3回にわたり金を渡したという実業家の唐肖林をうそつき呼ばわり。収賄を認めた妻の谷開来については「その証言は滑稽でばかばかしい」と発言。
証人尋問では薄熙来自ら質問し、法廷ドラマばりのやりとりを見せている。例えば、薄熙来の妻や息子に金を渡したという大連実徳集団の徐明総裁とのやりとりはこんな感じだ。
「君は薄瓜瓜、薄谷開来が海外で生活した時、1年で数百万元を求めてきたと話しているが、そのことを私に言ったかね?」
「いいえ」
「ニースの不動産にいつ私に話したのかね?」
「先ほどいったとおりです。あなたの家で食卓前の会話と商務部です。」
「それ以外で話したことは?」
「ありません」
「私からニースの件について話したことはあったかね?」
「いいえ」
「君から話したことは?」
「いいえ。」
「瀋陽でスライドを見ていたあの時、君は側にいたが、薄谷開来は私にあの不動産の大きさについて話していたかね?」
「いいえ」
「金額や所有権については話していたかね?」
「いいえ」
「薄谷開来がニースの不動産の手続きをする過程で、彼女がその話を私にしたと言っていたかね?」
「聞いたことはありません」
「商務部で私に合う前の2年間、私と君と2人きりで会った時にニースの件について話したことがあったかね?」
「ありません」
「2000年以後、君は私とニースの件で話したことがあったかね?」
「先ほど話した2つの場面以外ではありません」
「瀋陽でスライドを見ていた時、薄谷開来がその件を話した時、私はなんと発言した?」
「あなたはそこにいましたが、何も言いませんでした。」
事前には薄熙来があっさり罪を認めて、しゃんしゃんで終わるのではないかと予想されていたのだが、大波乱である。
薄熙来一族に近い関係者:「われわれは非常に驚いた。だが、それが(当局の)プランの一環であることは間違いない。そのプランがどんなものか、われわれにははっきり分からない」
(薄被告、初公判で起訴事実否認―当局はブログ通じ異例の公表 - WSJ.com )
という、「波乱もまた当局の筋書き通り」という見方もあるようだが、党紀律部局の取り調べで自白を強要されたなどの、あまり都合のよろしくないネタまでシナリオ通りなのかははなはだ疑問。有罪判決が下りることは間違いないだろうが、薄熙来側が控訴したりすれば、この七面倒臭い裁判をもう1回やらなければいけなくなるという事態に陥る。
4:瓜瓜くんがやばい妻の谷開来はニール・ヘイウッドの毒殺やら収賄やらの容疑を認めて、すでに執行猶予付き死刑判決をいただいている。谷が素直に罪を認めたのは息子の瓜瓜くんを守るためだなどとささやかれていたのだが、薄熙来は「妻は別荘買ってもらったかもしれんがワシはしらん」「瓜瓜が旅行費用だしてもらったりしていたようだが、ワシは知らん」と突き放した対応。
妻との関係は冷え込んでいたと伝えられるが、息子愛も失われているのだろうか。そして今のところは起訴されていない瓜瓜くんも起訴されてもおかしくない展開ではないだろうか。というのも気になるところである。
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汚職者?いいえ、それぐらいの汚職は平均程度に過ぎない。
薄は政治闘争に敗れたものだけ。
大連市長から商務部部長を経て重慶市市長まで、
数々な業績を重ねて来た有能者であることは間違いないのだろう。
が、胡、温とそりが合わないのが失脚の最大な原因だ。
じゃあ、薄は習よりリーダーに相応しいかと言うとそうでもない。
毛沢東を掲げた政策は、政治改革に消極的だと言う証拠。
習も政治改革に積極的とは言えないで、
「半斤八両」だと言ったら、それも同感できない。
薄より習は少しいい。
確かに薄は有能者であるが、問題児でもある。
トップに相応しくないからだ。